「殺しのドレス」
殺しのドレス  1980・米


監督:脚本:
    ブライアン・デ・パルマ
撮影:ラルフ・ボード
音楽:ピノ・ドナジオ
 
出演:マイケル・ケイン
    アンジ−・ディキンソン
    ナンシー・アレン
    キース・ゴードン
物語

ケイトは中年にさしかかったが、まだまだ女盛りのブロンド美人だ。このところ夫との性生活に満足せず、欲求不満の毎日を過ごしていた。一人息子のピーターは機械マニアで、コンピューターの組み立てに夢中である。

ある日の午後、ケイトは精神分析医のドクター・エリオットを訪ねた。エリオットは魅力的な中年紳士だ。性生活の不満をエリオットに相談してもケイトの気は晴れなかった。
その足でメトロポリタン美術館へ向かった。一人の男が気になった。誘っている?実に長い逡巡だったが、ケイトは男のタクシーに乗ってしまった。
アパートでケイトは初めて行きずりの情事を味わった。男は眠り込んでいる。別れのメッセージを残そうとしたケイトの目に入った書類があった。「貴方は性病に感染しています。」ケイトは愕然とした。

一旦アパートを出たケイトは、指輪を忘れたことに気づきアパートへ戻った。その時、エレベーターのケイトをブロンドの女が剃刀で襲った。剃刀はケイトをズタズタに切り裂いた。ケイトは訳も解らないまま死に至る。
たまたまアパートへ帰ってきた娼婦のリズが、現場を目撃した。落ちていた剃刀を手に呆然とするリズ。

警察でマリノという刑事の聴取を受けたリズは、ケイトの息子ピーターと知り合う。二人で協力し、犯人を探すことにした。
一方、ドクター・エリオットが警察の聴取から帰ると驚くべき内容の留守電が入っていた。「女は始末したわ、剃刀を借りた・・・」急いでエリオットが引き出しを調べるとある筈の剃刀が消えていた。声の主はエリオットの患者で、性転換した女、ボビーだった。

地下鉄の中で、リズはブロンドの女に剃刀で襲われたが、すんでのところをピーターに救われた。エリオットの患者の中に犯人がいるらしいことをつきとめた二人は、エリオットの事務所を調べることにした。
ピーターが手づくりのタイマー付きカメラでエリオットの事務所の入り口を撮影した。ブロンドの女が写っていた。

リズはエリオットの事務所を訪ねた。患者のカルテが欲しい。リズは色仕掛けでエリオットを挑発し、別室にいると、背後からブロンドの女が現れた。手に剃刀を持っている。窓の外でピーターがそれを見て叫ぶが、嵐の音にかき消された。あわや、剃刀が振り上げられた時、一発の銃声。刑事のマリオが駆けつけたのだ。

撃たれたブロンドの女は何とドクター・エリオットであった。エリオットは自分自身が性倒錯者であり、男として魅せられた女に対し、女としての別の人格が復讐する多重人格者であったのである。

映画館主から

ブライアン・デ・パルマお得意のエロティックサスペンスです。ヒッチコックの「サイコ」を意識して作っていますが、こちらはエログロ的なムードが漂い、血もドッサリ出ます。特にエレベーターの殺人シーンはこの映画の白眉。スローモーションと鏡の使い方がいかにもデ・パルマ。
アンジ−・ディキンソンの中年女が前半でいきなり殺されてしまうのも意表を突いています。アンジ−・ディキンソンは「リオ・ブラボー」でジョン・ウェインの相手役で売り出し、「殺人者たち」ではドナルド・レーガン(前大統領)の情婦役もやってました。エレベーターのドアが死体に当たって閉じたり開いたりするシーンは断末魔的に不気味でした。

精神科医役のマイケル・ケインは今やイギリスの名優です。「探偵・スルース」では、あのローレンス・オリビエと互角に渡り合ってます。この映画は登場人物何と二人だけです。
娼婦リズのナンシー・アレンはデ・パルマ作品「キャリー」に続く起用で、「殺しのドレス」の後、デ・パルマ監督と結婚しましたが、離婚しています。
デ・パルマのカメラワークは凝っていて、美術館の舐めるような執拗さから、スローモーションの使い方の上手いこと。

この映画には、最後にぞっとするようなおまけが付いています。ナンシー・アレンの首が剃刀でスパッと切られてしまう場面、面白い趣向ですが、スプラッターが苦手の人は見ないほうが良さそうです。

  参考文献:公開時 スカラ座パンフレット


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