「未来世紀ブラジル」
未来世紀ブラジル
   1985・英=米
           


監督:脚本:
    テリー・ギリアム
脚本:トム・ストッパード
    チャールズ・マッケオン
撮影:ロジャー・プラット
音楽:マイケル・ケイメン

出演:ジョナサン・プライス
    ロバート・デ・ニーロ
    イアン・ホルム
    キム・グレイスト
    キャサリン・ヘルモンド
    ボブ・ホスキンズ


情報省の役人達


サムライ騎士は槍をかざす


拷問椅子のサム

物語

ここはテロが横行する、ある国の情報省。コンピュータで管理された役人達が多数働いている。しかし、彼等は上司の目の届かないところでモニターの西部劇を楽しんでいる。
サムもそんな一人だ。管理された社会に嫌気がさした彼は夢の世界で超人になり、大空を飛び回る。そして彼の名を呼ぶ美女を捜し求める。

事件はある役人の不始末から始まった。不穏分子のリストのタイプを打っていた彼は、うるさく飛び回る虫を天井に叩きつけた。その虫が知らぬ間にタイプライターの中に落ち、タイプが誤動作した。「・・・タトル・・・」が「・・・バトル・・・」になってしまった。

バトルはアパートで家族とくつろいでいた。突然、天井に穴が開き、警官隊が突入してきた。泣き叫ぶ家族を残し、バトルは逮捕された。その一部始終をジルは見ていた。

サムの上司、カーツマンは、「タトル」と「バトル」の間違いに気がついた。カーツマンはサムに誤認逮捕のもみ消しを依頼する。
バトルのアパートへ出向いたサムは、天井の穴から覗いている女性(ジル)を見た。何とその女性はサムが夢に見る美女と瓜二つだ。サムはジルを追ったが見失う。

サムは、アパートのエアコンが故障したので当局に電話した。やってきたのは奇妙ないでたちの男。ダクトの修理工タトルと名乗った。タトル??テロリストのタトルではないか。タトルは手際良くダクトを直すと、ロープを伝わり闇の中に消えた。

ジルは女テロリストとして、デパートの爆破を繰り返し、追われる身だった。サムは理想の女性としてジルをかばい、共に追われることになる。情報剥奪局の手から逃げ切れず二人は逮捕された。

情報剥奪局の巨大なドーム型の拷問室。サムは拷問椅子に座っていた。仮面をつけた白衣の男が近づいて器具を取り上げた。その瞬間、仮面の額に穴が開き、鮮血が噴出した。
ドームの天井からロープが垂れ下がり数人の男が降りてきた。タトルだ!サムを救出に来たのだ。突然、サムは超人に変身した。ボロを纏った怪人の群れ、巨大なサムライ騎士が槍を振りかざす。超人のサムは剣を交えた。サムライ騎士の胸に剣を突き刺すと炎が噴出し、騎士は倒れた。サムはジルを助け、理想の谷間にたどり着き、固く抱き合った。

しかし、現実のサムは拷問椅子に座っており、もはや、体も動かない。そして、「ブラジル」を口ずさむのだった。
映画館主から

テリー・ギリアム監督のブラックなイマジネーションに満ち溢れた壮大なSF。
情報省の巨大な空間では、コンピュータ(何故かアンティーク)が役人達を動かす。建物にはダクトやチューブが剥き出しになり、書類が飛び交う。

デパートの爆破事件、ボロトラックでの逃走、拷問と洗脳、又、サムの夢に出てくる、ボロを纏った怪人の群れやサムライ騎士など、何とも奇妙な映像の連続であり、ストーリーも説明が困難な無国籍映画です。

ギリアムのテーマは体制に管理されて、押しつぶされる人間、そして、夢に逃避することでしか生き甲斐を見出せない人間を描くことでした。しかし、ユニバーサルに編集権を握られていたため、ことごとく改ざんを余儀なくされ、ラストシーンは、サムが本当にタトルに救われ、ジルと逃げ延び、ハッピーエンドとなるバージョンも作られました。
この辺の経緯はジャック・マシューズ著「バトル・オブ・ブラジル」に詳しく載っています。

スタンリー・キューブリックの「時計じかけのオレンジ」を連想させます。情報省で働くおびただしい役人達をローアングルで移動撮影したシーンは、キューブリックの「突撃」に敬意を表したそうで、サムライ騎士の登場は黒澤に対するオマージュだそうです。

ギリアムは「バンデットQ」’81と本作の後、ほら吹き男爵を題材に「バロン」’89を、ブルース・ウィルスとブラッド・ピットを共演させた「12モンキーズ」’95を発表しています。いずれもギリアムのイマジネーションが発揮された傑作でした。

 参考文献:ジャック・マシューズ著「バトル・オブ・ブラジル」ダゲレオ出版

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