’00.2.18

                                           NO.119

福祉の授業

「シルバーシートは必要か?」 

                           

1.主題名   「シルバーシートは必要なのか?」(三輪辰男氏の追試)

 

2.ねらい    制度化されたシルバーシートの設置を取り上げ、それが高齢者へのいたわりや思いやりの心を育むものになっているか、その是非を考えることができる。

 

3.対象学年   6年生

 

4.授業の流れ

  (板書)9月15日

 黙ってこのように板書して問う。

発問1 これは、何の日でしょう。

 2〜3名が、すかさず「敬老の日」と答える。

ここは、すぐに「その通り。国民の祝日、敬老の日ですね。」と確認し、「敬老の日」と板書。

発問2 では、この「敬老の日」というのは、どんな日のことを言うのですか。

「老人を敬う日」「老人をいたわる日」と言う声がポツリポツリ。どの子も意外によく分からないでいる。

指示1 ところで、この「敬老の日」は一年間で一日しかありません。
では、あとの364日はお年寄りを大切にしたり、感謝しなくてもいいと考える人は○、そうでないという人は×をノートに書きなさい。

 1分後、挙手させる。

   ○・・・・32人、×・・・・0人

 理由を座らせたまま、数名に答えさせた。

・その日だけ老人をいたわるっていうのはおかしい。
・たまたま、その日だけを「敬老の日」としただけだから。
・困っている年寄りをいたわるのは、あたりまえだから。

 「そうですね。」と言って資料写真を黒板に貼る。

写真には、電車内で、若者が座席に座っていて、

その近くに疲れた表情で手すりにつかまって立っているおばあさんの様子が写し出されている。

指示2 この写真を見て、気づいたこと、思ったこと、感じたことを箇条書きでノー    トに書きなさい。

 3分後、自分の書いた数が少ないなぁと思う子供からどんどん自由に発表させた。

 以下のような発言が続いた。

・なぜ若い人は、席をゆずらないのか。
・お年寄りの人が、バックを持って、もたれるように立っている。
・おばあさんは疲れているようだ。
・老人の表情がなにやら苦しそうだ。
・若い人は、老人が立っているのに知らんぷりしている。
・他の人も座っているのに、なんで席をゆずらないのかと思う。
・老人がだるそうでつらそう。
・男の人が座っているところは、ドアの近くで、たぶんシルバーシートだと思うの
 にゆずらないのでいけない人だ。
・おばあさんに、無関心で何も感じないのかな。
・みんなお年寄りのことを無視している。
・おばあさんは、さみしそうな顔をしている。

 「いろんなことに気づきましたね。」と褒めてから問う。

発問3 もしみなさんなら、こんな時席をゆずりますか。(少し間をおいてから)
     ゆずる○、ゆずらない×としてノートに書きなさい。
    そのわけも簡単に書きなさい。

 全員が書き終えたのを見計らって、2分後に挙手にて人数分布をみる。

一人を指名し、「○○さんは、このクラス○×どちらが多いと思いますか。」と尋ねてから挙手させた。

(その子は○が19人いると答えた。)

   ○・・・・21人、×・・・・11人

 

指示3 ここでは討論しません。ちょっと聞いてみます。なぜ○なのですか。なぜ
×なのですか。○×交互にその理由を自由に発表してください。

 


○前にお年寄りの四肢体験をしたら、立っているのもつらくて、難しかったから、ぼくは譲ります。
×譲ってあげたいんだけど、なかなか席に座ってくださいと言い出せないと思うから
○お年寄りは、私より体力がないからです。
×周りに人がいるし、なかなか恥ずかしくて座ってとかそういうことばをかけれないと思うから。
○おばあさんが疲れてかわいそうだ。
×恥ずかしくて声をかけにくい。
○恥ずかしいと思うけど、ばあさんは疲れているし、つらいと思うから、黙ってい
るのは何かいやだなぁと思って譲りたい。
×譲りたいけど、私には、きっと譲る勇気がない。
○お年寄りの人は、足腰弱っていて、歩くと疲れているから。
×お年寄りの人に声をかけにくいから。
×若い人たちは、自分たちだって座りたいし、座りたいから座っていて、写真を見
ると本を読んでいて、無関心と言うより本に夢中だから。
○お年寄りに席を譲って、ぼくたちは立って別の席を探すこともできるから。
×自分は人に見られるし、何かやっぱり恥ずかしいから。
○自分は立っていても疲れないから。
×僕は譲りたいとは思うんだけど、そういう場面に出くわしたら、実際は思ってい
てもできないんじゃないかなと。
○小さい頃、遠くへ行ったことがあるんですが、その時おばあさんが、隣においで
と言って座らせてくれたので、今度は私の番だと思う。
 

