「カサンドラ・クロス」クライマックスシーン
カサンドラ・クロス
        1976・米
カサンドラ・クロス

製作:カルロ・ポンティ
監督:脚本:
    ジョージ・P・コスマトス
脚本:トム・マンキーウィッツ
    ロバート・カッツ
撮影:エンニオ・グァルニエリ
音楽:ジェリー・ゴールドスミス

出演:バート・ランカスター
    リチャード・ハリス
    ソフィア・ローレン
    エバ・ガードナー
    イングリット・チューリン
    ジョン・フィリップ・ロー
    アリダ・バリ
    レイモンド・ラブロック
    リー・ストラスバーグ
    O・J・シンプソン
    マーチン・シーン
    アン・ターケル


左からバート・ランカスター、ジョン・フィリップ・ロー、イングリット・チューリン

ソフィア・ローレンとO・J・シンプソン

リチャード・ハリス

車内の阿鼻叫喚

崩落するカサンドラ・クロス鉄橋

カサンドラ・クロス
物語

ジュネーブの国際保険機構の建物に深夜、救急車が運び込まれた。担架に乗せられた病人とそれを運ぶ二人の男。
彼ら3人はスェーデンの過激派ゲリラだった。彼らは研究所を爆破しようとしていたのだがガードマンと撃ち合いになった。
激しい銃撃戦。ゲリラの一人は射殺され、二人は別室に逃げ込んだがそこは様々な細菌類が研究開発されている危険な部屋だった。

一人は撃たれて倒れた。その時容器が割れて中の液体が二人にかかる。無傷の男は液体を浴びたが窓を破って逃走した。
傷を負ったゲリラは病院に収容されたが高熱を発し呼吸困難に陥っていた。
アメリカ陸軍病院の女医エレナ(イングリット・チューリン)はゲリラの症状をみてこれは伝染病の菌ではないかと疑った。
緊急事態発生の報を受け駆けつけたのはアメリカ陸軍情報部のマッケンジー大佐(バート・ランカスター)だ。彼と共にスタック少佐(ジョン・フィリップ・ロー)も派遣されてきた。マッケンジーはエレナにその菌が呼吸器系の伝染病菌であることを認め、逃げたゲリラの行方を捜索する指示を出すと共にエレナにも協力を要請した。
「このままではヨーロッパ中に伝染してしまうのだ」 そのゲリラはまもなく死んだ。

マッケンジーは捕らえたゲリラの所持品からストックホルムからジュネーブの往復切符を見つけた。
逃走したゲリラは大陸縦断列車に乗り込んでいたが、すでに発熱して異常な汗をかいている。
マッケンジーが乗客のリストを調べると、著名な医者ジョナサン・チェンバレン(リチャード・ハリス)の名があった。マッケンジーは無線電話でチェンバレンを呼び出すと事件の概要を説明し車内に潜んでいるゲリラを探すよう要請した。
マッケンジーは同時に1000人が乗り込んでいる列車を検疫収容させるためポイントを切り替えポーランドのヤノフへ向かせたのだった。そこには30年近くも使われていないカサンドラ・クロスの鉄橋がある。

列車にはチェンバレンの元妻で作家のジェニファー(ソフィア・ローレン)も乗り合わせていた。他に武器製造業者の妻ニコール(エバ・ガードナー)とその若き愛人ナバロ(マーチン・シーン)、実はナバロは麻薬の密輸で指名手配中なのだ。そのナバロを追ってきたハリー(O・J・シンプソン)は神父の格好をしているが実は麻薬捜査官だ。
トム(レイモンド・ラブロック)とスーザン(アン・ターケル)は新婚旅行客。ヘルマン・カプラン( リー・ストラスバーグ)は初老のセールスマンだが過去にヤノフでナチスにより妻子を殺された暗い経験がある。
様々な人々を乗せて列車は走っていった。その間、ゲリラは列車をさ迷いすれ違う人に接触していった。

マッケンジーは一旦ニュールンベルグで列車を停め警備隊と医療班を乗り込ませた。列車の窓に金網を張り巡らせ溶接して密閉し車内に酸素を送る工作をした。中の人間は一切外に出るのを禁じた。
人々は何が起こっているのか皆目わからない。ただ、数人が風邪に似た症状を出し発汗しているのだった。

列車は再び発車したが事態を知らされた乗客たちは騒然とする。異常を訴える客が相次いで出てきた。警備兵は銃を片手に騒ぎ出す客を鎮圧していく。
そんな中チェンバレンは感染者たちをひとつの客車に集め治療に当たる。作家のジェニファーも献身的に元夫を助ける。
セールスマンのカプランは列車がポーランドのヤノフに向かうと聞き異常に怯えた。妻子を殺された忌まわしい過去が甦る。彼はカサンドラ・クロスのことを知っていた。カサンドラ・クロスの鉄橋は30年以上も使われておらず付近の住民はすでに立ち退いているのだ。

チェンバレンはそれを知りマッケンジー大佐に鉄橋の前で列車を停めるよう交渉した。だがマッケンジーの答えは「心配ない」というものだった。マッケンジーの手元にはカサンドラ・クロスに関する資料があったが彼はそれを黙殺した。目の前のモニターに列車の進行を示すランプが移動している。

