(C)Two-way/小学校/国語/手紙文                                                      制作・実践:三村 弘
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                        ´00.5.12

                                          NO.104

「手紙文を書く」指導

                     

○ はじめに

 新指導要領の国語科(小学校編)の目標を再度みてみる。


  国語を適切に表現し正確に理解する能力を育成し,伝え合う力を高めるとともに,思考力や想像力及び言語感覚を養い,国語に対する関心を深め国語を尊重する態度を育てる。
 

 新国語科のキーワードは,紛れもなく『伝え合う力』である。

 「話すこと・聞くこと」と新たな領域が設定されたのも,一方的に発信・一方的に受信することを改め,双方向的に通じ合ったり,相手や目的・場面に応じて自分の思いや考え,用件などを伝え合ったりすることが求められているからである。

 ところで,『伝え合う力』は音声言語能力と密接な関係にあるのだが,実のところそれのみで培われるものではなく,「書くこと」「読むこと」「言語感覚のかん養」など相互関係の中でトータルにバランスよく育成されるものである。とりわけ「書くこと」による「伝え合う」学びは,音声言語と並び大きな比重を示すものと私自身考えている。

 再び指導要領を読んでみよう。

 この度,二学年で示された「B書くこと」の領域に記された言語活動例は,以下のようである。


▼第1,2学年
・絵に言葉を入れること
・伝えたいことを簡単な手紙などに書くこと
・先生や身近な人などに尋ねたことをまとめること
・観察したことを文などに表すこと   など

▼第3,4学年
手紙を書くこと
・自分の思ったことなどについて調べてまとめること
・経験したことを記録文や学級新聞に表すこと   など

▼第5,6学年
・礼状や依頼状などの手紙を書くこと
・自分の課題について調べてまとまった文章に表すこと
・経験したことをまとまった記録や報告にすること   など
 

 以上の活動例の中で,注目すべきものがある。

 これである。


 手紙を書くこと
 

 これだけが第1学年〜第6学年まで,共通した活動として用意されているのである。

 もちろん,発達段階に応じて,その指導内容や活動内容に違いはあるのだが,「手紙を書くこと」の活動内容は終始一貫していると言っていい。

 考えてみれば,手紙は特別な場合を除いて,まさしく双方向的な「伝え合う」手段となるものである。相手の立場や状況などを意識し,目的をはっきりさせて自分の思いを失礼のないようにていねいに伝え合うものである。

 

 話は変わるが,国語科の現状と課題について次のような指摘がある。


「手紙や通信文を書く学習」では,(自分の喜怒哀楽はそれなりに表現できるが)目的や意図に応じて適切に文章表現する力が不足している。
また,従来,手紙や通信文を各学習は,ややもすると形式的な書式や様式の模倣になる傾向が散見された。これからは(中略三村)「伝え合う力」として育成する必要がある。その学習の過程で,従来の書式や様式を参考にしながら,相手・目的や場面に応じて必要な書式や様式を工夫したりすることが大事である。
 

とも小森茂氏(文部省小学校課程教科調査官)は,「手紙や通信文を書く学習」(明治図書)で述べている。

 

 手紙は,実用的価値から言っても作文技能の面から言っても,作文の学習指導上極めて重要な対象である。

 手紙を書くことの教育的意義は,情報化社会にあって,今こそ見直され,「総合的な学習の時間」の創設に伴い一層注目され求められてきているのである。

 ここでは,「手紙を書く」指導のあり方に触れ,その一端を述べてみたい。

 

1.手紙とは何か

 まずもって「手紙とは何か」その定義と特性を明らかにしてみる。

 国語教育研究大辞典(明治図書)によると次のようになる。

 簡単にポイント図解してみた。


  (定義)
     用件などを記して他人に送る文書。書簡,書状。
 

    実用的手紙文
    ・伝言 ・催促
    ・依頼 ・照会
    ・注文 等

← →

    社交的手紙文
     ・あいさつ ・見舞
     ・招待   ・お礼
     ・近況報告 等

                    ↓

(特性)
  ① 書く目的が極めて明白な文章である。
  ② 相手を意識し,相手に即して表現される。
  ③ 一定の慣用形式を持っている。
  ④ 表現上(特に礼状・見舞状・わび状等の場合),礼法上の配慮がなさ 
    れる。


2.指導の手立て〜「手紙の手引き」を活用して

 手紙の定義,特性を明確にした上で作成したのが別紙の「手紙の手引き」である。一般的な構成や表現例,文章例など参考として作成した。

 入門としては,やはり基本的な手紙の書き方に触れさせ慣れさせることが肝要である。手紙は何度も書いていくうちに自分らしい書式の工夫や表現技法が備わってくるものだと思われる。

 指導の実際は5年生が対象であるが,二学年をまとめて指導内容を示している新国語科においては,この手引き(シート)は小学校の高学年(5,6年)に活用できると思われる。

 参照願いたい。

 

3.指導の実際

 小森氏も述べているように,手紙文の指導は,単に一様の形式を提示し模倣させ書かせることで終始しては,本来の手紙を書く楽しささえ薄らいでしまい,手紙を書く目的すら学習者自身ぼやけたものとして受け止めてしまうであろう。

 なぜならば手紙は,相手があって,目的があって,必要があって始めて筆を執るものだからである。

 そのためには,必要感を持たせる場の設定を指導者は工夫する必要がある。

 本校の5年生は,「総合的な学習の時間」の試みとして,今年度『そだてよう ぼくらのおいしい あきたこまち』というテーマを掲げ,年間を通し「米」を中心とした総合的な学習を行っている。

