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「夜の大捜査線」 |
| 夜の大捜査線 1967・米 |
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![]() 製作:ウァルター・ミリッシュ 監督:ノーマン・ジェイソン 原作:ジョン・ボール 脚本:スターリング・シリファント 撮影:ハスケル・ウェクスラー 音楽:クインシー・ジョーンズ 出演:シドニー・ポワチエ ロッド・スタイガー ウォーレン・オーツ リー・グラント ![]() ![]() |
物語 アメリカ南部ミシシッピ州の田舎町、スパータの暑い夜だった。 サム・ウッド巡査(ウォーレン・オーツ)は、いつものようにレストランでボーイと他愛無い会話をかわした後、パトカーで巡回に出た。 途中、16歳の少女デロレスの家の前に車を止め、窓を見る。デロレスはサムの巡回時間に必ず自分の裸を見せつけるのだ。 再びパトカーで町へ入って行くと、人通りのない街角に男が倒れていた。 スパータ署の署長ギレスビー(ロッド・スタイガー)が駆けつけた。死体は実業家のコルバートだった。頭を投打されて死んでおり、財布は無かった。 サムが駅にいた黒人をスパータ署に連行して来た。黒人への偏見が人一倍強いギレスビーは顔をしかめた。 よそ者の犯行と決めていたギレスビーはこれで一件落着と思ったが、調べてみると黒人はバージル・ティップス(シドニー・ポワチエ)と名乗り、フイラデルフィア署の殺人課の刑事で、メキシコ国境に近い故郷の母に会いにいった帰りで列車の乗り換えのため駅にいたのだった。 フィラデルフィア署の署長に電話で殺人事件の捜査にティップスを協力させると助言されたギレスビーは、渋々応じた。ギレスビーは殺人事件を手がけた経験がないのだ。 ティップスがコルバートの死体を検死する。 そこへ、コルバートの財布を盗んで逃げていた男ハーベイが捕らえられ連行されて来た。「あの人は倒れていたんだ。俺は財布を拾っただけだ」 ティップス、ハーベイの腕を触って調べる。 「左利きだ」 ティップスが言った。「だったら何だ」とギレスビー。 「被害者の致命傷は右17度の角度から殴られたものだ。やれる者は右利きだ」 ティップスの論理に肯きながらもギレスビーはいらついた。 「サム!ミスター・ティップスを駅までお送りしろ!」 黒人の助けなんているものか。 夫コルバートの死を知らされ駆けつけていたコルバート夫人(リー・グラント)は、「何ということなの!これでも警察なの、夫はこの町の誰かに殺されたのよ、捜しなさい!」 夫人は市長に訴えた。「あの黒人刑事に捜査させて、そうしないと技師団を撤退させます」 コルバートはこの町に工場を建設するために来ていたのだ。 ギレスビーは駅までティップスを連れ戻しに行く。「捜査に協力してくれないか、工場が閉鎖されれば黒人の職が失われるんだ」 コルバートの車を調べるティップス。座席に血痕があり、ブレーキにシダの破片が見つかった。 エンディコット農園へ出かけるティップスにギレスビーも同乗した。 最初は普通に会話していたこの土地の実力者エンディコットは、シダを理由に「コルバート氏は昨夜ここへ来ましたか?」とのティップスの質問に、「それは私に対する尋問か」とティップスを張り飛ばす。すかさずティップスもエンディコットを殴った。ギレスビー、あっけにとられる。 エンディコット、怒りを堪え、「いつもなら撃ち殺してるところだ」と声を絞り出した。この男も最大の黒人差別者だった。 夜、サムのパトカーの巡回をチェックするティップス。後部座席にギレスビー。レストランへ立ち寄った後、サムは16歳のデロレスの家をの前を避けて回った。 「何故、順路を変える?」ティップスの目は誤魔化せない。「変えてない!」サムは反発した。「俺の上司はこいつか、あんたか」ギレスビーは黙っていた。 