列車ではナバロが造反し警備兵と争った。その時無線装置が破壊された。
エレナはマッケンジーに不安を感じながら様子を見ていたが列車から回収した犬が快方に向かっているのに気が付く。
「酸素です!高濃度の酸素が菌を弱らせているのです」 犬は元気になり食事もしている。「列車を停めるべきです」 
やむなく無線機で列車に連絡しようとしたが無線装置は通じない。

事実、列車内の患者も快方に向かっていた。列車内にも酸素が供給されている。
「列車を停めろ!」 チェンバレンは警備兵を説得したが、「そういう命令は受けていない」の一点張りで話にならない。列車はカサンドラ・クロスに迫っていく。
ナバロは登山家の経験を生かして列車の窓から出て淵伝いに移動していった。機関車にたどり着き列車を停める考えだ。しかし、途中窓からナバロは警備兵に撃たれて落下してしまう。

チェンバレンは決意した。列車を切り離すしかない。一等車と二等車の間の連結を外すのだ。「でも一等車の人たちが落ちてしまうわ」 ジェニファーはチェンバレンに言った。「負担が軽くなる分持つかもしれない」 とチェンバレンは言う。
銃撃戦の後、チェンバレンは決行した。連結を外す。列車は分断された。チェンバレンは二等車へ飛び移ろうとしたが転落してしまった。。
一等車はカサンドラ・クロスの鉄橋に差し掛かった。鉄橋は不気味な軋みをあげ車両の重みを受け止めたかに見えた。しかしカサンドラ・クロスは大音響と共に崩落していった。

阿鼻叫喚の車内。一等車の乗客たちは次々と鉄橋と共に谷底に落ちていった。二等車はかろうじて鉄橋の手前で止まった。チェンバレンは線路まで這い上がってきた。列車内から降りてくる乗客にジェニファーを見つけた。二人はひしと抱き合った。

国際保険機構でモニターを見ていたマッケンジー大佐とエレナ医師、それにスタック少佐は固唾を呑んだ。カサンドラ・クロスで列車を示すランプが消えたのだ。
「全員死亡しました」 マッケンジーは電話で報告した。その表情は暗い。マッケンジーとて自分の意思でこのような非情な決定をしたわけではないのだ。マッケンジーとエレナはまもなく帰途に着いた。

スタック少佐は電話をかける。
「二人とも帰りました・・・尾行はつけてあります」 
映画館主から

ギリシャ生まれのジョルジュ・パン・コスマトスが32歳で監督したサスペンス・アクション映画の傑作。まさに息もつかせぬスリルとサスペンスの連続。アウシュビッツへの死の囚人列車。

伝染病の細菌を浴びたテロリストが大陸縦断列車に乗り込む。極秘の細菌研究の発覚を恐れたアメリカ陸軍情報部は1000人の乗客もろとも列車を老朽化したカサンドラ鉄橋に誘導し落としてしまうという凄まじいお話です。

カサンドラ・クロスの鉄橋が崩落するシーンはいかにもミニチュアな感じが否めませんが、今見ても迫力は満点。CGが発達していない頃ですからやむを得ません。
ラストはカサンドラ・クロスの崩落と共に列車もろとも乗客全員の死亡をバート・ランカスター扮する大佐がどこかに報告の電話をするのです。それはどこか?ホワイトハウスかCIAかそれとも・・・。
全員の死亡を確認したわけでもないのに全員死亡と決めてかかっていいのかなと思ってしまいます。事実、物語では二等車以降の列車はチェンバレンの働きで落下を免れ助かったのです。物語はまだまだ続きがありそうです。チェンバレンをはじめ生き残った人々がマッケンジーの処置に対し壮絶な戦いを挑むのに違いありません。
最後のスタック少佐がする電話の報告が余韻を残します。

アメリカ陸軍情報部の大佐にバート・ランカスター。乗客救出に奔走する医師にリチャード・ハリス。その前妻の作家にソフィア・ローレン。麻薬密輸犯にマーチン・シーン。その愛人で武器製造業者の妻にエバ・ガードナー。神父に変装した麻薬捜査官にO・J・シンプソンと、豪華な配役陣です。

更にリー・ストラスバーグ、イングリット・チューリン、アリダ・バリ、レイモンド・ラブロックなどの国際スターが脇を固めています。

ジョルジュ・パン・コスマトスはその後、「オフサイド7」(’79年)、「ランボー/怒りの脱出」(’85年)、「コブラ」(’86年)などのアクション映画で腕を振るっていますが「カサンドラ・クロス」が彼の代表作といえるでしょう。

オウム真理教のサリン事件が起きてから日本でもテロリズムの恐怖は現実のものとなりました。さらに2001年の9・11同時多発テロ事件は世界中を震撼させ、アメリカはテロ退治の名の下、イラクに対しての戦争を初め現在に至ります。

テロや暴力に対して暴力で立ち向かうというのは果たして正しい選択だったのか。人類の知恵や見識はその程度しかないのか。
結局泥沼化してしまったアメリカの選択は私は間違っていたと思えるのです。

参考文献:公開時パンフレット

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