「恐怖の岬」
恐怖の岬
   1962・米
恐怖の岬

製作:サイ・バートレット
監督:J・リー・トンプソン
原作:ジョン・D・マクドナルド
脚本:ジェームズ・R・ウェッブ
撮影:サム・リーヴィット
音楽:バーナード・ハーマン

出演:グレゴリー・ペック
    ロバート・ミッチャム
    ポリー・バーゲン
    ロリ・マーティン
    マーティン・バルサム
    ジャック・クラシェン
    テリー・サバラス


    ロバート・ミッチャム

ポリー・バーゲンとロリー・マーティン



ポリー・バーゲンに迫るロバート・ミッチャム

恐怖の岬

恐怖の岬
物語

ジョージア州の町サヴァナ。暑い夏のある日、パナマ帽を被り葉巻をくわえた男マックス・ケイディ(ロバート・ミッチャム)は裁判所の法廷で熱心に仕事をしている弁護士サム・ボーデン(グレゴリー・ペック)をじっと見つめていた。その目には怨念がこもっていた。

裁判所を出て車を発車させようとしたサムはいきなりキーを抜かれた。ケイディが窓の外に立っていた。
「俺が分かるかい?」 サムは憮然とした。「ボルチモアに8年4ヶ月と13日だ」 「・・・マックス・ケイディか」「思い出したか」 ケイディはなかなか用件を言わない。近くをスタイルのいい女が通りかかった。「見ろよ、ケツを振ってる。女はああやって男を誘うんだ・・・あんたの可愛い奥さんと娘さんもそうか?」ケイディは嫌らしくにやついていた。サムはクルマを発車した。

サム一家がボーリング場で競技を楽しんでいると、葉巻をくわえながらケイディが眺めている。気づいたサムが近づくと、「幸せな家族を見に来ただけだよ」 捨て台詞を残してケイディは去る。
サムは憤りを感じ知り合いのダットン警察署長(マーティン・バルサム)に電話した。
夜、ダットンの家に出向いたサムはケイディの件を打ち明けた。付回され、嫌がらせを受けていると。
ケイディに婦女暴行を受けている女性の現場にサムが通りかかり、裁判で証言したことからケイディは8年以上の刑務所生活を送ったこと。それを根に持ったケイディの復讐だと。

ダットンはケイディを放浪罪で連行したが、銀行に5400ドルの預金があれば法的に追い出せない。サムはケイディに言った。「警告する、うちに近づくな!昼も夜も!」 ケイディは鼻で笑って釈放された。

その夜、サムの家の犬が吼えていた。その声が突然変な泣き声に変わった。犬は死んでいた。
「ストリキニーネだ。一瞬で毒が回る」 獣医は言った。証拠はないがケイディの仕業だとサムは確信した。

ケイディが弁護士を連れて警察に抗議に来た。警察に家宅捜査され、住むところもままならない。前科があるだけで嫌がらせを受けているというのだ。その弁護士はやり手でダットンも苦手の弁護士だった。
サムはダットンの勧めで凄腕の探偵を雇う。チャーリ・シーバース(テリー・サバラス)だ。

シーバースはケイディのクルマを尾行した。ケイディが女を安ホテルに連れ込んだ。時間をおいてホテルに踏み込むと女が暴力を振るわれた後でケイディは逃げていた。女は口が利けないほど怯えていた。法廷での証言も拒んだ。
シーバースはサムにヤクザ者を金で雇えと進言した。「それは出来ない」 サムが言うと、「君の家族の問題だぞ、野獣と戦うには野獣になるしかない」 シーバースは言うのだった。

湖。サムの一家がボート乗り場にいるとケイディが娘のナンシー(ロリ・マーティン)を見ている。ナンシーは年頃の娘になっている。気づいたサムはケイディに近づき殴った。「挑発には乗らん、この借りは後で返すからな」 ケイディは捨て台詞を残して去る。
サムは妻と娘に事情を話す。ケイディという男のことを。

ある日、学校がはねて母親のペッグ(ポリー・バーゲン)の迎えを待っていたナンシーは向こうからある男がこちらに歩いてくるのを見た。湖でサムが殴ったケイディだった。ナンシーは学校の中に逃げ込んだ。
足音が迫ってくる。足音は実は学校の用務員だったがナンシーはケイディだとばかり思っていたのだ。窓から外に逃げたナンシーは道路に出たところで男にぶつかった。ケイデイだった。悲鳴をあげて道に飛び出したナンシーは車に跳ねられた。

幸いナンシーは程度の軽い怪我で済んだがサムの怒りは収まらなかった。ピストルを持ち家を飛び出したサムを止めようと妻ペッグは警察に電話した。しかし、警察に電話が繋がったときにサムが戻った。サムは思い止まったのだった。

