「街の灯」ボクシングシーン
街の灯 1931・米
街の灯

製作:監督:脚本:音楽:
    チャールズ・チャップリン
撮影:ローランド・トセロー
編曲:アーサー・ジョンストン

出演:チャールズ・チャップリン
    バージニア・チェリル
    フローレンス・リー
    ハリー・マイヤーズ
    アラン・ガーシア


街の花売り娘(バージニア・チェリル)

大金持ちの紳士(ハリー・マイヤーズ)左

執事に追い出されそうになるチャーリー

破天荒なボクシング試合

娘の目は治っていた

街の灯
物語

ある銅像の除幕式が行われた。幕が上げられると、銅像に抱かれるように一人の浮浪者が寝ていた。浮浪者チャーリー(チャールズ・チャップリン)だ。チャーリーはたちまち追い立てられた。

 チャーリーは街のショーウインドウの中の女裸像に見とれている。近づいたり遠ざかったりして見ているが、チャーリーの足元では道路工事の床が上がったり下がったりしていて、チャーリーはタイミング良く落ちそうで落ちない。だがそのうちに!!

道が車で渋滞している。チャーリーが横断して停車中の高級車のドアを開けて反対側に出るとそこにいたのは、美しい花売り娘(バージニア・チェリル)だった。
「花はいかが?」 娘が呼びかける。チャーリーはなけなしのコインを出して花一輪を買った。
「おつりをどうぞ」 娘は盲目だった。その時、停車中の車の持ち主が車に乗りスタートさせた。「あれ!」 娘は慌てた。花を買ってくれた人が車で行ってしまったと思ったのだ。チャーリーはそっとその場を立ち去る。

夜、橋の下。いつものように寝ようとすると、立派な身なりの紳士(ハリー・マイヤーズ)が階段を降りてきて、ロープを石に結び、片方を自分の首に巻いた。何やら自殺するつもりらしい。
チャーリーが駆け寄った。「明日という日がないじゃなし、勇気を出せ!人生を戦うんだ!」 
チャーリーは紳士ともみ合う。反対にチャーリーが川に落ちる。それを助けようとした紳士も落ちる。やがて二人とも川から這い上がる。
「立ち直ったよ、君は永遠の友だ!」 紳士はチャーリーを抱きしめた。

紳士はチャーリーを自宅に連れて帰った。執事(アラン・ガーシア)もいる大金持ちだった。妻は家を出てしまっているらしい。それが自殺の動機だったのか。
紳士は酒をチャーリーに勧めた。紳士は酔っているのでボトルから注ぐ酒はチャーリーのつりズボンの中へ。何本も注ぐ。
突然、紳士が机の引き出しからピストルを取り出した。自分の頭に向ける。止めるチャーリー、すったもんだでバーン!。弾は床に当たった。

紳士はチャーリーと街へ繰り出した。レストランバーで紳士は頻りと酒を飲む。チャーリーはスパゲティを食べるが、いつの間にかスパゲティにくっ付いた天井からぶら下がった紙テープを食べている。

朝帰り。チャーリーが紳士の車を運転して紳士宅へ。
「いい車だね」 とチャーリー。「じゃ、あげよう」 紳士は変に気前がいい。
紳士が家に入った時、あの花売り娘が花篭を抱いて通りかかった。
チャーリーは金持ちから金をもらい追い駆けた。娘から花かごごと全部買う。そして、娘を車で送るのだった。
紳士は一夜明けて酔いが覚めると、別人のようにチャーリーのことなど忘れている。そんな紳士がヨーロッパへ外遊に出た。

花売り娘はアパートで祖母との二人暮らし。家賃は滞納し、間もなく大家から追いたてをされる身の上だ。
チャーリーは娘のアパートを時々訪れた。その日は新聞の記事を持っていた。
「ウィーンの医師、失明を治す。貧困者には手術無料」 チャーリーは娘に読んで聞かせる。
「すてき!直ったら貴方が見られるのね!」 娘の表情が輝く。
「ご心配なく、家賃のことも手術のことも、ぼくにまかせなさい」 チャーリーは胸をたたいた。

あの娘を何とかしなければ・・・チャーリーは土木作業員として働き始めた。だが、昼休みの時間に娘のアパートを訪れたチャーリーは午後の作業開始時刻に遅刻。即刻ボスから首にされた。
その様子を見ていた男がチャーリーに近づいた。
「手っ取り早い金が欲しいか?」 それはボクシングの試合に出ないかというものだった。

ボクシング会場で試合の準備をするチャーリー。誘った男と試合をし、勝負が決まらず引き分けになれば賞金の50ドルが山分けという手筈だったが、男はやばい身の上らしく、警察がやってきて逃げてしまった。
変わりにチャーリーの相手をする男がやって来た。チャーリーはその男に愛想を振りまく。無愛想な男だ。
「・・・適当にやって山分けにしよう」 チャーリーは持ちかけた。
「勝者が50ドル全額だ!」 憮然と男が言った。取り付く島もない。
前の試合で勝って帰ってきた男にいちゃもんをつけられたその男は一撃で殴り倒した。それを見たチャーリーは気絶寸前になる。

