「バラバ」
バラバ 1962・米=伊
バラバ

製作:ディノ・デ・ラウレンティス
監督:リチャード・フライシャー
原作:ペール・ラーゲルクビスト
脚本:クリストファー・フライ
    ルイジ・ルラスチ
撮影:アルド・トンティ
音楽:マリオ・ナシンベーニ

出演:アンソニー・クイン
    シルバーナ・マンガーノ
    アーサー・ケネディ
    ビットリオ・ガスマン
    ジャック・パランス
    アーネスト・ボーグナイン



物語

宮殿から、ピラト総督(アーサー・ケネディ)が大衆に向かって叫ぶ。
「この者は、民を誤らせた扇動と冒とくの罪で死刑に処せられる」そこにイエス・キリストの姿があった。
祭りごとには掟があり、罪人が一人釈放されることになっている。総督が大衆に問うと、「バラバ、バラバ!」の声が上がった。

バラバ(アンソニー・クイン)は、訳がわからぬまま牢獄から解放された。バラバは人殺しで盗賊だった。いずれは死刑になる身だった。久しぶりに家へ帰ると、愛人達が出迎え酒盛りが始まる。
バラバの一番の愛人レイチェル(シルバーナ・マンガーノ)は真っ青になって帰って来た。通りを十字架を担がされ歩いて行く男の姿が見える。バラバが釈放された時会った男だ。
「レイチェルはナザレから来た王に夢中なのよ」そんな声がバラバに聞こえた。バラバがレイチェルに真意を迫っていると、昼間なのにあたりが暗くなる。
太陽が隠れてしまったのだ。

バラバは処刑が行われたゴルゴダの丘へ行った。十字架に磔にされたイエスの姿があった。イエスの遺体は墓に収められ、丸い大きな石で閉ざされた。
「3日目に復活するとあの方は仰った」レイチェルが言う。
三日目にバラバが墓へ行くと、丸い石の扉が開かれ、中には何もない。
あの男は復活したのか。バラバには信じられない。

レイチェルは人々にイエスの教えを話して回る。だが、兵に捕らえられ、広場で石投げの刑に処せられた。
レイチェルの死を知り、バラバは荒れた。人殺しと盗みを繰り返した。そして、再び捕らえられた。
「一度釈放された罪人は処刑できないのだ。かえって辛いぞ」総督がバラバに言った。
バラバは、シシリーの硫黄鉱山へ流された。

地下の硫黄鉱山での労働は苛酷を極めた。足を鎖でつながれた相棒は次々と死んでいき、20年が過ぎた。
新しい相棒のサハック(ビットリオ・ガスマン)は、キリストの信者だった。ことあるごとにバラバにイエスの話をする。バラバはサハックがうっとうしいが、何か感ずるものがあった。

しかし、そのサハックも厳しい労働に倒れた。二人をつなぐ鎖が切られた。働けなくなった者は死が待っている。
その時、鉱山が地響きとともに崩落した。阿鼻叫喚の中、バラバはサハックを担いで地の底から這い上がった。

二人は畑仕事へと回された。そこでの労働は、鉱山に比べれば別天地だった。「あんたは神の存在を信じながら、拒んでいるんだ」サハックがバラバに言う。

やがて、バラバは、地獄から這い上がった不死身の男として、ローマへ連れていかれる。サハックも一緒だ。
そこで剣闘士としての訓練を受ける。冷血な剣闘士隊長トルバド(ジャック・パランス)の容赦のない仕打ちがバラバを打ちのめす。

闘技場での試合が始まった。何組かの剣闘士がそれぞれの武器を持ち、相手が死ぬまで戦うのだ。総督をはじめ貴族たちは狂喜して試合を見物している。
サハックは、相手を倒したがとどめをささずに槍を投げ捨てた。試合後、サハックはバラバの制止を振り切り、周囲に神の世を話して聞かせた。
サハックは反逆者として処刑された。処刑したのは剣闘士隊長のトルバドだった。バラバはトルバドに憎悪を抱く。

闘技場にバラバが立つ。武器は槍一本のみだ。トルバドが戦車に乗り手に網を持っている。もう何人もその網に捕まり場内を引きずり回されて死んでいったのだ。
トルバドの戦車が疾走してくる。バラバは槍を投げるふりをして、闘技場の壁に身を寄せた。戦車が突進してくるが、壁が邪魔をする。
トルバドにあせりが出てきた。やがてバラバが場内の中央に出てくるや戦車を繰る。バラバに向かって走る戦車からトルバドが網を投げた。バラバが槍で網を弾くと網はトルバドの戦車の車輪にからまった。衝撃でトルバドが投げ出され、戦車に引きずり回される。
バラバは、躊躇いながらもトルバドの息の根を止めた。闘技場は喝采に沸く。総督は、バラバの健闘にあたり、自由の身を与えたのだった。

バラバはサハックの遺体を抱きかかえ、キリスト者が密かに集う地下の教会へ行く。そこには剣闘士の食事係りの男(アーネスト・ボーグナイン)も来ていた。彼はサハックの死に関してバラバを責める。

夜、ローマの街が燃えている。バラバが行くと、キリスト教徒の放火だとの声が聞こえてきた。バラバは燃え盛る街の中へ入って行く。
バラバの心に動揺があった。「古い世界が燃えて神の王国が来る。主よ、今度こそご期待に応えます」
バラバは、自ら火をつけて回るのだった。駆けつけた兵に捕らえられるバラバ。

キリスト信者たちが多く捕らえられている。そこへバラバが連行されて来た。
「放火を認めたぞ、証拠が明らかになった」兵が去ると、信者の代表が言う。
「君は考え違いをしている。火は皇帝が放ったのだ。こんなことで神の世はやって来ない。これから長い間、殉教の時代が続くだろう。だが、王国は我々一人一人の中にあるのだ」

そして、大量の十字架が立ち並ぶ。その一つにバラバが打ち付けられていた。今や、バラバの心は神に帰依していた。死に際してバラバの心に平安が訪れた。
映画館主から

監督は「ヴァイキング」「海底二万哩」「ミクロの決死圏」の名手、リチャード・フライシャー。
スウェーデンの文豪、ペール・ラーゲルクビストの1951年度のノーベル文学賞小説を大プロデューサー、ディノ・デ・ラウレンティスが製作したスペクタクル大作です。

神を信じなかったバラバが、硫黄鉱山の使役や、剣闘士としての苦難の生活を通して次第に神に帰依してゆくドラマが、豊富なスペクタクル場面とともに描かれています。

キリストの処刑の時、替わりに放免された盗賊バラバにアンソニー・クインが扮し、粗野で野性味溢れた彼のキャラクターはピッタリでした。
他に、シルバーナ・マンガーノ、ジャック・パランス、ビットリオ・ガスマン、アーネスト・ボーグナインなどの豪華配役。

剣闘士隊長のジャック・パランスとの息詰まる対決や、硫黄鉱山の大崩落、ローマの炎上など、大迫力の画面は、「ベン・ハー」(’59年)には及ばぬとも相当なものです。

私が映画館で見たのは高校生の時。以来、この史劇が案外と軽んじられているのは残念です。

参考文献:「シネマスペクタクル」 大洋図書
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