「ブラック・サンデー」
ブラック・サンデー 
       1977・米
「ブラック・サンデー」のロバート・ショー

製作:脚本:
    ラリー・G・スパングラー
監督:ジョン・フランケンハイマー
原作:トマス・ハリス
脚本:マーチン・ゴールドマン
撮影:ジョン・A・アロンゾ
音楽:ジョン・ウィリアムズ

出演:ロバート・ショー
    マルト・ケラー
    ブルース・ダーン
    フリッツ・ウィバー
    スティーブン・キーツ
    ベキム・フェーミュ
    マイケル・V・ガッヅォ
    ウィリアム・ダニエルズ


マルト・ケラーはシャワーを浴びていた

ブルース・ダーン(左)とマルト・ケラー

マルト・ケラーが銃撃する

飛行船のブルース・ダーンは撃たれる

群集に突っ込む飛行船

ロバート・ショーが飛行船に乗り移る
物語

アラブ・ゲリラ組織(黒い9月)のアジトで、女闘志家ダーリア(マルト・ケラー)は、同士のファジル(ベキム・フェーミュ)たちと16ミリフィルムを見ている。
映っているのは、ベトナム戦争で捕虜になった時のアメリカ人少佐マイケル・ランダー(ブルース・ダーン)の映像だ。

ダーリアはランダーから、あるテロ計画を持ちかけられ、仲間と協議していたのだ。
ファジル「そのアメリカ人の計画を皆に話してやれ」
ダーリア「22万のライフル・ダーツよ」
それは、大量殺戮テロの恐るべき計画だった。

その頃、アジトに向かって暗い水面を滑っていく2隻の小型ボート。
デビッド・カバコフ(ロバート・ショー)が率いる、イスラエル秘密情報局の特殊部隊だった。
彼らは消音銃で見張りを倒すと、アジトのあちこちに時限爆弾を仕掛けた。
アジトの中へ潜入したカバコフは、ある浴室のドアを蹴破り、中でシャワーを浴びていたダーリアを発見したが、一瞬ためらいそのまま立ち去る。
アジトは銃撃戦の末、時限爆弾で壊滅した。ダーリアとファジルは命からがら脱出した。

『ロサンゼルス・コロシアム』で大観衆の熱狂の中、フットボールの試合が開催されている。その上空に『GOOD YEAR』と書かれた巨大な飛行船が飛び、地上に多きな影を落としていた。操縦しているのはランダーだ。
飛行船はフットボール試合のカメラ中継をしているのだ。

ロングビーチ港で、日本船「スマ丸」からの積荷をボートに降ろすダーリアとランダー。600キロのプラスチック爆弾である。
沿岸警備隊に見咎められ猛スピードで逃げる。
ランダー「あの日本人船長は計画についてどれ位知ってるんだ」
ダーリア「知ってても、彼はしゃべらないわ」

カバコフの質問責めにあっていた「スマ丸」の船長、小川は掛かってきた電話に出た瞬間、電話機とともに吹き飛んだ。
負傷したカバコフの病室に友人のモシェフスキー(スティーブン・キーツ)が見舞っていた。そのモシェフスキーも看護婦に化けて潜入したダーリアにエレベーターの中で殺される。
カバコフは悔やむ。「あの時、あの女を殺しておくべきだった・・・」

モハベ砂漠にポツンと立つ納屋。小型セスナで降り立ったのはランダーとダーリアだ。ランダーのガレージで作った爆弾の性能を試す為に来たのだが、納屋には監視人がいた。
ランダーは、この土地に大金を注ぎ込もうという会社があるので視察に来たのだと巧みに騙し、納屋の中を撮影させて欲しいと持ち込んだ。
直方体の箱に納められた爆弾を、「新製品でね、パノラマ式なんですよ」などと言いながら三脚の上に取り付けた。そのまま待つように言い、外へ出て飛行機の脇に身を伏せる二人。
「準備OKだよ、いつ撮るのかね」 ポーズよろしく監視人が言った瞬間、凄まじい爆風が吹きぬけた。監視人は蜂の巣になり、納屋の壁に無数の穴が開いていた。「完全に均等だ」ランダーは鉄矢(ダーツ)の威力に満足した。「22万のダーツは8万人を殺すぞ」

マイアミの巨大な「オレンジ・ボール」の前景。ここがダーリアたちの攻撃目標だ。1月8日にスーパー・ボール・ゲームが行われる時、ここには8万人の群集が集まる。
カバコフとFBIのサム・コーリー(フリッツ・ウィバー)は、スタジアムの保安部長に保安体制を問いただした。万全を期すと言い張る保安部長にカバコフは言った。
「あの組織に対して万全を期すことは不可能です。奴等の仕事は完璧です。
万全を期す方法はただ一つ、ゲームを取りやめることだ」
しかし、まったく取り合わない。しかも大のフットボールファンの大統領がヘリでやって来るというのだ。
だが、上空を飛ぶ飛行機はテレビ中継用の飛行船以外は定期便を含めすべての飛行を禁止してあるという。

ランダーが意気消沈していた。スーパーボールのテレビ中継をする飛行船のパイロットの役目が別のパイロット、ファーリーに奪われてしまったのだ。
それを聞いたダーリアは強気だった。
「絶対やるのよ」

