(C)Two-way/小学校/性教育/命の誕生                                                             制作・実践:三村 弘

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性の授業〜「命の誕生」

 

○ はじめに

 性教育とは何か。

 私見を述べる。

 現代の子供たちを取り巻く社会情勢や社会環境は、「17歳の犯罪」に象徴されるように、今や軽佻浮薄で危うい状況にある。

 世の常識とうたわれたものは、もはや常識ではなく、そういう当たり前の規範はどこへ行ってしまったのだろうとさえ思う。

 規範意識の低下、罪意識の欠如、生への妄挙、有害なメディアや情報の氾濫、そして無秩序な性がはびこり、若者や子供を反社会的行動や非人道的行為の渦へとかき立てている。

 人は何のために生きているのか。死とは何か。

 自分は何のために生まれてきたのか。

 生を受けた自分という存在は何か。

 その生涯の問いにすら目を、耳を、心を傾けようとしない。

 さて、冒頭の問いに戻る。

 性教育は人間教育である。さらに言えば、


 性教育は、命の教育である。
 

40万個もの卵子のひとつと4億個の精子のひとつが巡り会って、ひとつの命が生まれるという事実。

これは、奇跡に近い確率である。

 実に、感動的なドラマなのである。

 今一度原点に返って、命の尊さを身に浸みて感じねばならぬ。

 当たり前に感じている命のありがたみを、心に染みこませねばならぬ。

 大げさでも何でもなく、性教育は単なるSEX,GENDERの範疇に収まらない全人教育なのである。

 このことを弁えてさえいれば、学校教育において「身体の発育」の学習として、教科書を与えプリントなどで評価するようなありきたりの保健の授業が、如何に子供にとって空々しくも薄っぺらな学びになっているのか自覚するはずである。

 性教育に対して、決して消極的であってはならぬと言うのが私の考えである。

 今だからこそ、以下に述べるような命のドラマティックな誕生を扱った授業が必要なのである。

 

○ 授業の実際

 主題名   「かけがえのない自分という命の誕生」

 ※ 水永真知子氏の実践を修正追試する形で実施した。導入部分と終末部分に、自分を見つめさせる問いを用意した。

対象学年は5年生である。

 

 授業の始まりと共に、いきなり1人を指名して問う。


発問1 あなたは何ですか。
 

 呆気にとられながらも「人間。」とその子は答えた。 間髪入れず、聞く。


発問2 何歳ですか。
 

 「11歳です。」


発問3 10年前は何でしたか。
 

 「人間・・・・1歳の赤ちゃん。」


発問4 なるほど、10年前のことなのによく覚えていますね。
    では、そのもう一年前は、何でしたか。

 

ここで、答えに窮し、その子供は黙ってしまった。

教室のあちこちから、「生まれてないよ。」「お母さんの腹ん中。」という声が聞こえてくる。


説明1 10年前までは分かるけど、11年前のことは記憶がないのですね。分かりました。
実は、赤ちゃんの前11年前は、何と赤ちゃんのたまごだったのです。

 

「なんでぇー?」という顔をしている男子。

知ってか知らぬか口数も少なく黙っている女子。

説明を続ける。


説明2 お母さんは、体の中に赤ちゃんの元になる「卵子」(板書)というものを持っています。(デジカメか写真パネルかパソコンで写真を提示する。)
 これは、女の人が生まれつき持っているものです。
 そして、お父さんは、「精子」(板書)というものを持っています。(同様に提示)これは、男子が成長して身体が大人に近づくとつくられてきます。
 この卵子と精子がいっしょになって、つまり「受精」します。
 すると初めて赤ちゃんという命が生まれるんです。

 

 分かったような分からないような表情だが、子供たちは静かに聞いている。


発問5 それでは聞きますが、卵子はどれくらいの大きさだと思いますか。ノートに書いてごらん。何センチとか何ミリとか。
 

 予想なので、さっと書かせる。数名に尋ねる。

 1cm、5mm、5cmなど様々な答えが返ってきた。


説明3 実は、0.2mm(板書)なのです。0.2mmといったら1mmの10分の2なんです。
 

このように言って、ミニ定規で1mmの長さをノートに書かせ、「『0.2mm』書いてごらん。」と言うと、

「書けないよ。先生。」「点でも大きいかも。」と言う声が返ってくる。

(黒い紙に針で穴をあけ、卵子の大きさをとらえさせる方法もあるようだ。)


