| ひまわり 1970・伊 | |
![]() 製作:カルロ・ポンティ アーサー・コーン 監督:ビットリア・デ・シーカ 脚本:チェザーレ・ザバッティーニ アントニオ・グエラ ゲオルギス・ムディバニ 音楽:ヘンリー・マンシーニ 出演:ソフィア・ローレン マルチェロ・マストロヤンニ リュドミラ・サヴェーリエワ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語 理髪師の娘ジョヴァンニ(ソフィア・ローレン)と恋人の配線工アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)はナポリの海岸で抱擁しあっていた。 アントニオはもう直ぐ戦線に出なければならない。 「結婚するのよ、新婚休暇は12日あるわ、そのうちに終戦よ、ナポリじゃ皆そうしてるわ」 そうして二人は結婚し、つかの間の旅行を楽しむ。だが、その休暇も残り少なくなってきた。ジョヴァンニにあるアイデアが・・・。 突然、アントニオが狂ったようにジョヴァンニに刃物を振りかざして襲い掛かった。逃げ回るジョヴァンニ。アントニオは駆けつけた警官に連行され留置場に入れられた。 面会に来たジョヴァンニとアントニオは二人きりになると激しく抱き合う。 狂人を装い、これで徴兵から解放された。・・・と、思うのは甘かった。突然ドアが開き、 「君はまともだ!軍事法廷かロシア戦線か選びたまえ!」 警察は覗き穴から見ていたのだった。 ミラノ駅でソ連に出征する兵隊達を見送るジョヴァンニ。アントニオもその中にいた。 裁縫の内職で生活していたジョヴァンニだったが、そのうちに終戦となった。 帰ってくる兵隊たちを乗せた列車がミラノに入る。そのたびにアントニオの写真をかざしたジョヴァンニの姿があった。 ある日、兵の一人が写真を見て 「・・・アントニオだ!」 と言った。ジョヴァンニは男の話をむさぼるように聞き出した。 「1月のドン河だ。俺たちは雪の中を敗走中だった・・・3分も立ち止まると凍り付く、四方からはロシア兵・・・地獄だ、あれこそ地獄だった・・・」 多くの兵隊の雪中の行軍が続いていた。疲労困憊の途中、小屋が見つかりドアを開けると中には目一杯に兵隊が詰まり立ったまま眠っているのだった。 一人また一人と雪の中に倒れていく。そして、とうとうアントニオも力尽きた。 「行ってくれ」 アントニオは目でそう言った。 「・・・それっきりだ」 男は言った。 「見捨てたのね!何て人たちなの!」 ジョヴァンニは憤った。 「何ができた・・・」 男だって死にそうな状態で命からがら帰って来たのだ。誰に責めることができようか。 アントニオの母がジョヴァンニを訪ねてきた。 「あの人は生きています・・・感ずるんです」 「それなら何故、手紙ひとつも来ないの?」 と母。 「私、行ってみます。スターリンが死んで事情も変ったし」 「ロシアへ?」 「そうです」 「何年も経つのよ・・・」 母は既に諦めているようだったが、ジョヴァンニには確信のようなものがあった。夫はきっと生きていると。 モスクワにやって来たジョヴァンニは外務・貿易省で『スパシーバ』の墓地を知る。 列車の窓から一面に広がるひまわりの畑。ここはかって戦場だった。その中にイタリア兵やロシア人の捕虜がナチの命令で穴を掘らされ眠っているのだという。老人や子供たちまでも。 夥しい墓が丘陵に見渡す限り連なっている。 スヴェトロフの詩が碑となっていた。『ナポリの子よ、何が君をロシアの野に呼んだ・・・故郷の海に飽きたか、異国の丘に想うはベスビオの山・・・』 「夫はここにはいません!生きています!」 ジョヴァンニは叫ぶ。 ジョヴァンニは各地を夫の写真を胸に探し回った。そして、その執念が実ったのか、ある片田舎の一軒家にたどり着く。 若いマーシャ(リュドミラ・サヴェーリエワ)はジョヴァンニの持つ写真を見て一瞬で事態を悟った。 マーシャはジョヴァンニを家に招き入れ話して聞かせた。 「・・・アントニオは死にかけていました・・・」 マーシャは雪の中に倒れていたアントニオを引きずりやっとの思いで救ったのだった。そして愛し合い、そのまま生活を始めた。幼い女の子もいた。 この子がアントニオの子・・・。