’98.10.8
                   授業実践レポート NO.8

新しい道徳の授業を創るⅢ
〜星野富弘さんの生き方に触れて

 
                      
1.主題名  「生きているということ〜生きることのすばらしさ」
2.ねらい
  自分とは異なる障害を背負った星野さんの生き様に触れ、
「生 きている」ということは、自分自身の存在の証であり、
「生きる」ということは、一日一日を希望を抱いて大切に過ごしていくことにほかならないことに気付く。
 
3.指導にあたって
  教課審「中間まとめ」の道徳教育の改善のポイントは、2点ある。
  それは、
(1)学校や児童生徒、地域等の実態や課題に応じて創意工夫のある指導を行うこと。
(2)実際に観察、調査、実物に触れる。ボランティア、劇化といった体験的な活動や感性や情操を育む活動を積極的に取り入れる。 
  である。
したがって、頭だけで考え、口だけで言い合うような従来型の道徳授業は、改めていく必要がある。
体験活動を意図的に盛り込んだ授業展開が、今後望まれると考える。
 
①資料は、星野富弘さんの書いた文字を拡大コピーしたものと星野氏の「花の詩画集〜鈴の鳴る道」を使用する。
②教師の説明は、できるだけ少なくし、子供たちに思考を促したり、実際に体験活動させたりする場を多く設定する。
③ただ「聞く」だけではなく、随所に「書く」活動を取り入れながら子供が自ら気付いていくような授業を展開する。
⑤今回、対象学年は3年生で行うが、全学年を通して扱ってみたい資料であり、主題である。
発達段階に応じた様々な学習展開の工夫やねらいの検討が考えられよう。
 
4.準備
 ・道徳ノートと筆記用具
 ・資料 星野富弘氏著「花の詩画集〜鈴の鳴る道」と氏の書いた字
 
5.授業の流れ
 
 日付を板書した後、
質問  
みなさんは、上手に字を書いたり、絵を描いたりできますか? 
・「できる。」「ふつう」「ぼくは、下手だ。」などの言葉が飛び交う。
 
「そうかぁ。」と言って、星野さん直筆の文字資料を黒板に貼る。
発問1  
これは、何でしょう・・・。読めますか? 
 ・「うひゃー。すごい字!」
 ・「カタカナだ。」「アイウエオ、カ・・」
 ほとんどの子が読める。
発問2  
この字、どう思う?上手? 
・「下手くそだ。」とほとんど。「なるほど。そうかもしれないね。」と言って、
指示1  
じゃあ、この字より上手に書ける?ノートに「アイウエオ」って書いてごらん。 
・「書けるよ。」と言ってすぐ書き始める。
全員書いたのを見計らって・・・
指示2  
書いた字をノートを上に掲げて先生に見せてごらん。 
 「なるほど。さすが日本人。うまいですねぇ。」と言うと、「当り前じゃん。」という表情。
発問3  
この字さあ。日本人が書いたのかな。それとも外国人が書いたのかなぁ。どっちだと思いますか?ノートにどっちか書きなさい。 
・外国人・・・24人    日本人・・・9人
 
 「実は、日本人なんだよ。」と教えた後、またまた「エーッ!?」
発問4  
では、何才ぐらいの人が書いたのでしょう?予想して、ノートに( )才と書きなさい。 
ほとんどの子供が書いたのを確かめて、列指名。(本時ではネームカードを板書の線図に貼らせた。)
 
   100才 90 80 70 60 50 40 35 30 25 20 15 10 5 0
                 
   1人  1人  2人    2人  2人      2人   2人      21人
 
 
 幼児か老人と思っている子供が多かった。
 
 その後、絵を見せる。
「この花の絵をみてごらん。上手でしょう。実はこの絵を描いた人が、書いた字なんだよ。」と言うと、「エーッ。うそー。」と子供たち。
 ちょっと「意外だ。妙だな。」といった驚きを感じさせたところで、再度聞く。
発問5  
この字、何才ぐらいの人が書いた字でしょう。書き直したい人は、もう一度ノートに書きましょう。(書いた人からネームカードを移してもいいです。) 
と問いながら、消しゴムを使わせず、再度書かせる。絵を見たことで、若干予想が変わる子供が出てくる。(20〜40才が多くなった。)
 「実はね。26才の男の人なんです。」と教える。
発問6  
どうやって(どのような方法で)、この字を書いたのでしょう。考えられる方法をたくさんノートに書いてごらん。 
 3分後、自由に発表させる。次のような意見が出た。番号を振って全て板書する。
  ①利き手と反対の手で書いた。
  ②ノートを逆さにして書いた。
  ③小さい頃の自分に戻ってふざけて書いた。
  ④目をつぶって書いた。
  ⑤力を抜いて書いた。
  ⑥親指とひとさし指だけで書いた。
  ⑦足で書いた。
  ⑧口にくわえて書いた。
 思いのほかたくさん出てきたが、⑦は今回は多少無理があると考え、作業からは省いた。
指示3  
では、みなさんが予想した方法で、実際にノートに字を書いてみましょう。(アイウエオだけを①の方法から順に試みさせる。) 
 子供たちはどの子も面白がって活動している。友達と見せ合ったり、声を上げながら楽しんで字を書いている。
 
