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                                                    NO.102

 新しい道徳の授業を創る〜環境
            「0円の部屋」
 
 
                            
1.主題名    「0円の部屋〜ゴミとは何か?」
 
2.ねらい
 私達の身の回りにはまだ使えるものがたくさんあふれていることや,
そのものをゴミとして安易に捨てゴミを増やしていることを知り,
ゴミを減らし物を大事に使おうとする態度を育てる。
 
3.指導にあたって
 今日的課題である環境問題を取り上げた授業である。
 人間が生み出すゴミは日本を始めほとんどが先進国,言わば大量消費生活をしている国々によるものである。
 資本主義による加速度的な企業競争から,大量の生活用品や製品が競って生産され,
古くなった物は全て時代にそぐわないゴミとして廃棄されて行く。
 生活が便利さを求めれば求めるほど,悲しいかな新製品にとびつき,たとえまだ使えるものであったとしても無造作に捨てられて行く。
 そしてそれは,廃棄処理さえも追いつかないほどに地球上のあちこちに広大なゴミ畑を作り出している。
 「物を大事に使う」ことの大切さは,人間誰しも頭では分かっている。
 しかしそのことと,「ゴミを増やしてはいけない」ということを結び付けて考える人間はほとんどいない。
 ましてや子供たちは,この日本にあってその生活の豊かさや有り難さを当然のこととして受け止め,
改めて身に染みて感じているということも無い。
 今こそグローバルな視野で,自分たちがいかに世界の国々に比べ豊かであり
一方で贅沢な生活をしているのかを真摯に認識しなければならない。
 そして,世界にはゴミを売って生活費を稼いでいる貧しい人達もいることを知ることによって,
「このままで私達はいいのだろうか」という強い気持ちを喚起していかねばならないと考える。
 このことは,今後,学校教育の中で積極的に取り組んでいかねばならぬ重要課題ではあるが,
少なくとも今を生きる子供たちに,今すぐにでもこの問題を意識化させ,
課題への情報を蓄積させていくことは非常に大事なことである。
 もちろん数時間かそこらの授業で環境問題を語ることなどできやしないし,
系統的・計画的・継続的学習の中で徐々にかつ根強く意識付けられていくものであることも承知している。
また,このたびの授業においても,資料提示の方法・展開等いくつかの問題点もあろうかと思う。
 しかしながらそのきっかけになれるような授業をどんどん構築し実践して行くことが
私達教師に少なからず求められているのである。
 実施にあたっては,「道徳の時間」の授業としては価値の押し付けは一切せず,
事実のみを示し子供自らが環境問題の一端に気づいてくれることを期待した。
三輪辰男氏の原実践を参考に修正追試しながら,
クイズ的な発問を投げかけテンポよく進めることで,楽しく授業に参加できるようにした。
 終末部分では,逆転現象の起こるような発問を設定し,
少なからず子供たちはショックを感じ自ら「物を大切に使わなければならない」と思えるようにしたいと考えた。
 対象学年は6年生であるが,3年生以上であれば追試可能であると思える。
 
4.授業の実際
 資料1の写真(広大なゴミ捨て場でゴミ拾いをしている少年・A3版コピー)を黙って黒板に貼る。

指示1 全員起立。写真に写っている人達が何をしているのか予想を付けた人は座りなさい。
 
 白黒コピーでかつA3サイズなので,見えにくい子供は自由に席を立って黒板に群がる。
 全員着席後,列指名で尋ねる。
 次のような予想が出された。

・畑仕事をしている。
・何か働いている。農家かなんか。
・そうじしている。
・ゴミ拾い。
・食料を探している。
・ゴミ集め。
 
 ここは時間をかけない。「ゴミ捨て場でごみ拾いをしている。」ことを告げた。

発問1 この人たちは,どうしてこういうことをしているのでしょう。
ノートに書きなさい。
 
 ほぼ全員書き終えた後,指名無しの自由発言をさせた。

・食べ物を探すため。
・使うため。
・リサイクルするため。
・ゴミ掃除のため。
・お金になりそうなものを売るため。
・ボランティア。
・クリーンアップ。
 
 以上が出されたが,「実は,売れそうなものを探して生活の足しにするするためである。」ことを告げた。

発問2 売れるゴミには,どんなものがあると思いますか。
 
 口々に言わせてみた。「プラスチック」「ガラス」「粗大ごみ」「服」「コップ」「金属」「テレビ」などが出されたが,
ここでは主に『空き瓶』『空き缶』『鉄屑』であることを告げた。

説明1 これは,日本ではありません。フィリピンのマニラ市の近くのゴミ捨て場に住む人々です。ここでは,およそ二万人の人々がゴミ捨て場から「売れるゴミ」を探し,それを売って生活しているのです。
ここに住む人の多くは,八〜九人家族です。売って設けたお金は,その日の食事代として消えて行きます。
 
 子供たちは黙って聞いている。

発問3 では,子供から大人まで,このゴミ畑でゴミ集めして一日いくらぐらい稼げると思いますか。ノートに何円と予想を書きなさい。
 
 書き終えたのを見計らって列指名で全員に聞いた。
 次のようになった。

・1円・・・1名   ・50円・・・1名  ・90円・・・1名
・100円・・・2名 ・120円・・・1名 ・180円・・・1名
・200円・・・3名 ・300円・・・4名 ・360円・・・1名
・600円・・・2名 ・750円・・・1名 ・900円・・・2名
・1000円・・・3名・2000円・・・2名・3000円・・・1名
・5000円・・・2名・1万円・・・3名・300万円以上・・・2名
 