 このような流れにおいては,必然的に地域との密接な触れ合いが求められ,農家の方々をゲストティーチァーとして招いたり,地域の先生として田植えや稲刈りなど田んぼや稲をお借りして直接的な体験を通して子供たちは学ぶことになる。年間を通して子供たちは地域に密着し,お世話になり教えをいただくことになる訳である。

 したがって当然,そのお願いやお礼を形作りながら体験活動を挟んで学習を進めて行くことになる。

 ここに,手紙文の指導を位置付けるのである。

子供たちは教えていただける必要感を伴って,明確な目的を持つことになる。「手紙を書く」ことは,充分,有用性を持った学びとして確立するのである。

 

 

(手紙の手引き)・・・子供用に作成したもので、実際は縦書き

○手紙とは・・・


用件や用事などを記して、人に送るために書いた文
 

  ※「手」=文字、言葉のこと。

○書くときのポイント


① 手紙は必要があって書くものですから、 何を伝えたいのか はっきりさせて書くことが大事です
② 手紙は書く相手がはっきりしているわけですから、その方の 心に響く言葉使いで 書きます。
③ 手紙は 相手の立場・年齢・自分との関係などを考え、 それに合った書き方をします。
④ 手紙は相手に失礼のないように心をこめて、 正しくていねいに 書きます。
⑤ 手紙には一つの 決まった形式 があります。
 

○手紙の一般的な形式と組み立て


 【頭語】 書き出しの語 ①拝啓・・・最も一般的に使われています。
                 きんけい
                ②謹啓・・・とてもていねいな感じを与えます。
                 ぜんりゃく
                ③前略・・・前文を省略するときに使いますが、初めての相手に使うのは失礼です。


  ぜんぶん
  前文   (はじめのあいさつ)・季節を感じさせるあいさつ文
 (はじめ)             ・簡単な自己紹介文(初めて出す場合)
                    ・感謝の気持ちを告げるあいさつ文 など
                            ※前略で始める場合は、前文は必要ありません。


  しゅぶん
  主文   (一番伝えたいことを書く大事な部分)
 (なか)           ・「さて」「このたび」「さっそくですが」などで改行して書き始めます。
                 ・なぜ、何を、どのようにお願い(お礼)したいのかはっきりさせ相手によく分かるように                  書くことが大事です。
                ※ここが不充分では手紙の役目を果たさなくなるほど、中心になる部分です。


  まつぶん
  末文   (おわりのあいさつ) ・手紙の内容により、いろいろなパターンが考えられますが、
 (おわり)            「〜よろしくお願い致します。」「〜申し上げます。」などでしめくくることが一般的です。


  けつご            けいぐ  そうそう
 【結語】 結びのことば ①②敬具 ③草々(かしこ)
             ※頭語と対応しています。
             ※「かしこ」は女性が使います。


  あとづ
  後付け (日付)    ※たて書きの場合、末文を書き終わったあと「後付け」を記して形式をととのえます。
       (自分の名前) 
       (あて名)
 

 

 最近ではこのような形式にこだわらず、自由な形で書くことが多いようです。

 しかし、手紙の種類によっては、表現の仕方や形式をきちんと整え相手に失礼のない細かい心使いが求められます。

 

 

 心をこめて手紙を書いてみよう

 

  実際に農家の方に手紙を書いてみましょう。

  心をこめてていねいに書かれた手紙文は、受け取る側も気持ちがよいものです。

  心があったかくなります。

  ここでは、自分たちの学習のためにもぜひとも○○先生にお願いして、米作りを教えていただきたいですね。

  しかし、農家の方々にとっては、とりわけ今の時期は大変忙しく、ましてや貴重な田んぼや稲をお借りするわけですから「はい、どうぞ。」と言ってくださるかわかりません。

  そのためにも五年生百五十八名が、心をこめたていねいなお手紙を書き、きちんとした形でお願いしてみましょう。そうすればきっと心を動かし、ご協力いただけることでしょう。

 

(表現例・・・たとえばこんな書き方がありますよ。)

 


前文


(はじめのあいさつ)
 

※時候のあいさつ

  ・木々の芽もいよいよふくらみはじめ、

  ・教室の窓からふきこむ風もさわやかな好季節になりました。

  ・あざやかな木々の新緑がまぶしい季節となりました。

  ・若葉の候、風かおるさわやかな季節となりました。

  ・ふりそそぐ陽光が日増しに心地よく感じられるようになりました。

※自己紹介

  ・はじめてお便りいたします。

   わたしは、○○小学校五年○組の○○○○○と申します。

  ・はじめまして。お元気でおすごしのことと思います。

   ぼくは、○○小学校五年○組の○○○○○といいます。

※お礼、おわびなど

  ・先日はお忙しいところ、わたしたちのお願いをこころよくお引き受け下さいましてありがとうございました。

  ・ぼくたちにとって初めての貴重な体験をさせていただき感謝しております。

 


末文
 


(おわりのあいさつ)
 

 

  ・それでは、お仕事も大変なことと思いますが、

  ・これからもどうぞご指導下さいますようよろしくお願い申し上げます。

  ・今後もいろいろと教えをいただくこともあるかと思いますが、よろしくお願いいたします。

  ・季節の変わり目に入ります。体調をくずさないようにお気を付け下さい。

  ・〜お元気でおすごし下さい。

  ・お体には充分お気を付け下さい。

  ・お体大切になさって下さい。

  ・健康にはお気を付け下さい。

  ・それでは風邪など召しませぬようお体を大切にがんばって下さい。

  ・またお会いできる日を楽しみにしています。

  ・お会いできる日を心待ちにしております。

  ・ぜひ学校の方においでになって下さい。お会いできる日を楽しみにしております。

 


後付け
 

 

      平成十二年五月十二日

                         ○○小学校 五年○組 三村 米太郎

○○○○様

 

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