(C)Two-way/小学校/総合/福祉/ボランティア/手話・指文字                                                      制作・実践:三村 弘
TOSSLAND

                          ’99.1.20

                                                                                               NO.32

ボランティアの授業〜手話・指文字

 


(主 題)
手話・指文字で伝え合おう。(耳の不自由な人のために)
(ねらい)
・耳の不自由な人は、手話という方法を使うことで、人と心を通わせていることを知る。
・実際に簡単な手話や指文字を使って、歌ったり自分の名前を伝えることができるようにする。

 

 この授業では、「耳の不自由な人」の心情を理解するということより「手話」という伝達方法によって話ができ、心を通わせることができるのだということを知る、そのこと重点を置いた。

 そのためには、実際に手話クイズで楽しみながら言葉を表したり、歌を手話で歌ったりする活動を中心にして、活動主体の展開を試みることにした。

 とにかくやってみることである。課題は後から見えてくる。

 たくさんの反省点や次回への課題を見つけることが、授業の別の目的でもあるのだ。

 

 以下、授業の流れを述べる。


指示1
ちょっとしたゲームをします。○○さん、前に出てきてください。
 

と言って、黒板の前に立たせる。


説明1
1,2号車は、ある文字を声を揃えて言います。
3,4号車も、ある別の文字を同時に声を揃えて言います。
その2つの文字を合わせれば1つの言葉になります。どんな言葉になるか、当ててみてください。
例えば、1,2号車は「バ」、3,4号車は「ス」と同時に声を出して言いますと「バス」という言葉になりますね。
やってみましょうか?(1回やってみる。)
このようにして、何の言葉を言っているのか当てるのですよ。

 

 説明後、2人くらいに、当てさせるゲームを試みてみる。

 ①「さ・る」「か・め」など。

 ② 3グループにして「あ・し・た」「く・み・こ(名前)」など。

 ③「みうら・ひろし」など文字を増やして。

 子供は、ワーワー言いながら、とりあえずゲームを楽しむ。

 ここまで3分程度である。


説明2
どうですか?うまく聞き取れましたか?
耳がいい君たちでも、聞き間違いってあるんですね。
耳が全く聞こえない人は、こんなゲームすら楽しむことができませんよ。今日は「耳の不自由な人」について学習します。

 

 


発問1
さて、耳の不自由な人に、あなた方の自分の名前を教えてあげることにします。
どんな方法があるでしょうか。考えられることをできるだけたくさん、ノートに箇条書きで書きなさい。

 

 ノート作業後発表させる。全て板書する。


・手話・口の動き・指で背中に字を書く・相手の手に書く・点字・手のひらに書く・紙に書いて見せる
 

 以上が挙がった。間髪入れず聞く。


発問2
名札も、紙も、鉛筆も何も持っていなかったら、どうしますか。
 

 「手話かなぁ。」というつぶやき発言。


板書・指示2
そうです!よく知っていますねぇ!(大げさに誉める)
こんなとき私達は「手話」というものを使うのです。
ちょっと手話を使って、クイズをしてみましょう。

 

 手話で表した言葉や物当てをし、そして手話を使って歌を歌わせる。

 今回は【クイズ①】を取り上げた。【クイズ②】は参考までに紹介しておく。(絵図はここでは省略)


【クイズ①】
(1)今から先生が、「色の名前」を表すクイズを手話でやってみせます。何の色か当てなさい。
①唇を指す→「赤」
②歯を指す→「白」
③親指を額につけ人差し指を軽くふる→黄(ヒヨコのとさかの意)

(2)次は、動きを表す言葉です。
④「見る」動作
⑤「並ぶ」動作

(3)今度は、様子を表す言葉ですよ。
⑥重ねた右手を前方にすべらせる→「きれい」

(4)最後に、ある物の名前です。
⑦両手を使って「花」

(5)さて、ここまで手話でやった言葉が出てくる歌がありますが、何という題の歌か分かりますか?(手話でヒントを出してもよい)
⑧両手人差し指で、絵を空書きする→「チューリップ」である。

【クイズ②】

これから先生が手話である物を表します。何を表しているのか当ててみてください。
①山②お寺③鐘④カラス→これらを使った歌は「夕焼けこ焼け」である。

 

 


指示3
この歌をみんなで、手話でやってみましょう。
先生の真似をしながら歌ってごらん。

 

