’98.9.23
NO.5
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知的興奮をもたらす「向山型算数」 |
★Prologue★
以下のレポートは、今(2001.4)から、3年前に書いたものである。
自分もまた「向山型算数」って何だろうと首を傾げていた頃である。
単なる新しいタイプの算数学習法としか受け止めていなかったのである。
今、読み返してみても「向山型算数」の凄さ、奥深さが全く分かっていなかった拙いレポートである。
レポートナンバーもNO.5と、書き始めたばかりの未熟で稚拙なレポートである。
だからこそ、あえて公開したいと思った。
「向山型算数」を実践していない人の入口に少しでもなれればいいと願う。
○はじめに〜「向山型算数」で何が変わるのか?
「向山型算数」の中枢は、まぎれもなく「子供の事実」「腹の底からの手応え」である。
テンポの良さ、力強い褒め言葉、基本型を見抜いたスモールステップ(変化のある繰り返し)、
クラス平均点90点の学習習熟度、うっとりノートなどなど
挙げたら切りがないほど魅力的な指導法(パーツと言っていい)で満ちあふれている。
このような指導法で、目の前の子供たちが天と地ほど激変するのだ。
子供は算数が好きになり、平均点90点を超えるようになる。
45分の授業が効率的に運ばれ、教室は知的興奮に満ちあふれる。
子供たちの目が変わる。
態度が変わる。
授業によどみがなくなる。
ノートは見違えるほどうっとりと美しくなる。
親から感謝の言葉が届く。
心から「算数の授業は面白い」と感じようになる。子供も、教師も・・・。
そして、他の教科の学習や学級経営にも望ましく波及していく。
これほどの向上的変容をもたらすことができるのであれば、いささかの異論もなかろう。
これこそ、「子供の事実」と「腹の底からの手応え」なのである。
では、どこが、一般的な、そして我流の指導と違うのか。
ここでは、そんな向山式指導法を忠実に追試し、その実践を元に、
何が子供たちを知的興奮の渦に巻き込むのか分析と一考察を述べることにする。
いわば、「向山型算数」の入門指導例である。
《実践指導例》
1.この計算はできるか?できないか?
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2.昼の時間は?夜の時間は?
次の問題を板書して、問う。
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ある日の夜の時間は、昼の時間より1時間短い。 |
T 「答えをノートに書いて、持ってきなさい。」
C 次々に自信ありげに持ってくる。
T ほとんどの子がまちがっている。説明無しで、黙って×を付ける。
C (どうして?)という表情で再度ノートを持ってくる。
T なかなか正しい答えが出ない。
「もう降参だね。教えちゃおうかなぁ。」
C 「待ってー。」「もう少し時間を・・・。」
子供は夢中になって取り組んでいる。教師は、憎らしいほど腕組みしてニコニコほくそ笑んでいる。
3.ある数□を解く問題
平成9年の「向山教え方教室」(福岡会場)での一コマ。
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小学校4年生の「わり算」の例題で、「120枚の色紙を、30枚ずつ分けると、何人の人に分けられますか。」の例題の導入を、向山先生だったら、どうしますか? |
という会場からの質問に、
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「80円を20円ずつ分けると、何人に分けられますか。」という例題のほうがよいと判断したので、教科書の例題はしません。 |
と答えたという。
どういうことか?
時には教科書の例題をも疑ってみる(加工する)ことも必要ということらしい。
つまり、子供が考えるとき、お金なら10円玉8枚として考え、2枚ずつ分けると、
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8÷2と置き換えられる |
ことの方が、分かり易いという考えだ。
どういうことなのか、次の問題で考えてみよう。
次の問題を考えてみると、この意味深さが分かる。
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ある数を□にして、わり算の式を書きなさい。 |
私は、悔しいができなかった。
向山氏の教え方を以下に記す。
①の例題を見ると、ドキッとした。
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8÷2から考えさせている |
つまり、難しい問題、子供がつまずくであろう問題(ジャンプしている問題という)は、
教師が易から難に加工してスモールステップで、できるように意図的に仕組んでいくというわけである。
向山氏は、「8÷2」の例題(基本型とも言う)をいろんな場面で、意外によく使われているようだ。
おそるべし!名人技!「教え方の極意ここにあり」である。
4.なぜ、そういう答えになるの?
3年生に「かけ算」の授業をした。その一場面を紹介する。
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発問 20×3は、いくらになるでしょう。 |
・60です。(いわゆる「できる子」の声)
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指示1 なぜ60になるのか、わけを言ってください。 |
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説明 やり方だけを説明したのではいけません。なぜ、そういう答えになるのか、みんなに分かるように説明できなければ、本当に分かったことになりません。 |
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指示2 そのためには、次のようにしなさい。 |
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指示3 できたら、席を立って、友達の書いたものと比べてごらん。 |
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指示4 同じ考えを書いていた人同士で黒板に書きなさい。 |
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指示5 書けた順に説明してください。 |
以上、「できる子」も「そうでない子」も真剣に考えていた。
緊張感に教室は満ちていた。
普段、実際の「向山型算数」授業では、以上のような展開もまれにだが、あるらしい。
これまでの「問題解決型学習」と根本的に違うのは、「できない子を救う」「できない子を問題に集中させる」
「できる子もできない子も、緊張感のある教室空間を共有する」「黒板を子供たちに開放する」
という基本理念が存在しているということである。
5.数って不思議!?
