「80日間世界一周」
80日間世界一周 
      1956・米
80日間世界一周

製作:マイケル・トッド
監督:マイケル・アンダーソン
原作:ジュール・ヴェルヌ
脚本:ジェームズ・ポー
    ジョン・ファロー
    S・J・ベレルマン
撮影:ライオネル・リンドン
音楽:ビクター・ヤング

出演:デビッド・ニーブン
    カンティンフラス
    シャーリー・マクレーン
    シャルル・ボワイエ
    バスター・キートン
    フランク・シナトラ
    マレーネ・ディートリッヒ
    トレバー・ハワード
    ロバート・ニュートン
   ジョージ・ラフト
    ロバート・モーリー
    フェルナンデル
    セドリック・ハードウィック

   
デビッド・ニーブンとシャーリー・マクレーン

トロッコでアメリカ大陸横断

80日間世界一周
物語

1872年、ロンドン。イングランド銀行に強盗が入り5万5千ポンドが盗まれた。実に鮮やかな手口で犯人は逃げ失せた。
社会改良クラブのメンバーたちもカードをしながら銀行強盗の話題だった。
「これだけの犯人だ、もうとっくに世界のどこかに逃げたさ。今じゃ3ヶ月で世界一周できるからな」 この時、フィリアス・フォッグ(デビッド・ニーブン)が言ったのだ。
「私なら80日間で世界一周するね」 「それは無理だ、出来ないほうに5000ポンド賭けてもいい」 メンバーたち(トレバー・ハワード、ロバート・モーリーら)は次々と賭けに乗った。
「それでは受けて立とう、今夜出発する。9月21日土曜日の午後8時45分までに戻る」 フォッグは平然と言い放った。

フォッグは謎の金持ちで独身、几帳面で時間に厳しい男だ。雇ったばかりのフランス人の従僕パスパルトゥ(カンティンフラス)を従え、ロンドンを列車で立とうとしたが、列車が事故のため、やむなく駅員(シャルル・ボワイエ)の紹介で気球を買い取った。

ロンドン市民に見送られて二人を乗せた気球が飛び上がった。一気にフランスを目指す。アルプス山頂の雪で水割りと洒落た。しかし調子に乗りすぎたのか降りたところは何故かスペインだ。
酒場でのフラメンコを楽しむ二人だが、マルセイユまで行く為には快速艇が必要だ。翌日、パスパルトゥの闘牛士ぶりを気に入った豪族から快速艇を貰い受けた。

快速艇でマルセイユへ。ブランディジでモンゴリア号に乗りスエズ運河へ。
フォッグとパスパルトゥをいつからか付けて来たロンドン警視庁のフィックス(ロバート・ニュートン)は、フォッグがイングランド銀行強盗の犯人だと確信していた。
インドのボンベイから開通したばかりの汽車に乗る。河で遊ぶ象の群れ。田園の夕焼け。
夜が明けると汽車は止まっていた。線路が途中までしか引かれていないのだ。「これは詐欺だ!カルカッタで軍隊が待っておるのだ」同乗していた将軍(セドリック・ハードウィック)は怒った。フォッグは1000ポンドで象を買い、将軍も乗せてカルカッタへ向かった。

野営していると何やら辺りが騒がしい。サティ(寡婦殉死)の儀式が行われようとしているのだった。死んだ夫に付き添い妻が生きたまま焼かれるのだ。アウーダ姫(シャーリー・マクレーン)は英国で教育を受けた美人と聞くとフォッグは救助することにした。
今や焼かれる寸前、夫の死体に化けたパスパルトゥが起き上がったから儀式に参列した人々が仰天して逃げ去った。

かくして、船で香港に向かうフォッグとパスパルトゥ、それにアウーダ姫。
香港ではフィックスの策略でパスパルトゥが強い酒を飲まされ失神してしまう。横浜への切符は全てパスパルトゥが持っているのに目覚めた時はその船の中だった。ご主人様を置いてきてしまった・・・。

富士山が見えてきた。着いたところは明治5年の横浜である。無一文のパスパルトゥが鎌倉の大仏を見上げて畏怖の面持ち。まだチョンマゲ頭の男たちが歩く。女好きのパスパルトゥは着物姿の日本の女に見とれる。
一方、別の船で横浜に着いたフォッグとアウーダ姫。はたしてパスパルトゥはどこにいるのか。フォッグは推理を働かせた。案の定、無一文で身の軽いパスパルトゥは見世物小屋で軽業師をして稼いでいたのだ。

船で太平洋を横断する。サンフランシスコへ着いた。酒場で凄みをきかせた男(ジョージ・ラフト)やその情婦(マレーネ・ディートリッヒ)にからまれそうになるフォッグ。ピアノ弾き(フランク・シナトラ)は笑みを浮かべひたすらピアノを弾いていた。