と話して何度か試みてみる。2,3回遅いテンポで練習した後、普通のテンポにする。上手になってきたら、少し速いテンポに挑戦させてもいいだろう。自分一人だけで歌ってできた子供には自然と拍手が起こる。(この手話クイズと手話の歌は、大野木一雄氏の追試であり、引用文献は「百万人の手話」丸山浩路著である。)

 

 子供は、全員、実に楽しそうに手話に取り組んでいた。

 ある程度、手話に親しんだ後、


説明3
このようにして、手や身振りで相手に伝えることができるのです。
手を主に使って、相手と心を伝え合うのですから「手話」というのです。
覚えることができたら、お互いにお話ができて楽しくなることでしょうね。
ところで、先ほどの問題に戻ります。自分の名前を教えるということですが、実はこういう方法があるのです。指を使うんです。

 

と説明をして別紙のプリントを配布する。(「おもしろ学習スキル」正進社P12,13指文字50音表使用)


指示4
これは、「指文字」と言って、手話の他にもこういうものもあるのです。
さあ、これを見ながら、自分の名前の文字を番号を付けながら、鉛筆で○で囲んでごらん。
その後で、自分の名前を口に出しながら、指で練習してみてください。

 

 ここでは、時間をたっぷり与えた。

 練習後、全員に指で名前をゆっくり伝えてもらうことにしていたが、時間不足で断念。席の隣同士で指文字の自己紹介をさせた。

 できた数名に発表してもらった。見ている子供には、正しいかどうか確かめながら聞くように促す。

 スムーズに上手にできた子には、「おーっ。」という歓声とともに拍手が起こった。

 

 時間がきてしまったので、最後に次のように言って授業を終えた。


自分の名前だけでなく、お友達やおうちの人に向かって、その人の名前を手話や指文字で教えてあげてみてくださいね。
手話が、もっと楽しくなりますよ。

 

 

 子供の授業後の感想である。


・耳の不自由な人は大変です。自分の名前の指文字を覚えることができて楽しかったです。
・自分の名前はできたので、他の「よろしく。」などの挨拶を覚えたいです。
・手話は難しいと思ったけれど意外に簡単だと思った。
・人を助けるための勉強、嬉しかったです。手話ができました!
・今日の道徳の授業はAである。わけは、耳の不自由な人は、ぼくたちと手話で心を通じることができると思ったからである。
・今日の道徳の授業はA。手話で「チューリップ」の歌ができたからだ。
・今日の授業はAだった。わけは自分の名前が手話でできたから。あとは、そんな人はとってもかわいそうな気がした。
・今日の道徳はAである。耳が不自由でもいろいろできるということがわかったから。
・今日の道徳の授業はAです。自分の姓字だけだったが覚えた。
・最初できるかなと思ったが、ちゃんとできたのが嬉しい。
・今日の授業で手話の意味が少し分かりました。

 

 

○おわりに

 

 授業後の子供の感想文からも、体験するということは理屈ではなく、いかに心や身体に意識付けられるかということを感じさせてくれる。

 総合的学習の新設に伴い、体験活動の重視がここにきて一層強く提言されているが、体験なくして「福祉」は語れない、「福祉」を知ることはできないと断言できる。

 また、今回紹介した実践を含め、たかだか5,6時間程度の授業をしたところで「福祉を理解できた」と語ることなど愚の骨頂なのである。

 身体の不自由な方に対しての本質的なところでの理解や、それに裏付けされた具体的な働きかけなどになると、それは、もっとずっと先の課題である。

 

 それでもわずか5,6時間の授業でも、子供たちは変わってきている。

 点字・手話・バリアフリーなどに興味関心を示すようになる。

 身体の不自由な方を意識するようになる。

 そして、自分を意識し見つめ直すようになってきている。

 

 やはり、まずは「やってみる」ことである。理論に裏付けられた実践もあるだろうが、実践を潜らせて理論を導いていくことのほうがよっぽど大事ではないかと考えている。

 先行実践例を参考にしてでも授業してみることである。

 そして、子供に「あれども見えず」を見えるようにしていくのである。

 子供の生活意識の中に、意図的に入れてやる。そして今の自己の視野を広げてあげるのである。

 その授業の積み重ねが、ひいては、子供に「福祉とは何か」「幸せとは何か」「人間とは何か」に触れさせる糸口になっていくに違いないと思っている。

もどる                トップへ