あくる日、ティップスが署に行くと、ギレスビーが得意満面の顔つきで言った。「ホシが上がった、サムだ」 「サム?馬鹿な」 ティップス、思わず笑う。 「サムは昨日、600ドルも預金した」とギレスビー。 サムは反発した。「3年かかって溜めた金だ!」 サム、留置所へ入れられる。 その時、16歳の少女デロレスを伴って、兄のバーディが署に現れた。 「サムを出せ!」バーディは大層な剣幕で言った。「サムが妹を孕ませたんだ」 ギレスビーがデロレスに事情を聞いた。それによると毎晩、サムは巡回の時に窓を覗く。デロレスの裸を見るためだ。ある晩、サムは声を掛けてきた。ドライブに誘い、墓場で性交渉に及んだというのだ。 聞いていたティップスにピンとくるものがある。留置所のハーベイに、「この町で女を孕ませたらどこで助けてもらうんだ?」 闇で堕胎の処理をする黒人女がいるという情報を得た。 ティップスは堕胎処理の黒人女の店を訪ねた。「デロレスの中絶費用を出す男の名前を教えてくれ、その男はコルバートを殺したんだ」 黒人女ベラミーは「私のこの安定した生活を崩さないでおくれ」と言いながら、「デロレスが今夜、始末しに来るのよ」 そこへ、デロレスが顔を出したが、ティップスを見て逃げ出した。ティップス、デロレスを追い、捕まえた。その時、木の陰からピストルを構えた男が現れた。レストランのボーイだった。 そこえ、慌ただしく車が駆けつけた。数人の男たちの中心にデロレスの兄バーディがティップスに向けて銃を構えていた。「クロめ、観念しろ」 ティップスは手を上げ、ボーイを示した、「彼の財布を見ろ、中絶代が入ってる」 「でたらめだ!」ボーイはあせって言った。だが、バーディが財布を見ると札束が入っていた。しどろもどろのボーイに向けバーディが銃を構えるやボーイはバーディを撃った。すかさずティップス、ボーイを取り押さえる。 逮捕されたボーイはギレスビーの調べに全てを自白した。 列車で帰るティップスをギレスビーが駅まで送ってきた。ティップスのカバンを持ってやるギレスビー。列車が来て別れ際、ギレスビーは言った。 「元気でな」 その笑顔はかっての黒人偏見の顔つきではない。 ティップスは笑顔で返し列車に乗るのだった。 |
| 映画館主から アメリカ南部の町で起きた殺人事件をめぐり、たまたまこの町に居合わせた黒人の殺人課の刑事シドニー・ポワチエと、署長ロッド・スタイガーの葛藤のドラマです。 黒人に対する偏見の強い署長は、黒人刑事の敏腕ぶりに次第に偏見を解いていき、感謝するのですが、素直にその気持ちを表現できません。 別れ際、ポワチエのカバンを持ってやり、「元気でな」という一言を言うのがやっとでした。しかし、それで二人の気持ちは完全に通じ合いひとつになりました。 全編を通して機嫌の悪い顔つきのロッド・スタイガーが、何ともいえない笑顔でポワチエを送り出すのです。ロッド・スタイガーは本作でアカデミー主演男優賞を獲得しています。 ちなみに、アカデミー賞は作品、主演男優、脚色、音響、編集と5冠に輝いています。 ノーマン・ジェイソン監督は「シンシナティ・キッド」(’65年、スティーブ・マックィーン主演)、「アメリカ上陸作戦」(’66年、アラン・アーキン主演)などで頭角を現し、本作のアカデミー作品賞で名監督の仲間入りを果たしました。 以後も「華麗なる賭け」(’68年、スティーブ・マックィーン主演)、「屋根の上のバイオリン弾き」(’71年)、「ジーザス・クライスト・スーパースター」(’73年)、「月の輝く夜に」(’87年)などで、社会もの、コメディ、ミュージカルと幅広く活躍しています。 走る列車の窓のシドニー・ポワチエの姿を超ロングショットでとらえた画像に、レイ・チャールズの唄う主題歌がラストの余韻を残します。 |
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