試合開始。チャーリーは審判の後ろに回り、隠れ回る。隙を見て相手にパンチ。審判を巻き込んで乱闘になるが結果、チャーリーの負け。
・・・何とか金を作らねば・・・チャーリーはなおも街をさ迷う。

そうこうする内に紳士がヨーロッパから帰ってくる。酔った紳士は出迎えのチャーリーに抱きつきキスを連発する。
二人は紳士宅に直行するが、その時紳士宅には二人の泥棒が忍び込んでいた。
紳士とチャーリーが邸宅に着くと泥棒はカーテンの陰に隠れる。
「彼女のことは心配するな、ぼくに任せておけ」 紳士はチャーリーに言った。「1000ドルで足りるか?」 紳士が財布から紙幣を取り出すのを泥棒が見ている。
チャーリーは喜んでポケットへ入れる。泥棒が現れた。紳士を殴り逃げた。慌てたチャーリーは警察へ電話し泥棒を追う。執事が来た。主人が倒れている。
外へ出たチャーリーは駆けつけた警官に捕まった。執事が叫ぶ。「金がない、そいつだ!」 チャーリーのポケットから紙幣が出てくる。
紳士が目を覚ます。「やった金だと言ってくれ!」 チャーリーが紳士に言う。「この人は?」 紳士は酔いから醒めると別人なのだ。
とっさにチャーリーは金を持ったまま逃げる。

娘のアパートへ逃げ込んだチャーリーは優しく金を掴ませた。
「これは家賃、これは目の治療費だよ」 娘は感激で言葉もない。「どう・・・お礼を・・・」 
チャーリーそそくさと立ち去ろうとする。「どこかへ行ってしまうの?」 「当分は・・・」 「でも帰ってくるのね」 娘は泣きくずれた。

街へ出るとチャーリーは刑事に捕らえられた。そして監獄へ入れられた。
月日は流れ秋になった。釈放されたチャーリーはボロボロ姿で街を歩く。
娘は目の治療を終え、花屋を開業していた。祖母も手伝っている。
高級車が止まりハンサムな紳士が降り立った。娘ははっとする。
「花を届けて欲しいのですが」 声が違うと娘は思う。
チャーリーが花屋の前を通りかかる。新聞配りの少年二人組みがチャーリーに豆鉄砲をぶつけてからかう。少年たちを追い払うチャーリー。
それを見ていた娘は笑った。チャーリーと目が合った。
チャーリーは娘の顔を見つめている。
「・・・何だか求婚されそうだわ」 娘が真剣なチャーリーを見て言った。行きかけようとするチャーリーに娘は花を一輪差し出した。そして、チャーリーの風体を見て幾ばくかの金をその手に握らせた。
その瞬間、「・・・あなたね?」 忘れる筈のない恩人の手だった。チャーリーは満面に笑みを浮かべて頷いた。
「見えるの?」 この声だわ。娘は嬉々として答えた。「ええ、見えます」 チャーリーは満足そうに微笑むのだった。
映画館主から

喜劇王チャップリンの最後のサイレント映画。
盲目の花売り娘に恋をした浮浪者チャーリー。その花売り娘の目の治療費を捻出してあげるチャーリー。目が治り、娘が再会した恩人は何とボロボロの浮浪者だった、という悲喜劇です。

お馴染みの山高帽にダブダブの燕尾服でステッキを持ちヨチヨチと歩くチャップリンの映画は、笑いの裏に常に涙が潜んでいました。
天才チャップリンは例によって、原案から製作、監督・脚本・音楽・主演まで一人でこなしています。

又、ギャグの大連発。銅像の除幕式のシーン、大金持ちと酒を飲むシーン、娘の毛糸巻きを手伝うシーン、ボクシングのシーンなどです。
特にボクシングシーンは審判を巻き込んでの乱闘で今見ても抱腹絶倒です。

反骨精神、批判精神を大いに発揮したチャップリンは、常に弱者の側に立ち、権力者を、文明に翻弄される民衆を笑ったのでした。
それは、「モダン・タイムス」(’36年)、「チャップリンの独裁者」(’40年)、「チャップリンの殺人狂時代」(’47年)でさらに顕著になっていきます。
「独裁者」をきっかけに非米活動委員会からハリウッドを追われたチャップリンが母国イギリスで製作した「ライムライト」(’52年)では、落ちぶれた芸人カルベロが蘇生したバレリーナの踊りを見ながら舞台の袖で死んでいくというセンチメンタルなテーマで、チャップリン自身を彷彿とさせるものでした。

本作はサイレント映画なので台詞は最低限の字幕で、音楽と擬音が挿入されており、それが良く計算されたタイミングでぴったりでした。

 映画館へ戻る