「12モンキーズ」
12モンキーズ
     1995・米
12モンキーズ

製作:チャールズ・ロヴェン
監督:テリー・ギリアム
脚本:デイビッド・ピープルズ
    ジャネット・ピープルズ
撮影:ロジャー・プラット
音楽:ポール・バックマスター

出演:ブルース・ウィルス
    マデリーン・ストウ
    ブラッド・ピット
    クリストファー・プラマー
    デヴィッド・モース
    

2035年地下社会の科学者たち

コールは地表へ出る

タイム・トラベルの準備

タイム・トラベルの容器

囚人コール

ブラッド・ピット

ブルース・ウィルスとマデリーン・ストウ

クリストファー・プラマーとデヴィッド・モース(右)

12モンキーズ

物語

“1997年、50億の人間が死のウィルスにより死滅するだろう。生き残った者は地上の暮らしを捨てて地下にもぐる。地球は再び動物の支配する惑星となる。・・・ある精神分裂病患者の問診記録より”
・・・1990年4月12日  ボルティモア郡病院

2035年。囚人番号87645のジェームズ・コール(ブルース・ウィルス)は自分を呼ぶ放送で目が覚めた。コールはそれまでいつもの夢を見ていた。金髪の男が追われている。追っ手が撃つ。男が倒れる。それを女が泣き叫びながら追いすがる。その光景を少年のコールが見ているのだ。

コールは科学者たちに囲まれた。地表へ出てある情報を得てくるように命令される。ここは汚染された地上から隔絶された地下の世界。1996年から1997年にかけて人類の99%が死滅し、生き残った1%の人類は地下に都市を建造して住んでいた。
コールは防護スーツに身を包み、複雑な通路を抜けて地表に出た。人が誰もいない一面の銀世界。昆虫を容器に採集する。怪しげな印刷物が落ちている。『やったのは我々だ。12モンキーズ』
近くに熊がいた。ビルの上でライオンが吼えている。

「もっと高度な任務を与えよう」 地下に様々な情報を持ち帰ったコールは鋭い観察眼と強靭な肉体を認められ、減刑を条件に科学者たちから過去に送られることとなった。「人類を地表に戻す助けとなり得る任務だ。1996年に行ってもらう」 

コールはタイム・マシンの手違いで1990年にいた。そこは精神病院でコールは精神科女医のキャサリン・ライリー(マデリーン・ストウ)の診察を受ける。コールは未来からやって来たといい、人類が滅亡するなどと暴れたため取り押さえられたのだ。
「空気がうまい!ばい菌がいない!」 コールはライリーを驚かせる。ライリーはコールとどこかで会ったことがあると感じていた。

精神病者のジェフリー・ゴインズ(ブラッド・ピット)が病院内を案内する。ゴインズは首をカキカキッと振りながら話す。目の焦点が合っていない。
「“12匹の猿”という軍団の話を聞いたことは?」 コールは尋ねた。「1996年と1997年に50億人が死んだ。生き残った者は1%。起こったことは防げない・・・俺は現在、生きてる人間を救うためにウィルスのルーツを探ってる」 

コールはライリーの許可を得て電話をかける。自分を違った時代に送った科学者にかけたつもりだが、出た相手はまったく違っている。1990年だからか?
ベッドで尻をむき出しゴインズが暴れまくる。「ヒヒ、俺の親父が誰か知ったら驚くぞ!」 
コールはゴインズから手に入れた鍵を使い病院から脱走を図り捕らえられ独房に入れられた。だが、コールはその独房から煙のように忽然と消えてしまった。

「動物愛護協会の事務局が12モンキーズの秘密本部・・・ことを決行するのは奴らです・・・私はもう限界・・・さようなら・・・メリー・クリスマス・・・」 
科学者たちが2035年に戻ったコールに留守電を修復したものを聞かせた。だが、コールには覚えがない。
コールは再び、タイム・マシンで過去に送られる。

コールが銃弾の飛び交う塹壕の中にいた。どうやらまたもやマシンの故障で第一次世界大戦のさなかに送られたらしい。
「「ここはどこだ!」 2035年の囚人仲間のホセが担架で運ばれている。瞬間、コールは足を撃たれた。

1996年11月、ボルティモア大学。ライリーが公演を終え車に乗ろうとした時、男が強引に乗り込んできた。コールだった。
「フィラデルフィアへ行ってくれ、そこに12モンキーズの本拠地があるはずだ」 コールは言った。「俺の任務は純粋ウィルスの在りかを探し科学者に報告してそれを奪う。科学者はそれを現在に持ち帰り治療法を探す・・・」
街に張り紙があった。『12モンキーズ』 「やっぱりあったぞ!“12モンキーズ”だ、これで俺を信じるだろ」
あちこちに赤いペンキで『12モンキーズ』の落書きがある。それを辿って行くうちに暴漢に出会う。コールが暴漢のピストルを奪い二人は逃げる。

