「鉄道員」
鉄道員  1956・伊
「鉄道員」ピエトロ・ジェルミの父とサンドロ少年

製作:カルロ・ポンティ
監督:脚本:
    ピエトロ・ジェルミ
脚本:アルフレード・ジャンネッティ
    ルチアーノ・ビンセンツォーニ
撮影:アイエチ・パロリン
    レオニーダ・バルボーニ
音楽:カルロ・ルスティケリ

出演:ピエトロ・ジェルミ
    エドアルド・ネヴォラ
    ルイザ・デラ・ノーチェ
    シルバ・コシナ


クリスマスのパーティ


鉄道員
物語

鉄道機関士のマルコッチ(ピエトロ・ジェルミ)は50歳になる。
頑固で厳しい性格は長女ジュリア(シルバ・コシナ)や長男マルチェロ(リナート・スペツィアーリ)とソリが合わない。
末っ子のサンドロ(エドアルド・ネヴォラ)は遅くにできた子でまだ小学生だった。マルコッチはサンドロが可愛くて仕方が無かった。

マルチェロは仕事を探そうともしないで家でぶらぶらしている。マルコッチはそんな息子が情けない。
ジュリアは父親の知らぬ間に妊娠していた。「相手は誰だ!」マルコッチは烈火のごとく怒った。母親のサラ(ルイーザ・デラ・ノーチェ)は間に入ってなだめる。ジュリアは食料品屋の息子レナード(カルロ・ジュフレ)と付き合っていたのだ。
それでも、結婚式の日、マルコッチは自らギターを弾いて祝った。
しかし、ジュリアは死産だった。マルコッチは娘の出産の日、酒を飲んで遅く帰ってきた。そして娘の死産を聞かされたのだ。

“あの日、俺が早く帰っていれば・・・” マルコッチは悔い悩んだ。
マルコッチが列車を走らせる。隣にはいつものように相棒で親友のリベラーニ(サーロ・ウルツィ)が乗っていた。
ふと気がつくと前方の線路に人が立っていた。急ブレーキをかけたが間に合わない。自殺しようとした男性を轢いてしまった。

「仕方が無かったんだよ」リベラーニは慰めてくれたがマルコッチの気分は重かった。再び機関車を運転していたマルコッチは「赤信号だ!」のリベラーニの声で我に返った。向うから電車が走ってきた。急ブレーキ。けたたましい音を立て、切り替え線の手前で止まった。かろうじて衝突だけは避けられた。
マルコッチはリベラーニとともに過失を咎められ、特急電車からはずされた。構内の仕事に回され、ボロ機関車の運転だった。それからのマルコッチは酒に溺れるようになる。

サラは娘の夫レナードから相談された。。夫婦仲がうまくいってないという。サラは気をもんだ。夫のマルコッチは帰ってこないし心配は去らなかった。

サンドロがサラのベッドに入って来た。姉を心配しているのだ。サラは話して聞かせた。
「レナードはジュリアを愛しているのよ。だから母さんに相談を・・・。私達もそうだった。酔って帰って手を上げた時などどんなに憎いと思ったか。
でも、そのうちに良い点が見えてきて嫌なことは忘れられるの」

ある日、サンドロはジュリアを車の中で誘惑する、かっての男友達の車の窓ガラスに石を投げて割った。
連絡を受けたマルコッチは警察へサンドロを迎えに行く。帰り道、父親が怖いサンドロは離れてついて来た。「こいよ、話しをしよう」父が言った。「男と男で?」と、サンドロ。サンドロは仕方なくジュリアが男と車にいたことを話した。

アパートにはたまたまジュリアが帰っていた。マルコッチは娘を殴った。それを止めようとしたサラを突き飛ばす。そこへマルチェロが割って入る。「母さんに手を出すな!」
ジュリアは泣き叫ぶ。「もう、誰の顔も見たくない」
マルコッチは怒鳴った。「出て行け!二人ともだ!」サラが止めたが娘と息子は家を飛び出していった。家族の崩壊だった。

鉄道組合のストライキ中にマルコッチはリベラーニの制止を振り切って列車を運転した。そのうち、“裏切り者” “マルコッチはスト破り”などと落書きを書かれる始末。
マルコッチは自責の思いからまた場末の酒場で酒に溺れる。仲間から白い目で見られ、家族は崩壊。マルコッチは四面楚歌の状態だった。

サラはサンドロに話して聞かせた。
「一緒に住んでいても、ろくに話もしないとお互いの気持ちが通わず、ちょっとしたことでいがみ合うのよ・・・ちょっと話せば済むことなのに・・・家族がみんなバラバラなのよ・・・」サラが背を向けて泣き始めた。「泣いちゃいやだ」サンドロは母にすがった。

クリスマスも近い日、サンドロは場末の酒場にいたマルコッチを呼びに行った。そして仲間が集まっている酒場へ連れて行く。久しぶりに仲間と再会したマルコッチ。最初、きょとんとしていた皆は「いい酒が入ったんだ、おごるぜ」とマルコッチに声を掛けるバーテンに続いてマルコッチに声を掛けた。「待ってたんだぞ」それから皆は昔どおりに飲み、唄った。
そこで、機嫌よくギターを弾いていたマルコッチが突然倒れた。

クリスマスの日。しばらく静養していたマルコッチのもとへリベラーニがやって来た。「メリー・クリスマス!」 そして、リベラーニの誘った友人たちがそれぞれに手土産を持って駆けつけた。そして、息子も戻って来た。マルコッチは戻った息子を抱きしめた。そして娘のジュリアからも電話が入った。レナードとの仲も戻ったという。
なんと言う幸せであろうか。サラもサンドロも胸を撫で下ろし幸せな気分に浸った。

クリスマスの夜のパーティが散会した後、マルコッチは満ち足りた気分でギターを奏でながら眠るように息を引き取った。

夫亡き後のある朝、息子マルチェロは勤めに出てゆき、サンドロは学校に駈けて行く。見送ったサラは一人、寂しさを隠しきれないのだった。
映画館主から

イタリアの社会派ピエトロ・ジェルミ監督の代表作。
もともと俳優志願だった彼は主演もこなし、子供たちにとって口うるさい頑固親父を好演しています。
可愛らしいサンドロ少年を演じたエドアルド・ネヴォラは今、何をしているやら。50代のおじさんになっている筈。(こういう夢のないことは言わぬが花ですね)

ドラマはサンドロ少年のナレーションで少年の目を通して家族の出来事がつづられていきます。家族の崩壊と結束。裏切りと友情。母の愛。
母親役の ルイザ・デラ・ノーチェが慈愛に満ちた眼差しで最高にいい演技でした。
娘役のシルバ・コシナは当時グラマー女優として名を馳せていましたが、以後はそれほどの作品にも恵まれないまま’94年、61歳で亡くなっています。

ピエトロ・ジェルミにはその他に「わらの男」(’57年)や「刑事」(’59年)という監督・主演作があります。俳優としても捨てがたい実績を残し、’74年、肝臓ガンで世を去りました。

カルロ・ルスティケリのヒット曲が哀愁を誘います。

 映画館へ戻る