① 不思議な足し算
二桁の数の十の位と一の位の数を入れ換えた二つの数の加法から、数の持つ美しさを発見することができる授業である。
問題をノートに書くように指示をしてから次の式を板書する。
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板書 12+21 |
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指示1 答えをノートに書きなさい。 |
・33です。 「正解です。さすが!」「じゃあ、これは?」と言って
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板書 13+31 |
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指示2 先ほどと同じように、答えを書きなさい。 |
・44です。 「やっぱり、あってる。いい調子!」などと言って、
同様に、14+41,15+51,16+61,17+71,18+81,
23+32,24+42・・・・・とテンポ良く取り扱う。
このあたりになると、子供たちから「あれ?」という声が出てくる。
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発問1 どうかしたの?何か発見したことあるの? |
・答えが33,44,55,というように同じ数字が並んでるよ。
・足される数と足す数が逆さになっている。
・問題が12,13,14,と順番になっている。
・答えが11の倍数になっている。(これは習っていないので出なかった。)
どの発見も大いに誉めた後、
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発問2 本当に数字を入れ換えてたし算をすると、同じ数字が並ぶのかなあ。 |
時間は5分。集中して子供は取り組んだ。
問題の計算をしている中で、「あれっ?」とか、「おかしいなぁ。」という声が出てくる。
ついには、「先生。違う数になった!」と言う子まで出てくる。
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発問3 何か新しい発見でもあったんですか? |
・69+96は同じ数が並ばなかった。
・19+91は110になって、0が入ってしまうよ。
計算をしている過程で、繰り上がりのある場合は、ぞろめの答えにならないことに気付いたのである。
数の不思議さに興味を持つ授業であり、いつしか計算に夢中になって取り組む子供の姿が見られた。
知的問題は、子供の知的好奇心をくすぐるのである。
② かけ算ピラミッド
かけ算による数のおもしろさ、不思議さを感じることができる一例である。学年に応じては、電卓を使わせてもよい。
まず、次の式を板書する。
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板書1 1×1 |
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発問1 答えはいくつですか。 |
・全員大きな声で「1です。」「簡単すぎるー。」
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発問2 簡単だって?じゃあ、これは? |
と言って板書。
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板書2 11×11 |
3年生以上であれば、筆算で答えを出させる。2年生であれば電卓を使う。
・「121になりました。」
同様に、111×111をやらせる。答えが12321であることを確認してから、
テンポ良く、1111×1111を板書して問う。
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発問3 この答えはいくつでしょう。筆算しないで(電卓使わないで)答えを求めなさい。 |
・「えーっ。」と「わかった!」という子供が半々。
分かった子に答えさせて、電卓で確かめて答えを板書。
「1234321ですね。」「よく分かったね。すごいね。天才じゃない?」と言うと、「だって、数の並び方が決まっているんだもん。」
このことで、ほとんどの子供が気付くようになる。
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発問4 では、これも計算しないで答え出せるんじゃないの?さて答えはいくらでしょう。 |
と言って、以下のように板書していくのである。
1×1 = 1
11×11 = 121
111×111 = 12321
1111×1111 = 1234321
11111×11111 = 123454321
111111×111111 = 12345654321
1111111×1111111 = 1234567654321
11111111×11111111 = 123456787654321
111111111×111111111=12345678987654321
数の美しさ、不思議さを子供たちは感じることであろう。
ポイントとしては、図のように数字を揃えて板書するということである。
隙間の時間にできる、もう一つの「向山型算数」と言っていい。
6.どんどん足していくよ。
黒板に問題を書く。
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板書1 1+2= |
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発問1 答えはいくつですか。 |
・「3でーす。」 「さすが3年生!すごい!」と誉めて、次の式を板書。
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板書2 1+2+3= |
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発問2 難しくなったでしょう。答えはいくつですか。 |
・「簡単だよ。6です。」 「うーん。君たちには簡単すぎたようだね。ふふふこれは、分かるまい。」とか言って、板書。
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板書3 |
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発問3 まいったか。答えを出してごらん。いろんなやり方でやってみなさい。 |
計算が早い子ができるとは限らないので、子供たちは夢中になって取り組む。
7.正方形はいくつ?