列車で大陸横断へ出発。バッファローの大群。ロッキー山脈の分水嶺を通過。壊れかけた橋は列車が通過した直後崩れ落ちた。
インディアン・スー族の襲撃を受ける列車。捕らえられたパスパルトゥが火あぶりにされる寸前にフォッグが手配した騎兵隊が救助に来た。しかし、その間に列車が行ってしまった。
一計を案じた帆を張ったトロッコで風に乗る。のんびりした羊の群れをやりすごす。何とかニューヨークに着き、そこから買い取った貨物船で一路英国へ。

途中、貨物船の燃料が切れ、椅子や机、マスト、救命ボートまで燃えるものは全て燃やし尽くす。もはやこれまでと思った時、陸が見えてきた。

リバプールへ着いた途端にフォッグはフィックスに逮捕される。留置場に入れられたフォッグは賭けに敗れたことを悟った。その日が80日目だったのである。もう間に合わない。
翌日、フィックスが慇懃に詫びた。「申し訳ないことをしました。実は真犯人が見つかったのです」 フォッグは言った。「君との旅は実に不愉快だった」

ロンドンの自宅に帰ったフォッグは意気消沈していた。これで全財産を失ったのだ。アウーダ姫はフォッグを慰める。「悲しみを分かち合える人が必要と思わない?」 「・・・?」 「私を妻にして」 フォッグの顔が明るくなった。
「パスパルトゥ、すぐに牧師を呼んできてくれ、結婚式だ!」
パスパルトゥが牧師を連れて急ぐ途中、街の新聞売りとすれ違った。
「?!・・・」 新聞の日付が昨日の日付になっている。
新聞を持って飛んで帰ったパスパルトゥ。「大変です。今日は9月21日です!」
「馬鹿な、印刷の間違いだ。私は旅の間中、記録を付けていたのだ。私たちは80日で世界を一周した。今日は81・・・!?」
フォッグの頭がフル回転していた。「私たちは東に回った・・・太陽に向かって・・・!!日付変更線だ!すると今日は80日目!あと10分50秒ある!」

クラブへ急ぐフォッグ。突然、馬車の御者がしゃっくりを始めた。馬が動かない。パスパルトゥが替わりにやろうとするが馬は歩かない。「ヒック・・・この馬はあたしの言うことしか聞きませんです、・・・ヒック・・・」
走るフォッグが道を塞いだ宣教師たちに阻まれる。「どうか、ご寄付を!」フォッグがポケットから紙幣を渡すと、一緒に賛美歌を歌えと言う。「賭けに間に合わないんだ」 「まあ、賭けですって、皆さん、悪い市民の代表がこの方ですよ!」 冷や汗をかいて賛美歌を歌うフォッグ。

社会改良クラブのメンバーたちは勝利を確信していた。「まあ、紳士的に待とうじゃないか。あと14秒ある」
壁の時計が午後8時45分を指したその時、クラブのドアが開いてフォッグが姿を現した。「お約束通り、ただ今戻った」
映画館主から

「15少年漂流記」「海底二万哩」のジュール・ヴェルヌ原作「80日間世界一周」の完全映画化。日付変更線がキーポイントです。

これほど贅沢な映画にはそうそうお目にかかれません。動員したエキストラ数6万9000人、衣裳数7万4000着、動物数34種9000頭、撮影隊が飛んだ飛行距離60万キロメートルなど記録破り。
まだ飛行機の無い時代の80日間世界一周は画期的な着想でありました。現代ならただ回るだけなら誰でも2、3日で、宇宙飛行士なら1時間余りで世界一周できます。映画は3時間弱で、さながら世界旅行を味わうことができます。

主役のフォッグに洒脱な演技をさせたらピッタリの「ナバロンの要塞」のデビッド・ニーブン。従僕のパスパルトゥにコメディアンのカンティンフラス。そしてインドのアウーダ姫に「ハリーの災難」でデビューしたばかりのシャーリー・マクレーン。彼らを追う刑事に「オリヴァ・ツイスト」のロバート・ニュートン。
更に、行く先々でスターをちばめるという贅沢さ。フランク・シナトラなどは台詞もなく、ただピアノを弾いているだけです。

世界12カ国で撮影されたこの作品は、日本にも1955年にロケ隊が滞在し、3000人のエキストラが動員されて横浜、鎌倉などで撮影されました。

気球で空を飛ぶ場面その他で流れるビクター・ヤングの音楽は誰しも耳にしたことのある名曲です。
アカデミー賞は、作品、脚本、撮影、編集、音楽の5部門で受賞しています。

参考文献:「THE MOVIE」 デアゴスティーニ
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