 全ての方法で書かせた後、「うまく書けましたか?」と言ってから、
「本当のことを言うとね。この人は何と・・・・サインペンを口にくわえて書いたんですよ!」と少々語調を強めて告げる。
 ・子供たち「うひゃぁー。すげー。」という声。
指示4  
本当にそんな書き方できるのかなぁ。じゃあ、この方法で書いてみるよ。この字より上手に書けるかな?はい、どうぞ。 
(この指示は⑧が子供から出てこない場合として用意しておいた。)
 机間巡視してみると、かなり難しそうで、面白がってはいるが、どの子も悪戦苦闘。
 ほぼ書き終えた後、感想を聞いてみる。
発問7  
初めにみなさんは、この字より上手に書けるって言ったよね。やってみてどうでしたか? 
・時間がかかる。
・難しすぎていらいらしてくる。
・⑧の口で書くのが一番難しい。
・①〜⑥は何とか読めるけど、⑧は字にならない。読めないよ。
 全ての感想を温かく受け入れる。
発問8  
では、こんなにすてきな絵を描ける人が、どうして口に加えて字を書くことにしたのでしょう。(間)自分の考えをノートに書きなさい。 
 発表させる。
 ・人を笑わせるため
 ・手の不自由な人のつらさを知るために試してみた。
 ・おもしろがって書いてみた。
 
説明1  
これは、星野富弘さん(板書)という方が、26才のときに、サインペンを口にくわえてスケッチブックに書いた字です。
・・・・・星野さんは、身体の丈夫な体育の中学校の先生でした。
ところが、クラブ活動の指導中に、宙返りに失敗して、肩から下が全く動かなくなってしまったのです。・・・・・・けがをする前は三村先生以上に運動神経抜群で健康な人だったんだよ。手・足・身体が動かないだけでなく、全て感覚もなくなってしまったのです。
・・・・・わずかに動かすことができたのは口だけだったのです。 
 子供たちは、静かにしーんとして聞いている。間を置いてから再び、絵を見せる。話を続ける。
説明2  
この絵は、もちろん星野さんが、口に筆をくわえて、ベットで寝ながらたくさんの時間をかけて必死に描いたものです。時には、途中で止めたり、涙混じりの絵の具で色を付けていったのです。
 10秒ほど沈黙の間を置いてから静かに問う。
発問8  
大変な努力です。わたしたちの想像を越える努力に違いありません。
 でも、先生にはどうしても分からないことがあるんです。
どうして、星野さんはこんな努力をするのでしょう。ただ絵を描くのが好きだからでしょうか。なぜ、こういうことをしているのか、みなさんの考えを聞かせてください。 
 ノートに書かせた後、数人に発表させる。
 
・ みんなに体操を字を書いて教えたいから。
・ ただ寝ているだけじゃつまらないから。
・ 生徒たちに安心させたいから。
・ 自分に力を与えるため。
・ 人に迷惑かけているから、人のために何かできることはないかと思って。
説明3  
みなさんの考え方は、どれももっともだと思います。
先生の考えを言います。
先生は、星野さんは、こうすることで「生きているということを、いつでも感じていたいから」だと思います。
「生きている」ということは、ただ心臓が動いているということじゃないんです。一日一日を大切に何かをしなければと真剣に過ごすことなのではないでしょうか。
人間にとって、「命が一番大切」だということは、誰でも知っています。しかし、そのために「生きているってすばらしいことなんだ」と感じる毎日を自分の努力で作り上げていくことは、もっと大切なんだよと星野さんは、教えてくれていると思うのです。 
 このように言ってから、最後に星野さんの詩を何編か読んで終わる。

HOME           「乙武洋匡さん」の授業記録へ