 「実はこれだけです。」と言って,1の位からゆっくり『350円〜400円』と板書した。
 近い子から歓声が上がる。

説明2 350円から400円です。これは,その日の食事代として消えて行きます。みなさんは,一日,家族の食事代はどれくらいでしょう。
こんなもんですか。
 
 できればここで日本人の一日の平均の食事代のデータを出してもいいかもしれない。
少々のざわめきの中,「次に私達日本人の生活ぶりを表す写真を貼ります。ごく普通に見られるような居間の風景です。」
と言って次の資料2(公共広告機構)を提示した。

指示2 写真に写っているものすべてノートに書きなさい。
箇条書きで,いくつでもいいから書きなさい。1分です。
 
 
 1分後発表させる。列指名で1つずつ言わせていった。

・いす・テーブル・本棚・テレビ・食器だな・コップ・食器・本・カーペット・カーテン・窓・電話・モップ・テレビ台等
 
 「よく見つけたね。いい目しているね。」と褒めてから問う。

発問4 この写真に写っている物以外に自分の居間にあるものありますか。
 
 これも口々に言わせた。

・テレビゲーム・時計・机・電球・冷蔵庫・座布団・ソファー・エアコン・ストーブなど
 
 「みんなの家には,ほとんどあるんだね。写真よりもすごいね。」と言ってから写真を指して問うた。

発問5 それでは,ここに写っているものに値段を付けるとしたらいくらぐらいでしょう。大体でいいので予想をノートに書きなさい。
 
 「えーっ。」と言いながら子供たちは計算を始めた。
 3分後,列指名で言わせていった。5万円から1千万円まで幅広い値が付けられた。

・5万円〜10万円・・・・・3人
・10万円〜20万円・・・10人
・20万円〜30万円・・・・3人
・30万円〜40万円・・・・3人
・40万円〜50万円・・・・3人
・50万円〜60万円・・・・2人
・60万円〜70万円・・・・1人
・100万円〜200万円・・6人
・500万円    ・・・・1人
・1000万円   ・・・・1人
 
 さて,ここで子供たちは気づくであろう。「日本とは実に豊かな国だ。」と。
 しかし,ここで終われば核心に触れられず,あさはかなものになってしまう。
 ここからがポイントである。
 「なるほどね。実は,値段はこれです。」と言ってゆっくり『0円』と板書する。
 一瞬沈黙がある。子供たちは『0円』と書かれたものを見て,少なからず驚きを覚える。
 「えっ?」「あと書かないの?」「0円?」「うそっ!?」「なんでぇー。」「あっ,もしかして・・・」の声があちらこちらから出される。
 ここで間髪入れず問う。

発問6 なぜ0円なのでしょう。ノートに書きなさい。
 
 子供たちは真剣に考えている。なぜなのか予想もつかないという子もいる。
 3分後,自由発言を促した。

・すべて粗大ごみだから,ゴミに出されたものを拾ってきたから。
・まだ使えるものを拾ってきたから。
・捨てられていたものだから。
・日本では拾ったゴミは「ただ」。
 
 ほとんどの子供が,以上のような意見や「わからない」であった。

説明3 その通り。これらは盗んできたものではない。拾い物です。
しかし,まだ使えるものです。だから,値段は0円です。
 
 「このようなところから拾ってきたのです。」と言って資料3(日本のゴミ集積所)を静かに貼る。
 子供達から「うわぁー。きたねぇ。」という呟きも聞こえる。
 

発問7 さて,みなさんはさっき「粗大ごみ」と言いました。ではこの居間の写真にあるものは全てゴミなのですね。ゴミと思う人は○,いやゴミではないと思う人はノートに×を書きなさい。
 
 作業後,挙手させた。(○・・・・・0人,×・・・・・33人)
 全員がゴミでないと言う。ここでもう一歩突っ込んで聞いてみた。

発問8 おかしいですね。ゴミだから「粗大ごみ」って言うんでしょ。
必要でないから捨てた。それを「ゴミ」と言うのでしょ。
どうですか。
 
 教室はしーんと静まり返ってしまった。これには誰も答えられなかった。
 大人でも答えに窮する難しい問題であろう。
 ちょっとした間のあと,最後に次のように言って授業を終えた。

ゴミを出しているのはだれ?(子供たち「人間。」)そうだね。
新しいものを買いあさり,まだ使えるものをゴミとして捨て,地球を汚している。何か悲しい気がします。
何がゴミで何がゴミではないのでしょうね。
今日の授業のタイトルを付けて,授業感想文を書きなさい。
 
5.おわりに
 子供の授業後の感想文をいくつか紹介する。

<物を大事に>
  僕たちは,ゴミと思ってすぐ捨てている。しかしマニラの人たちは,そのゴミを売って暮らしている。少しショックだった。大切に使いたい。
<大切なゴミの宝>
  日本人はお金を無駄使いしている。お金を投げているような気がする。
<ゴミとは何か>
  どこからどこまでゴミか?考えたことが無かった。使えるまで使いたい。
<ゴミは使える>
  フィリピンの人はゴミを売って暮らしているなんて貧しいと思う。
  日本人は無駄遣いしている。自分を情けないと思った。

 


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