サムは金で解決しようとケイディに持ちかけた。だが、ケイディは金で済む男ではなかった。
ケイディは女房と娘には刑務所に入った時点で逃げられた。それを恨んだケイデイは刑務所を出た後、妻に会いに行き80キロも車で連れまわし、酒を無理やり飲ませたあげく裸にし外に放り出したのだった。
「俺は根に持つ男だ」 ケイディはサムに言った。「俺は妻に8年の恨みを晴らしたんだ。刑務所ではある男を殺すことばかりを夢見てたよ。7年間はな。だが8年目に考えを変えた。それじゃ簡単すぎる。中国の刑を知ってるか。足の爪、手の爪、耳、鼻と少しづつ切り落していく・・・」 「仕事柄、クズどもを大勢見てきたが貴様は最低だ!同じ空気を吸いたくない!」 サムは席を立った。

サムは仕方なく3人のならず者を雇いケイディを襲わせた。だが、屈強なケイディの前に3人は歯が立たなかった。
「ならず者を雇うとはいい根性してるな」 ケイディから電話が掛かってきた。「そういうことなら俺にも考えがある。あんたの女房と娘を可愛がってやるぜ」 

サムはこうなったらケイデイを殺すしかないと思い始めていた。幸か不幸かサムはケイディの弁護士から告発されアトランタの倫理審査会に行く用があった。その機会を利用し、ケイディを妻子のところへおびき出す。サムはアトランタに飛行機で行くのだがすぐ引き返し、ケイディが妻子を襲う寸前ケイディをやっつけるという筋書きだ。
計画を聞いたダットン署長は難色を示した。人殺しに加担は出来ないのだ。
だが、保安官助手を警護に一人つけてくれることになる。

“恐怖岬(ケープ・フィアー)川”のハウスボート。そこに妻ペッグと娘ナンシーをかくまった。サムが飛行機でアトランタへ飛び立つのを確認したケイディは次に探偵シーバースの後を追った。
サムはアトランタに着くや車で引き返す。
シーバースはボートで“恐怖岬(ケープ・フィアー)川”を登っていく。ケイデイがボートで後を追う。これは囮であり、ケイディをハウスボートのところまでおびき寄せるためだった。

ペッグはサムから計画を聞かされていたがナンシーは知らない。夜、物音がする。怯えた二人の前に現れたのはサムだった。
サムは川辺でピストルを構えケイディが現れるのを待つ。離れたところで保安官助手も待機している。
その保安官助手を背後から突然ケイディが襲った。助手は屈強な男に川の中に沈められ死んだ。

ケイデイはハウスボートを繋ぎ止めているロープを外す。ハウスボートが流されていく。ペッグはハウスボートに乗っていたがナンシーは岸辺の小屋にいた。ハウスボートにケイディが乗っておりペッグに近づいていく。

焦ったサムがハウスボートまで泳いで行った時は怯えたペッグがいただけでケイディの姿は無かった。ナンシーが危ない!サムはすぐさま小屋に向かう。川を泳いで渡ったサムはケイディと格闘になった。ピストルを叩き落され川に沈められそうになる。長く沈めれたサムは動かなくなった。一旦死んだ振りをしたサムは川から拾った岩でケイディを殴りつけた。さすがのケイディもこれには大打撃を受けひるんだ。ピストルの落ちている岸辺まで這っていくサム。ケイディが追って来る。ケイデイに捕まる寸前、ピストルを手にしたサムはケイディを撃った。ケイディのどこかに弾は当たった。
「撃て、死ぬのはなんでもねえ」 観念したケイデイが呻いた。「いや、撃たん。それでは余りに簡単すぎる。忘れたか、お前の言葉だぞ。狭いところに閉じ込めてやる。今度は一生出られんぞ。くたばる日までな」 サムはピストルを構えて言った。
映画館主から

J・リー・トンプソン監督初期の強烈なサスペンススリラーの傑作。
刑期を終えて出てきた男が裁判で証言した弁護士に執念深い復習をするというストーリーです。執拗な犯人に追い詰められ正義の弁護士が殺人を犯しかねない状況がスリリングに展開します。
復習男にロバート・ミッチャム。弁護士にグレゴリー・ペックというあくの強い男優の組み合わせ。
他に「サイコ」(’60年)のマーティン・バルサム、「終身犯」(’61年)のテリー・サバラスといった芸達者が脇を固めています。
 ヒッチコックのよきパートナーの音楽のバーナード・ハーマンがヒッチコック映画を彷彿させるテンポでスリルを盛り上げます。
 
J・リー・トンプソン監督といえばなんといっても「ナバロンの要塞」(’61年)です。豪華な配役の戦争スペクタクルでした。
その後、「太陽の帝王」(’63年)、「マッケンナの黄金」(’69年)、「ゼロの決死圏」(’69年)、「猿の惑星・征服」(’72年)など、スリラー、西部劇からSFまで幅広い娯楽映画を楽しませてくれました。
 
この作品は、1991年にマーティン・スコセッシ監督により「ケープ・フィアー」としてリメイクされました。
ロバート・デニーロの犯人、ニック・ノルティの弁護士、弁護士の妻にジェシカ・ラングという顔ぶれでした。
オリジナルの「恐怖の岬」のグレゴリー・ペックとロバート・ミッチャムも出演しており、ペックが犯人の弁護士を、ミッチャムが主人公の友人の検事という遊び心とひねりのきいた配役でした。
特に偏執狂の犯人を演じたデニーロは気味が悪いほどはまっておりました。

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