「黒衣の花嫁」
黒衣の花嫁
   1968・仏=伊
黒衣の花嫁

製作:オスカー・レベンスタイン
監督:脚本:
    フランソワ・トリュフォー
原作:コーネル・ウーリッチ
脚本:ジャン・ルイ・リシャール
撮影:ラウール・クタール
音楽:ベルナール・エルマン
衣装:ピエール・カルダン

出演:ジャンヌ・モロー
    ジャン・クロード・ブリアリ
    ミシェル・ブーケ
    シャルル・デネ
    クロード・リッシュ
    ダニエル・ブーランジェ
    ミシェル・ロンダール
    アレクサンドラ・スチュワルト


機中のジュリー(ジャンヌ・モロー)

謎の女ジャンヌ・モロー

ミシェル・ブーケに毒入りの酒を飲ます

教会から出てきた新婚カップルを狙う

撃たれた花婿

モデルとなったジャンヌ・モロー

ジュリーの前に立ちはだかるコリー(ジャン・クロード・ブリアリ)

黒衣の花嫁
物語

コートダジュールのあるアパートでブリス(クロード・リッシュ)が婚約パーティを催していた。そこへ白いイブニングドレスを着た女(ジャンヌ・モロー)が現れた。
女はブリスをバルコニーへ誘い出した。ブリスの友人コリー(ジャン・クロード・ブリアリ)も会話に付き合ったが、部屋に戻った隙にブリスはバルコニーから転落死し、女の姿は消えていた。

別の市の銀行員コラル(ミシェル・ブーケ)のアパートにコンサートの指定席券が届く。コラルは心当たりがなく不審に思いながらもコンサートに出かけた。
ピアノとバイオリンのコンサート。コラルの隣席に謎の女が座る。
コラルと女は共に帰るが、何故コンサートの券を自分に送ってくれたのか女は明かさない。明日の夜、コラルのアパートへ行くという女にコラルは胸がときめいた。
「人生は勝利しなくちゃね。負け犬なんて最低よ」 謎の言葉を残して女は立ち去った。
翌日の夜、約束どおり女がやって来た。酒好きのコラルに酒のボトルを携えて。しかし、そのボトルには青酸カリが混入されている。
乾杯し、コラルの頭が混乱し始めた時、女が話し始める。
数年前、教会での結婚式。教会から出てきた新婚カップル。新郎が突然の銃撃に倒れる。胸から血を流して倒れた新郎に泣き叫び取りすがる花嫁。
「・・・分かったぞ・・・あのときの花嫁だな・・・」 コラルは悶絶して息絶えた。

若手政治家モラン(ミシェル・ロンダール)の家に電報が届く。『母急病すぐ来られたし』 モランの妻の母の急病を知らせる電報だった。
妻は急いで実家に帰った。小学生のクッキーとモランの家に謎の女が現れた。クッキーの学校の先生だと言うがクッキーは違うという。しかし女が料理を作り、かくれんぼ遊びをしてくれるうちにそんなことはどうでもよくなった。クッキーを寝かしつけ、女が帰ろうとしたとき、「指輪がないわ」 女が言った。
かくれんぼ遊びのとき、女が階段下の物置に入った時に落としたのかもしれない。モランが物置に入って探しているとき物置のドアを女が閉め鍵を掛けた。
「!何をする」 モランが叫ぶ。「私はジュリー・コレールよ。貴方を殺しにきたの」 ジュリーは冷たく言い放った。モランは瞬間に悟り、「待て!全て説明する」 
数年前、教会の向かいのアパートメントの一室でモラン、ブリス、コラル、ダルロー、フェルグスたち狩猟仲間5人が酒を飲みながら銃について談義していた。銃も何丁かそこにあった。教会の塔の上に風見鶏がある。悪戯にモランが銃に実弾を込め風見鶏を狙う。そのままモランは銃をテーブルに置き酒を飲みに奥へ行った。その隙にスキンヘッドのダルロー(ダニエル・ブーランジェ)がその銃を取り風見鶏に標準を合わせる。そのまま下へ、教会の玄関から式を済ませた新婚カップルが出てきた。
ダルローが新婚カップルに標準を定める。「その銃には弾が!」 モランが窓際に走って来たときには遅かった。ダルローは実弾の入った銃を撃った後だった。教会の玄関口で新郎が倒れ人々が取り囲んでいる。
このまま捕まっては一生を棒に振ってしまう。5人はアパートメントから逃げた。もう二度と会わないと約束を交わしながら。
「・・・過去の話だ」 モランは言う。「私には過去じゃない。夜毎訪れる悪夢よ」 ジュリーの幼友達ダビッドを、将来は夫になる人と夢見た男を結婚式のその日に失ったのだ。悲嘆のあまり自殺しようとしたこともある。だがジュリーは思い直した。夫ダビッドの仇を討つまでは死ねないと。そして長い歳月を費やし5人を探し出したのだ。
ジュリーはガムテープで物置のドアの隙間を目張りしていく。中からモランが必死にドアを叩く音。ジュリーは去り、モランは窒息死した。