大方の意見を聞いたあと、

「今の意見を聞きますと、×の人たちは『ゆずらない』と言うより『ゆずれない』という気持ちの方が強いのですね。」と確かめてみた。

 ×派全員が頷いた。

説明1 ところで、こういう世界の統計資料があるんです。
電車やバスに乗ったときに、「お年寄りや体の不自由な人がいたら、あなたは席をゆずりますか。」というのを調査した結果があるんです。

 

指示4 ちょっと紹介しますので、みなさんもノートに予想しながら書いてくださ
い。

以下4カ国を、問答しながら板書していく。

統計資料は、「子供の感性を育む」(日本放送出版協会)から抜粋した。


 フィリピンは?・・・・・40%
 イランは?  ・・・・・59%
  イギリスは? ・・・・・63%
  アメリカは? ・・・・・51%
 

 「へぇー。」「ふーん。」という声が飛び交う中、次の問いかけをした。

発問4 では、我が日本では、「席をゆずる」と答えた人は何%でしょう。
    予想してその数字を書きなさい。

 全員に座ったまま答えさせた。

 50%、30%、36%、70%、60%、15%、23%、85%、・・・・様々な予想があげられた。

発問5 30%以下の人に聞きます。自分たち日本人として、そのことどう思いま
すか。他の国より低いわけだ。なんでそう思ったの?

 一人指名して尋ねてみた。

・譲らないような気がした。今の日本は変わってきた気がする。物が便利すぎて。

 突っ込んで聞く。

発問6 日本と言う国いやですか?

 

・いやではないけど・・・・。日本は好きだけど・・・・・。

うまく答えられないでいる。

だが子供なりに、今の日本を客観的に見ているようにも思える。

ここでは、これ以上深入りしない。 

微笑みながら、「なるほど。分かった。」と受け止めてから正解を板書した。

 (板書)日本は?・・・・19%

 近かった子供は、「やったぁ。」と喜んでいる。そのあと、「つめたい。」というつぶやきも聞こえた。

発問7 これを知らせるのは、日本人としてしのびなかったんだけれど、このまま
でいいのかなあ。よくないと思う人?(全員が挙手)
そうだなあ。どうしちゃったんだろう、日本人。
ところで、日本では、電車とかバスとかなんかで、こういうお年寄りや体の不自由な人たちのために、座席にある工夫をしていますよね。
何でしょう。

 即「シルバーシート。」と子供たち。

 「その通り。」と言って板書。

説明2 このシルバーシートというのはですね。いつから始まったかというと、昭
和48年9月15日の「敬老の日」に、はじめてJRでこういうのが設置されたのです。

ちなみに、2000年10月現在では、シルバーシートではなく、「セキュリティ・シート」というのが主流になってきている。

お年寄りのほか、身体の不自由な方、けがをしている人、妊婦の方など優先的に座れるように配慮されている。

発問8 さて、最後に聞きます。今の日本の現状を考えてみて、日本にシルバーシートというものはいらないと思う人は○、いやいる、必要だと思う人は×、どちらかをノートに書いて訳も考えなさい。

 時間も押し迫ってきたので、3分後作業を中断させて、挙手させた。

 以下の通りである。

   ○・・・・・8人、×・・・・・24人

 

指示5 では、この○派の人から数名意見を述べてもらって、すぐ反論してもいいですから、どんどん自由に意見を述べていってください。では始めなさい。

 

