| 汚れなき悪戯 1955・スペイン |
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![]() 監督:脚本: ラディスラオ・バホダ 脚本:J・M・サンチェス 撮影:エンリケ・ゲルネル 音楽:パブロ・ソロサバル 出演:パブリート・カルボ ラファエル・リベリュス アントニオ・ピコ アンドリアーノ・ドミンゲス ![]() ![]() |
物語 昔、戦禍に荒れたスペインのある小さな村。 その村を望む山の上には、当時、地主の屋敷が建っていたが、戦争の傷跡で無惨な姿になっていた。 ある日、フランシスコ教会の修道士が3人、村長を訪ねて来た。 「あの屋敷を修道院として譲ってくれませんか」老村長は承諾した。 修道士たちは力を合わせて崩れた屋敷を修復した。やがて立派な修道院として蘇えり、僧の数も12人に増えていった。 ある日の朝、僧院の門の前に産まれたばかりの赤子が棄てられているのを、一人の僧が発見し、大騒ぎになる。 男の子を誰が棄てたのか、手分けして村中を回ったが母親は見つからない。育ててくれそうな家庭を訪問してもどこも受け入れてくれそうにない。 12人の僧たちは赤ん坊を僧院の中で育てることにした。 時が経ち、12人の修道士の手で育てられた5歳のマルセリーノ(パブリート・カルボ)は、無垢ないたずらっ子で修道院のアイドルだった。 マルセリーノは修道士たちに“病気さん”とか“おかゆさん”などとあだ名を付けて呼んでいた。 前の村長は亡くなり、新村長は、鍛冶屋の柄の悪い男だった。以前、赤ん坊を預かってくれるよう頼みに行った時も悪態をついたのだが、その彼が修道院にやって来て、マルセリーノを渡せと迫るのだった。 修道院長(ラファエル・リベリュス)は「貴方にはマルセリーノは渡さない」と、きっぱり断った。 村長は「ガキはいらん、その代わり村を出ていけ」と、棄て台詞を残して立ち去った。 ある日、丘の上でマルセリーノが遊んでいると、若い母親が「マヌエル、マヌエル」と、自分の息子を呼んでいた。その日から、まだ会ってもいないマヌエルが空想の友達になった。 マルセリーノは“おかゆさん”に質問した。 「僕のママは?」 「・・・天国にいるよ」 “おかゆさん”は答えた。 「きれいだった?」 「・・・きれいだったよ」 マルセリーノの悪戯は他愛無いものだったが、修道士たちをてこずらせるのだった。鐘の中に布を詰めて音が鳴らなくしたり、鍋の中からバッタが飛び出したりだ。 そんな時、“おかゆさん”に言われた、「2階に行ってはならんぞ、絶対に。2階には大男がいてな、お前をさらってしまうぞ」という言葉がマルセリーノには気になって仕方が無い。 マルセリーノがサソリに噛まれ高熱を出した。代わる代わる看病する修道士たち。マルセリーノは夢を見る。2階の夢、・・・誰がいるのだろう。 熱も治まり、目を盗んでマルセリーノは密かに2階へ上がった。納屋の奥に扉があり、そこに大男が十字架に架けられていた。それは、イエス・キリストの像だった。 「お腹が減ってるんでしょ」 イエス・キリストの像にパンを運ぶマルセリーノ。 恐る恐るパンを差し出すと、キリスト像の手が生き物のように動いたのだ。 「やっぱり、お腹が減ってるんだ」 次の日も、次の日も、マルセリーノはパンを運ぶ。ワインも運ぶ。 お祭りの日。町へ出かけたマルセリーノは、八百屋でリンゴの山を崩してしまった。通りを転がるリンゴに驚いた牛が暴れる。祭りは大混乱になった。 「今度こそ、立ち退き請求に署名してもらうからな」村長がやって来て凄んだ。 修道院側としては行き詰まった。 “おかゆさん”は、最近のマルセリーノの行動に異変を感じていた。パンがワインが減っている。マルセリーノの仕業に違いない。 ある日、マルセリーノを見張っていると、マルセリーノがパンを2階の奥の部屋に運ぶのを見た。 そして、ドア越しに、あの方の声を聞いたのだ。 「お前は、良い子だ。何か望みを叶えてあげよう」 「ママに会いたい。天国に行きたい」マルセリーノは言った。 “おかゆさん”はそれを聞き、驚愕のあまり胸に手を当てた。「みんな、来てくれ!」 院長はじめ全員の修道士は見た。キリスト像の元で静かに眠るように死んでいるマルセリーノを・・・。あたりは光に満ちていた。 村人全員が奇跡をひと目見ようと修道院に押し寄せた。 村長は何も言えなくなり、それから、“パンとワインのマルセリーノの奇跡”は、以後毎年、村で祝われるようになったのだ。 |
| 映画館主から 愛くるしいマルセリーノ役のパブリート・カルボは、当時6歳でした。 私とほぼ同世代ですが、彼は本作でデビューし、世界中の涙を誘った後、数本の映画に出演しただけで映画界を引退、2000年1月に脳卒中のため52歳で亡くなりました。 悪戯好きな純粋無垢な少年が、修道院の2階の納屋でイエス・キリスト像と会話をかわし、“ママに会いたい”という少年の願いを聞き入れたキリスト像が少年を天国に行かせてやるという、メルヘンチックな、少し残酷なお話なのであります。 マルセリーノと12人の修道士たちの交流が何故かほっとさせる暖かみを感じさせ、モノクロ画面も印象的。 ラストの奇跡が光に満ちて感動を呼びました。 パブロ・ソロサバルの哀愁に満ちた音楽は映画とともに心に染み入ります。まさにスペイン映画の代表作ではないでしょうか。 カンヌ映画祭特別賞受賞作品です。 |
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