「・・・・・・」 ジョヴァンニは黙って聞いていた。 マーシャは列車で仕事から帰るアントニオを迎えに行く。ジョヴァンニもついて行った。やがて列車が着き、アントニオが降りてきた。 驚きと郷愁の眼差しでジョヴァンニを見るアントニオ。 夫は生きていた!しかも、異国の地で知らない女性と生活していた! こんな仕打ちが待っていようとは、残酷すぎる! 耐え切れずジョヴァンニは動き出した列車に飛び乗りむせび泣くのだった。 その日以来アントニオは塞ぎ込む毎日だった。マーシャも夫を気遣い話し合った。そしてアントニオがイタリアを訪れることを承諾した。 夫はもう帰って来ないかもしれない・・・。マーシャはいつかこんな日が来るのを心配していたのだ。 マネキン工場に勤めるジョヴァンニの家の電話が鳴った。 「今、イタリアに来ているんだ」 アントニオだった。 「!!・・・今は私も一人ではないの・・・」 「・・・他の男と?・・・」 「・・・」 「では会わずに帰る・・・それがいいんだね・・・」 あきらめて帰ろうとしたアントニオだったが、ストに合い列車が動かない。 「ストで列車が動かない、ひと目会って帰りたい」 再度の電話のアントニオの訴えにジョヴァンニは承諾した。 嵐の中、アントニオはジョヴァンニの家を訪ねた。話をするのは何年ぶりであろうか。 「・・・千キロ先までの雪・・・気が付くと見知らぬ家の中だった。見知らぬ女がいた。彼女が命を救い尽くしてくれた・・・」 「お礼を言って去るべきだったのに・・・子供までつくって・・・」 「あんなに真近に人の死を見ると人は変わる。僕は死んで別人に・・・彼女の中に小さな平和を見つけ・・・戦争は残酷だ、何もかもがこんな風に・・・酷すぎる」 「・・・・・」 「一緒になろう、今も愛し合ってる」 「・・・無理よ」 その時、隣室から赤子の泣き声が聞こえた。アントニオははっとした。 「子供を犠牲にしてもいいの?」 ジョヴァンニにも既に子供がいるのだった。 隣室に行くとベッドに男のあかちゃんがぐずっている。 「名前は?」 「アントニオ」 「僕の名を?」 「聖アントニオよ」 二人は固く抱き合った。お互いの新しい生活を大事にしなければならない。 ミラノ駅で列車で去るアントニオを万感の想いで見送るジョヴァンニ。この駅から出征する夫を見送ったのが運命の分かれ道となったのである。 もう再び会うことはないであろう。遠ざかる列車の姿が溢れる涙で霞んでいった。 |
| 映画館主から 「自転車泥棒」(’48年)で知られるイタリア映画界の名匠ビットリオ・デ・シーカの名作。 戦争というものが庶民の生活をかくも残酷に変えるかという反戦のメッセージに多くの人々が涙したのでした。 物語の出だしは「昨日・今日・明日」(’63年)や「あゝ結婚」(’64年)などの喜劇調です。この2作もデ・シーカ監督でソフィア・ローレンとマルチェロ・マストロヤンニの共演で風刺の効いた作品でした。 そして本作は平凡な夫婦が戦争によって引き裂かれざるを得ないストーリーを展開させていきます。 ソフィア・ローレンはデ・シーカが『イタリアの母』と評したとおり、おおらかな逞しい女性像を演じて’70年度のイタリア最優秀女優賞を受賞しています。 イタリアの大プロデューサー、カルロ・ポンティ夫人でもあります。 ビットリオ・デ・シーカの「ふたりの女」(’60年)で主演してから、「昨日・今日・明日」で始まるマルチェロ・マストロヤンニとのコンビが”カカア天下とダメ男”の名コンビとなりました。 一方、ソ連側での妻を演じたのは「戦争と平和」(’65年〜67年ソ連、監督:セルゲイ・ボンタルチュク)で映画デビューしたリュドミラ・サヴェーリエワ。 清楚な気品で感情を抑えた名演でありました。 当時は冷戦時代でソ連国内での外国映画のロケは困難な状況だったにもかかわらず、製作者カルロ・ポンティの度重なる説得に当局もようやく折れたのだそうです。 哀愁を誘うテーマ曲は「ティファニーで朝食を」(’61年)や「シャレード」(’63年)のヘンリー・マンシーニ。 参考文献:「週刊20世紀シネマ館 NO.22」 講談社 |
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