これも授業開きで使える。
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発問1 この図に正方形は、いくつあるでしょう。 |
ほとんどの子供が、自信たっぷりに「4つ」と書いてくる。
こちらも負けずに、自信たっぷりに×を付けてあげる。
あっている子がいたら、他の子を刺激するように「すごい!当てられてしまった。やられたぁ。合格!」と言って◎する。
正解は、5つである。
提示する図を変化させて問う。
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発問2 では、これには正方形はいくつあるでしょうか。 |

「9つ」と書いてくる子供はヘリ、「10個」と書いてくる子供が増える。
当然×をする。
正解は14個である。
ここまででも、子供たちは充分熱中する。
さらに図を変えて、駄目押しをする。
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発問3 これには、正方形全部でいくつあるのでしょうね。 |

このように「易から難へ」ステップを組んで取り組ませると、自分の教室にも夢中になって取り組む子供が現れるのである。
いつのまにか、夢中にさせてしまうのである。
また、ここでは、ノートの書き方を教え、実際に書かせてチェックすることも大事である。
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・日付を書く。 |
なお、向山氏は、この問いの答え方では、次のような書き方を徹底させている。
○ まとめ〜抽出した授業の原則BEST10(「向山型算数」入門編として)
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Ⅰ 授業は実に教科書通り、テンポ良く進める。 |
むだな説明や工夫を省き、まさに一字一句、挿し絵に至るまで徹底的に「教科書通り」教えたほうが1番分かり易く力が付く。
| Ⅱ とまどいやすい問題をやらせる前に、それよりも易しく基本的な問題を解かせて、意欲付けを図る。 |
いわゆる「易から難へ」スモールステップを組んで指導すると、子供はいつしか学習に夢中になっていく。
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Ⅲ 問題を解いたらノートを持ってこさせて、○を付ける。 |
何よりまして、確実な個別指導である。一人一人の理解度・つまずきの把握という点で効果大である。
×を付けるときは1回目と2回目はだまって。3回目はヒントを。
○を付けるときは必ずちょっとした誉め言葉を。
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「3問できたらもっておいで。」という指示は、実際やってみるとその良さが分かる。3問目だけに○を付けるのである。こうすれば、行列にはならない。 |
| Ⅳ 出題した問題や発問の答えが分かっても、どうしてそうなったのか説明できる(言える)ように言い方を徹底する。 |
結果よりも過程である。それを説明できるような言い方書き方を徹底する。
きちんと口にできて、理解が少しずつ確かになっていくのだ。
時代を越えても変わらぬ原理と考える。
| Ⅴ 子供の意欲を高揚させたり、子供の気持ちを受け止めたりする言葉を用いる。 |
至極当然のことである。
しかし、頭では分かっていても実際に教師は、「褒め言葉」を45分の授業で何回投げかけているのだろう。
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Ⅵ 終わったら何をするのかを指示する。空白の時間を作らない。 |
活動させる前に、指示しておく。途中からの指示は子供の集中を鈍らせ、混乱させる。
| Ⅶ 簡単な問題の答えを言わせるとき、遅れがちな子供を指名し答えさ せる。 |
これも当然のことながら、全員参加を前提とした一つの手立てである。
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Ⅷ 授業中の個別指導は、長くても一人30秒以内とする。 |
これに加えて、私の場合、間違いの個所に気付かせるために、次のようなチェックをしている。
答えの○×だけではなく、1つ1つの数字に○を付けていくのである。
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繰り上がりの小さな数をしっかり書かせて、そこも○付けのポイントにするのである。どこでつまずいたか、自分で気付くのに有効である。
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Ⅸ 間違いの原因に気付いた子供のつぶやきを繰り返して言い、間違い方の進歩を誉める。 |
(子供)「あっ、ひき算なのに足しちゃった。」
(教師)「ひき算なのに足しちゃったの。」ありのままに子供を受け入れるということであろう。
さらに、自分で自分の間違いに気付くことは、すばらしいことだと子供に返す。
「何がわからないのか。どこが間違いなのか。」分からないことが問題なのである。
| Ⅹ 授業はチャイムが鳴る少し前に終わるようにする。そして、できれば全員のノートを集めて、ノートの書き方をすばやくチェックし、その場ですぐ返す。 |
終わりのチャイムが鳴っているのに、のびる授業は、それだけで「授業の下手な教師」とまで、向山氏は断言する。
肝に命じたい。
また、ノートの取り方については、以下のことは、最低限徹底するべきである。
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・メモ書きや筆算は、きちんと書いて、消しゴムで消さない。 |
Epilogue☆
以上「初心者入門編」である。というか初心者三村個人の「入門編」である。
この拙いレポートを読んで「向山型算数」が分かったと言う人は、まずいないだろう。
とにもかくにも、まずはやってみることである。
追試してみることである。
それが一番の近道である。
さすれば、「子供の事実」と「腹の底からの手応え」を身に浸みて感じることであろう。
※ 現在もって「向山型算数」の奥深さには手が届いていない。
しかしながら、「子供の事実」「腹の底からの手応え」というものがどういうものなのかは徐々に実感できるようになった。