パイロット、ファーリーの部屋へメイドに化けたダーリアが朝食を運んできた。ファーリーに向け消音銃を放つ。ドアを閉め、2発、3発・・・。

試合当日のマイアミの「オレンジボール」は、試合開始前の興奮でざわめいていた。大統領がヘリでやって来た。
スタジアムの中を警戒に回る、カバコフとコーリー。
上空にテレビ中継の飛行船が姿を現した。パイロットはランダーだった。テレビ局のスタッフが何人も乗っている。

その頃、ダーリアは爆弾を積んだ吊り篭を飛行船の基地に運ぶため車を飛ばしていた。
飛行船のランダーは、レバー操作でエンジンを加熱させた。煙を出し始めたエンジン。ランダーは故障を理由に飛行船を基地に引き返す。

カバコフに連絡が入ったのはその時だった。「操縦するはずだったファーリーがホテルの部屋で殺されていた!」
走るカバコフ。

基地へ戻った飛行船に、ダーリアが運んできた爆弾の吊り篭を吊り下げる。ダーリアも飛行船に乗り込む。不審に思ったテレビ関係者をダーリアが撃ちまくる。飛行船を軽くするため、テレビ機材を外に放り出す。
駆けつけたパトカーに銃を浴びせる。
ようやく浮かび始めた飛行船。そこへカバコフとカーリーの車が来る。カバコフたちはヘリに乗り飛行船を追う。

22万本のダーツが飛行船の下に吊り下がっている。目指すは「オレンジボール」の大群衆。
警察のヘリがダーリアの銃撃を浴び爆発した。カバコフのヘリが飛行船に近づく。ダーリアにカーリーが撃たれた。
マシンガンを構えたカバコフとダーリアの目と目が合った。「あの時の男だわ・・・」ニヤリと笑みを浮かべたカバコフのマシンガンが火を噴く。ダーリアが倒れ、続いてランダーも倒された。
「二人とも殺したが飛行船はスタジアムに向かっている!」

飛行船の中でランダーはまだ生きていた。起き上がろうともがく。
カバコフはヘリの鋼索を伝わり下へ降りていく。先端の鉤フックを飛行船に引っ掛けようというのだ。
しかし、飛行船はとうとうスタジアムのスタンドにのしかかるように現れた。照明塔をなぎ倒し、観衆は総立ちになる。シークレット・サービスが大統領の上にかぶさる。パニックの阿鼻叫喚と化すスーパーボールの大群衆。

ランダーはライターで爆薬の導火線に火を点けた。
カバコフはやっとの思いで飛行船の上に乗り、ヘリの鉤フックを飛行船の鉄輪に引っ掛けた。
導火線が燃えていく。ヘリが上昇し、飛行船をスタジアムから遠ざけていく。
飛行船が海の上まで来た時、カバコフが鉤フックを外した。カバコフを吊り下げたままヘリが安全な場所まで離れた時、飛行船が轟音とともに大爆発を起こした。海面一面を泡立たせる22万発のダーツ。これがスタジアムの上空であったら大惨事になるところであった。
カバコフがぶら下がったヘリは青い空の彼方に吸い込まれていった。
映画館主から

常に男性的な映画作りで知られるジョン・フランケンハイマー監督作品ですが、映画の過激的な内容から政治問題に巻き込まれるのを避けるため、日本では公開中止になったいわくつきの作品です。ただし、ビデオ化されており、私もビデオで見ました。

アラブ・ゲリラの組織「黒い9月」というのは、1972年のミュンヘン五輪の時にテロ事件を引き起こしたテロ組織です。その組織名をそのまま登場させているのですから、やはり、少しやばいのです。
実際、テロリストからの脅迫電話があったという話もあり、公開中止もやむを得なかったのでしょう。

映画の「黒い9月」は、用意周到なテロ組織であり、爆弾製造の手順、殺戮の方法、、生命を賭しての行動にリアリティがあります。
中でも女性闘志のマルト・ケラーが熱演で、前年の「マラソンマン」(ジョン・シュレシンジャー監督、ダスティン・ホフマン、ローレンス・オリビエ主演)とともに彼女の代表作になりました。

ヒッチコックの遺作となった「ファミリー・プロット」(’76年)の主役を射止めたブルース・ダーンにとっても本作が当たり役で、偏執的なテロリストを憎憎しく演じています。
「ジョーズ」(’75年)のタフガイ、ロバート・ショーは本作の翌年、心臓麻痺に襲われ、まさかの急死でした。

本作は、全編に緊張感が漲り、特にラストのスーパーボールのスタジアムに爆弾を積んだ飛行船が向かう場面は、空中戦あり、爆弾の爆発がいつ起こるかというスリルあり、カットバックの編集も功を奏して凄まじいサスペンスを盛り上げています。
フランケンハイマーの「大列車作戦」(’64年)、「影なき狙撃者」(’62年)に勝るとも劣らずの出来栄えでありました。

しかるに、’01年、9・11のニューヨーク世界貿易センタービル爆破の自爆テロはとても映画的な想像の及ぶところではなく、限りなく悪魔の所業として断罪されねばなりません。

  参考文献:「キネマ旬報」1977年7月号
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