ジュリーは懺悔室で神父に犯した罪を懺悔する。「今すぐやめるのだ」 神父は言う。「憎しみに生きる殺人者に人を愛せると?・・・やり遂げたら彼の元へ行きます」

自動車修理工場へジュリーが来た。バッグの中にピストルが忍ばせてある。呼び出しに応じてスキンヘッドのダルローがやって来た。ジュリーはバッグからピストルを取り出した。その時、ダルローの周りを警察が囲みダルローを逮捕してしまった。ダルローは盗難車を売りさばいて不当な利益を出していたのだ。

画家フェルグス(シャルル・デネ)のアトリエをモデルとしてジュリーが訪れる。フェルグスはジュリーを見た瞬間、自分が以前から思い描いていた理想の女性像にジュリーが瓜二つだと思う。
ジュリーをモデルに大作『ダイアナ』を描き始める。フェルグスはアーチェリーを構えるポーズのジュリーに次第に惹かれていく。
そんなある日、アトリエを友人のコリーが訪れた。コリーはジュリーを見て前に会ったことがあると思うのだが思い出せない。
コリーがその女を思い出したのはフェルグスがアーチェリーの矢で胸を射抜かれた後だった。
フェルグスの葬儀に顔を出したジュリーはコリーと再会する。ジュリーは警察に逮捕された。

監獄に入ったジュリーは模範囚となり、いつの日か給食係りとなった。ここの男房にはダルローが収監されている。夫ダビッドに引金を引いた張本人がダルローだ。
ジュリーが給食を台車に載せ男房に入っていく。フキンの下に包丁は隠されていた。やがて男房からダルローの断末魔の叫び声が監獄に響き渡った。
映画館主から

フランスのヌーベルバーグ派監督の一人、フランソワ・トリュフォーのサスペンス映画。
トリュフォーは熱烈なヒッチコッキアンとしても知られ、ヒッチコックとの対談を著した「ヒッチコック映画術」(晶文社 山田宏一/蓮実重彦 訳)という対談集は私の愛読書の一冊にもなっています。

ストーリーは極めてシンプルです。幼馴染の男性と晴れての結婚式の日、教会から出てきたところを何者かに撃たれ花婿が死ぬ。花嫁は絶望のあまり、凶行に関わった5人の男たちを手を尽くして探し出し、復讐していく、というものです。
さしづめ日本映画「五辧の椿」(’64年松竹、原作:山本周五郎、監督:野村芳太郎、主演:岩下志麻)のフランス版といった趣があります。

花嫁を演ずるジャンヌ・モローは当時40歳で決して若いとは言えませんが、その冷めた美貌で男に近づき沈着冷静に復讐を遂げていくところは凄みさえ感じさせます。
「現金に手を出すな」(’53年、監督:ジャック・ベッケル)、「死刑台のエレベーター」(’57年、監督:ルイ・マル)、「突然炎のごとく」(’61年、監督:フランソワ・トリュフォー)、「審判」(’62年、監督:オーソン・ウェルズ)、「大列車作戦」(’64年、監督:ジョン・フランケンハイマー)などの作品で彼女は外見の美しさだけでなく、自立した個性的な役柄を演じてきて、反保守のヌーベルバーグ派の監督に好かれたのでしょう。

トリュフォーはヒッチコッキアンだけあってサスペンス、コメディの才覚があります。私が見た中でも「華氏451」(’66年、主演:オスカー・ウェルナー、ジュリー・クリスティ)は好きな作品です。

また、アメリカのヒットメーカー、スティーブン・スピルバーグもトリュフォーに憧れた一人で、「未知との遭遇」(’77年)でフランスのUFO研究者の役をトリュフォーに演じてもらったのでした。
しかしトリュフォーはその7年後の1984年、脳腫瘍のため52歳の若さで世を去ってしまいました。

原作者のコーネル・ウーリッチは別名ウィリアム・アイリッシュでもミステリーを書いていて、「暗闇へのワルツ」はトリュフォーによって「暗くなるまでこの恋を」(’69年、主演:ジャン・ポール・ベルモンド、カトリーヌ・ドヌーブ)として映画化されています。
「裏窓」(’54年、監督:アルフレッド・ヒッチコック、主演:ジェームズ・スチュワート、グレイス・ケリー)の原作者でもあります。

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