豚の顔を象ったドアに押し入ると、そこは12モンキーズのアジトだった。数人の男女は語る。
「ゴインズはここにはいない。ゴインズは仲間を裏切り、父を神と崇め始めたのだ」 ゴインズの父は細菌の研究でノーベル賞を受賞した化学者なのだ。12モンキーズは動物愛護のために父親に抗議するデモを計画していたのだった。

ライリーはコールが足に怪我を負っているのを知り、手術してコールの足から弾を取り出す。なにやら古臭い形の弾だ。
「妄想よ」 ライリーはコールを諭す。「誘拐は罪よ、自首して」 
警察が迫ってくる。コールは頭が混乱していた。現実か妄想か?
警察が来た。コールはライリーが目を離した隙に忽然と消えた。

ライリーは警察からの連絡で思いがけぬことを知る。コールから摘出した弾丸の分析結果は、1920年以前に発射されたものだということを。
ライリーは思い当たった。研究室の壁に以前から貼ってあった第一次世界大戦の現場写真の一枚。負傷兵の横に裸のコールの姿が写っていた!

ゴインズの父(クリストファー・プラマー)が助手(デヴィッド・モース)に言う。「息子に変な言いがかりをつけてきた女がいる。管理体勢に気を付けてくれたまえ」 「多分、彼女自身がカサンドラ・・・つまり、異常心理なんですよ」 助手が答える。「細菌の管理体勢を厳しくしてくれ」 ゴインズの父は言った。

ゴインズのアジトの前にいるライリーのところへ再びコールが現れる。「自首することにした。君に治療を頼みたい」 ところがライリーは止めた。ライリーはコールが本当に未来から来たことを信じ始めているのだ。
反対にコールは未来と過去を行き来するうちに混乱していた。12モンキーズは妄想かもしれないというコールを場末のモーテルに連れて行く。
「・・・違うわ、説明がつかないけど」 コールを優しく抱きしめる。
突然、ヤクザものらしき男が部屋に入ってきた。「俺の縄張りを荒らす気か!」 いきなりライリーを殴りつける。コールがとっさに男の顔を電話器で張り飛ばす。何回も何回も・・・。そして男の歯を切り取り、自分の歯も抜き取った。

「動物愛護協会の事務局が12モンキーズの秘密本部・・・ことを決行するのは奴らです・・・私はもう限界・・・さようなら・・・メリー・クリスマス・・・」 ライリーが電話をかけた内容をコールが言って聞かせたのでライリーが驚く。コールの記憶の電話番号にライリーが今掛けたばかりの内容はコールが2035年に科学者から聞かされた声だ。「伝言は届いた・・・君だったのか・・・」

コールとライリーは映画館にいた。ヒッチコック週間で「めまい」と「鳥」を上映している。
ロビーでライリーが電話を掛ける。「キー・ウェスト便に予約を・・・」
二人は金髪のかつらで変装している。「あなたを前から知っている気が・・・」 二人はそれとなく抱き合った。

一方、12モンキーズはゴインズの父親を誘拐・監禁し、動物園の動物を街に放った。猿、ライオン、像が街に放たれ町中が大混乱に陥った。
コールとライリーを乗せたタクシーの女運転手が言う。「12モンキーズの事件を知らないの?動物園の動物を放してその一人の父親の化学者を檻に監禁したのよ」 高速道路をキリンの群れが走る。
「動物を放つことで動物愛護の主張をアピールしたのよ」 ライリーが笑い出した。「やったのは我々だ、このことだったのよ!」

空港に着く。警察が張り込んでいる。「もし見つかったら刑務所送りよ」 ライリーがコールに注意を促す。
「やったのは奴らじゃない、12モンキーズは子供の悪ふざけだ」 コールが電話ボックスで電話を掛ける。「とにかく俺は任務を果たした。そっちには戻らない!」 少し離れたボックスから男が見ていた。

「サンフランシスコ、ニューオーリンズ、リオ、ローマ、キンシャサ、カラチ、バンコク、北京・・・一週間で回られるんですか?」 係りの女がパスポートを見て聞いた。「仕事でね」 答えたのはゴインズの父親の助手だった。大きなボストンバッグを持っている。
ライリーは新聞の記事の写真にゴインズの父親の顔を見た。その横に写っているのは助手の顔だ。「あいつだわ」