○日本は19%で譲らない人が少ないし、譲らないのならシルバーシートの意味がないからいらないと思う。
○シルバーシートがあって、それで席を譲っていても、シルバーシートだから譲る
って言うんじゃなくて、どういう席でも譲るって心がないとシルバーシートの意味がないと思います。
○19%だし、このシルバーシートに若い人が堂々と座っているのであれば、いっ
そ無くした方がいい。
○若い人が自由に座っているのであれば必要ないと思います。
○平気で座っている人がいるんだったら、そんなの無くたって別にいい。
×19%だからいらないって言ったけど、19%でも譲ると言う人はいるんだから
その割合だけで決められない。
×○○さんの言うことはよく分かるんだけど、シルバーシートを無くしたら、もっとよけいに老人の人がつらい思いをすると思うので必要。
×ぼくは、やっぱり必要だからあるんだと思います。
×付け足しで、100人中の19人だから、日本にはもっといっぱいの人がいると
思うので、やっぱりあった方がいいと思う。
○×の人に質問ですが、もしシルバーシートしか空いてなくて、他の席が混んでいて座れなかったらどうしますか。
×座ってもいいんだけど、お年寄りの人が立っていたとしたら、譲ってあげると思
います。
×そういう場合、老人の人が立っていないんだったら、私も座ります。
×逆に○の人に質問するんですけど、前の勉強で老人がどんどん増えているっていったじゃないですか。シルバーシートが無くなったら、逆に老人の人はどうするんですか。
○普通の席に座ればいいんじゃないんですか。
×でも日本は譲る人が19%しかいないんだから、あんまり老人は座れないと思います。
○普通の席で座るように、呼びかけたりすれば、たとえ19%であってもどうにか
なるんじゃないんですか。
×それは、あまり賛成できないんですけれど、それまでして同情みたいにしてやられると、老人の方々にしてみればいやだと思うんですけど。そこまでして、みんなに同情してもらうのも、あんまりよくないと思います。
×僕も○○さんに付け足して、迷惑だと思います。
×付け足しで、本当の優しさでないと、老人は喜ばないと思います。
○じゃあ、シルバーシートも迷惑なんですか。
○おなかに赤ちゃんいる人とか、老人とかそういう人たちに譲っている人は、現実にいないでしょ。
×いるって答える人には、あんまり言い方よくないけれど、同情する人と同情しな
い人と、○○さんが言ったように優しさがあってやる人がいるじゃないですか。
それで、いらないって言う人は、そういうふうになくすっていうのも分かるんだけど、ない人は、同情している人は別として、19%じゃない人は、やっぱりそういうふうにしないといけないのかなと心が変わるかもしれないじゃないですか。
 だからやはり必要だと思います。シルバーシートは、おせっかいとかじゃなくて
あった方が、その人の心を変えられるんじゃないんですか。
○○○さんは、さっき老人が増えるからシルバーシートは必要だって言いましたよね。
 でも今19%だとしても、そういう高齢化社会が問題になってきたら、日本でも
それなりの対応とかをすると思うし、○○さんがさっき言ったように、あればシルバーシートしか譲らないようになって、その席しか譲らないようになるので、なくてもどこでも席を譲るようになるようにシルバーシートはなくなった方がいいと思います。
○×の人たちに質問するんですけれど、シルバーシートじゃなくて、普通の私たちが座る席で、老人が隣に立っているとします。それで、私たちは座っています。
×の人たちは本当に譲りますか。教えてください。
×僕は譲ります。
○なぜそう思いましたか。
×それは、さっき討論したんだけれど、僕の意見では、自分より体の不自由な人の方がつらいからです。

 時間が残り1分を切ってしまった。ここで討論をうち切った。

発問9 では、最後の最後に聞きます。もう一度聞きます。手を挙げてくださいね。シルバーシートはいらない(・・・・7人)いる(・・・・25人)

     なるほど。19%・・・・・。終わります。

 授業が終わったあとも、教室のあちこちで、ちょっとした論争が続いていた。


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