発問6 では、精子はどれくらいの大きさだと思いますか。
 

同様に尋ねる。

どの子も卵子より小さい数値を出す。

それでも1mm、0.2mm、0.1mmなどが多い。


説明4 (小数第三位からゆっくり板書して)0.06mmです。
    長さですよ。長さが1mmの100分の6しかないんです。

 

 少し強調して驚くように言う。子供も同調して「すげぇー。」


発問7 では、0.2mmの卵子は、お母さんのおなかの中に何個あると思いますか。これも予想してノートに書いてごらん。
 

 作業後、列指名で尋ねる。このあたりはテンポよく進めるのがコツである。

 100,5千、1万、10万などさまざま。


説明5 なんと、40万個です。(板書)ものすごい数ですね。
 

間髪入れず問う。


発問8 では、精子は?精子は何個ぐらいあるでしょう。
 

 同様にノートに書かせる。

卵子より小さいからということで、40万個よりも多いのではないかと見当を付ける子供が多くなる。

男子も女子もいつのまにか夢中になっている。

 数当てクイズのようで子供たちも退屈せずに乗り気で答えようとする。

 これも列指名で答えさせた後、教える。


説明6 なんと・・・・(億の位から板書する。4・・・ゆっくり0を付け加えるように、桁数を増やして書いていくのがいい。)
 これいくつ?(子供たち各々数え出す。)なんと、4億個です・・・・・・。(間)

 

 驚きの声の中、少し間をおいて説明を続ける。


説明7 女性のおなかには、正しくは卵子がつくられるところ、卵巣と言いますが、そこでは40万個ほどの卵子がつくられ、そのうちの1個、立派な人間になるために成長した選ばれた卵子1個が待っています。
 そこへ、男性、お父さんの精巣というところでつくられたうちの精子4億個がお母さんにあげられ、その中のたったひとつ、とびっきり上等の精子が選ばれてそれがいっしょになり一つの生命が生まれるのです。
(ここで受精の写真提示する。)
 これを受精といいます。
 40万個のうちのたったひとつの卵子と、4億個の中のたったひとつの精子が、まさに運命的に結ばれるんです。
 これは、奇跡に近い確率です。
 ですから、みなさんは、これ以上ないくらい最高級の命として誕生したわけです。なんてすばらしいドラマでしよう。
 もし違う卵子と精子だったら、みんなは、今と違う別の人間だったのです。

 

 子供たちは、しーんとして聞いていた。

 この気の遠くなる数の中から選ばれた、命の誕生の話に息をのむ。

 静けさの中、最後に次のように板書する。


(      )へ
(       )は、(      )であって、ただひとりの(     )だよ。

 

 


発問9 (    )には、どんなことばが入ると思いますか。
 

ここはすぐ教える。1人を指名して問いかける。


質問 あなたは誰ですか。名前を言ってください。
 

○○です。」


指示1 そうですね。○○君は、この世でたった1人。すてきな命を父母からもらったんだよ。みなさん、(    )に自分の名前を入れて、この文をノートに書いてごらんなさい。書いた人から、座ったままで3回その文を唱えなさい。
 

 全員が書いたのを確かめてから、最後に今日の授業の感想をノートに書かせた。


指示2 今日の授業の感想を簡単でいいからノートに書きなさい。
書いた人から先生にノートを提出して休み時間にしなさい。

 

 時間があれば、感想を数名にでも発表させたかったところである。

 

 子供たちに、命の尊さを感じさせ、同時に自分は選ばれてこの世に生まれてきたということ、そしてそんな自分という存在に改めて向き合うことができたという点では、どの子にとっても心に響く授業となったと言える。

 

 子供の感想の一部である。


・精子とか卵子とかは知っていましたが、それほどの数だとは思ってもいませんでした。その中からたったひとつだけが出会って、私が生まれたなんて信じられませんでした。
 お父さん、お母さんに感謝したいと思います。(N.E)
・すごい。とにかくすごいと思いました。4億個の精子の中からひとつだけとは、すごい精子だ。よほど力強く上等な精子だと思う。でも、だから、このぼくが生まれたんだと思う。小さい頃は、病気ばかりしていたとお母さんが言っていたが、今は、元気で身体も丈夫になった。これもお父さんの強い精子とお母さんの卵子のおかげだと思います。(J.K)

 


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