トイレで付け髭を直して出てきたコールに話しかけてきた男は囚人仲間のホセだ。「これを持て」 コールに銃を渡す。何故こんなところにいるんだろう。「逆探知したんだ」 「逆探知?」 「あの女を殺せというのが指示だ」 

ライリーが走ってきた。「犯人は博士の助手よ!サンフランシスコ便のゲートに向かったわ!」 コールとライリーが走る。
助手はボストンバッグのチェックを通過するところだ。コールが警察に見つかり、振り切って走る。助手が気づきバッグを持って走る。
コールが銃を構えながら走る。警察が追う。ライリーがそれを追う。
警察の銃がコールの背中を撃ち抜いた。ライリーが叫びながらコールに追いすがった。コールの体から血が溢れ出す。泣き叫ぶライリー。すぐ近くでその一部始終を少年が見ている。ライリーの目が少年と合った。

飛行機に乗り込む助手。「嫌ね、暴力と狂気。空港でも銃撃戦。この地球で次に絶滅するのはきっと人類よ」 にこりともせずに話しかけてきたのは隣席の女性だ。この女性はコールをこの時代に送り出した科学者に瓜二つだ。
「その通りです。正しい予言です」 助手が答える。「ジョーンズよ」 女性が手を差し出しながら言った。「救済保険業よ」 

親に伴われて車に乗り込んだ少年は飛び立つ飛行機をじっと見上げる。
映画館主から

テリー・ギリアム監督の一種独特の映像世界。タイム・トラベラーが過去へ行き人類滅亡の真相を探るという奇想天外なストーリーです。

精神病患者役のブラッド・ピットがブッキレた演技で好演。主役のブルース・ウィルスも食うほどの出来栄えです。
父親の化学者に「ローマ帝国の滅亡」(’64年)や「サウンド・オブ・ミュージック」(’65年)の名優クリストファー・プラマーが扮します。
不気味な助手役はデヴィッド・モース。この作品の後、「ロング・キス・グッドナイト」(’96年)や「コンタクト」(’97年)でも重要な役どころで出演しています。

物語は「未来世紀ブラジル」(’85年)同様、ラストがあいまいな終わり方で、理解不能な余韻に支配されながら暗闇で狐につままれたような感じです。
『12モンキーズ』は動物愛護運動のデモンストレーションとして動物園の動物を街に放ったというだけで人類の99%を死に追いやったテロとは無関係でした。
しかし、ゴインズ博士の助手が研究所の細菌を盗み出し世界中に散布するだろうというのがラストの暗示です。その飛行機に2035年の地下社会の女科学者が登場するので訳が分からなくなります。事件の真相を見極めるために自らタイム・トラベラーとなったのか。「救済保険業よ」の台詞にも何か意味がありそうです。SFの約束ごととして“タイム・トラベラーが過去に行って歴史を変えてはならない”というのがあります。その原則に従えば未来からやって来た科学者は細菌の散布を阻止できないのです。

囚人のコールが悩まされる悪夢もいったいどういうことなのか。少年のコールが空港でタイム・トラベラーとしての自分が殺されるのを目撃した。この後少年はどうなるのか。人類が滅亡し、かろうじて生き残った1%の中に入り、地下世界で成人して囚人となりタイム・トラベラーとして空港で射殺される。それを見ている少年は、それもコール?
あり得ないストーリーでも頭がこんがらかってきます。テリー・ギリアムは語っています。「・・・言えるのは何が正気で何が狂気か、何が現実で何が現実でないのか、そうした知覚、認識、理解が人の中でどう機能し作用するのかをつきとめようとしてるってことさ・・・」
ようするに観客の好きなように想像すればいいのでしょう。

コールとライリーが映画館でヒッチコックの「めまい」と「鳥」を見た後、ライリーがロビーで電話をかけて戻ってくる場面は「めまい」のキム・ノバクを連想させる幻のようなノスタルジックなシーンで流れる音楽もそっくりです。テリー・ギリアムのヒッチコックへのオマージュになっています。

SFのスタイルをとっているものの細菌によるテロ行為は、オウム真理教のサリン事件や、2001年9.11の同時多発テロ事件の生々しい現実があるように今日的な題材です。さらにエイズ、エボラ、O−157、鳥インフルエンザなどのウィルス菌が自然界の中で自然発生したのでなく、人為的なテロが産んだものとしてもあながちフィクションとはいえないと思われます。

参考文献:「キネマ旬報 1996年7月号」 キネマ旬報社

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