「モリツリ」
モリツリ 1965・米
モリツリ

製作:アーロン・ローゼンバーグ
監督:ベルンハルト・ビッキ
脚本:ダニエル・タラダッシュ
撮影:コンラッド・ホール
音楽:ジェリー・ゴールドスミス

出演:マーロン・ブランド
    ユル・ブリンナー
    ジャネット・マーゴリン
    トレバー・ハワード


「モリツリ」のマーロン・ブランドとユル・ブリンナー

トレバー・ハワード

モリツリ

物語

1942年、東京、ドイツ大使館。
ウェンデル提督から占領下にあるフランスのブルドーまで秘密物資を運ぶよう命令されたミュラー船長(ユル・ブリンナー)は、苦言を呈していた。
「こんな船員たちは使えない。殺人犯が2人、殺人未遂が2人、窃盗が1人、政治犯が1人いる」 ミュラーにあてがわれたのはそういう連中だった。
「任務が終わったら、ドイツに送還して処刑すればよいのだ」 ウェンデル提督は有無を言わせなかった。

一方、インドでこの情報を掴んだイギリス情報部のスタッター大佐(トレバー・ハワード)は、反ナチ思想のためゲシュタポに追われる身のクレイン(マーロン・ブランド)をなかば脅迫して、そのドイツ船を妨害する任務に着くよう説得していた。
「インゴ号は7千トンの生ゴムを積んで東京を出航する。そのゴムがあれば全ドイツ軍は少なくとも3ヶ月は戦闘力を維持できる」
「はっきり言って、船の爆破はごめんですな」
「爆破ではない。爆破を防ぐのだ。ドイツが欲しがっているそのゴムを我々が盗むのだ」 ドイツの特務船は敵が近づくと自爆するようになっている。その爆破装置を不発にしておけば・・・・。

クレインはハンス・カイルと名を変えた。ドイツの極東地区の秘密機関の指導部長という肩書きで船客としてインゴ号に乗船した。ミュラー船長はドイツ人だが、ナチスが嫌いでカイルの乗船を歓迎しない。ミュラーは過去に飲酒のため敵の魚雷を防げず船を沈めたことがあった。カイルの乗船は監視のためだと思っていた。ミュラーの配下に親衛隊のクルーゼ(マーチン・ベンラス)がいた。クルーゼはナチス嫌いのミュラーに内心反発している。

インゴ号が日本を出航した。カイルは隙を見て機関室に忍び込み爆破装置を見つけ配線を切断していった。だが船全体に爆破装置が何箇所あるのか、どこにあるのか分からない。
カイルはクルーゼをそそのかした。「君にすべてを打ち明けることにした。これを見ろ、妨害工作だ」 爆破装置の切断された配線を見せられクルーゼは驚愕した。「政治犯のロバに違いない!」 クルーゼが言った。
「全てを点検しなければならん」 カイルはクルーゼを案内させ、全12箇所の場所を確認した。
「ロバのことを船長に報告する!」クルーゼは憤った。「ならん!今では誰でも疑える・・・君もだ」 カイルは制止した。

インゴ号の進路には連合国側の船が出没し始め、インゴ号は英国船に偽装するなど慌ただしい空気に包まれていく。カイルは爆破装置の破壊公作を進めていく。
米駆逐艦が近づいて来た。遠ざかるのを見てカイルが煙突によじ登り汽笛を鳴らした。駆逐艦が停戦命令を送ってきた。ミュラーはもはやこれまでと自爆装置のスイッチを入れようとした、その時、カイルが飛び込んだ。「命を無駄にするな」 すると、どこから現れたのか日本の潜水艦が米駆逐艦を攻撃し始めた。
「君が私の命を救おうとするとは思わなかった」 インゴ号は安全海域に避難した。

カイルが政治犯ロバの部屋に連れこまれた。ならず者の船員たちが揃っている。「場合によってはこれをクルーゼか船長に渡すぜ」 ロバはカイルのペンチを持っていた。カイルはロバたちに身分を明かした。「君たちと目的は同じだ。破壊してない装置が3つある。連合軍に遭遇する前に破壊せねばならん」

やがて日本の潜水艦から連合国側の捕虜18名とドイツから逃げてきたユダヤ娘エスター(ジャネット・マーゴリン)がインゴ号に移された。その時、潜水艦に乗っていたウェンデル提督はカイルに会って疑念を持つ。
ミュラーは「彼は私が自爆して船を沈めるのを止めた。止めなければ7千トンのゴムが沈んでいた」と、カイルを弁護した。

ミュラーはエスターに怪我人の介護を手伝わせた。クルーゼはミュラーに噛み付いた。「ユダヤ人と知って使っているのですか」 「それがどうした、君たちはユダヤ人を差別しすぎる」 「問題発言ですぞ」 「暴力だけで君たちの理想は実現しない。憐れみの精神が必要なのだ」

ミュラーの息子は軍人だが、彼が英国の病院船を撃沈したとの報が入った。皆、ミュラーに祝の握手を求め、ミュラーも応じた。しかし、ミュラーは自室で泥酔して暴れた。「何が勲章だ!」ミュラーは息子の写真を破り捨てた。
ミュラーが泥酔したので、クルーゼが船長代行となった。その裏でカイルの叛乱計画は進行していた。エスターを説得し、捕虜たちに協力を求めた。ミュラーの配下の士官の一人も味方に付いた。武器は調達できる。
そんな折、ウェンデル提督からの無電が入った。“カイルなる人物は偽物だ”クルーゼの顔色が変った。「カイルを探し出せ!」

カイルたちは銃を奪い、船員たちと銃撃戦になった。しかし多勢に無勢、捕虜たちは次々と投降していく。怒り狂ったクルーゼは投降したエスターの額を打ち抜いた。影でそれを目撃したカイルは船長室へ駆け込んだ。
泥酔から覚めたミュラーが事態を知ったが落ち着き払っていた。「君は最悪の事態はクルーゼと共に戦うことだと言った。米国の艦隊がすぐ近くまで来ている。どうする」カイルが言うと、ミュラーは答えた。「私は反逆者ではない。出て行ってくれ」

カイルは機関室へ急ぎ、爆破装置の配線を繋いだ。そして爆破のスイッチを押した。轟音と共に船体が揺れ、炎が上がった。機関室に穴が空き、浸水してきた。
船員たちも捕虜たちも海にボートを降ろし、先を争って脱出する。クルーゼはカイルの捜索をあきらめ海に降りる途中、再爆発で負傷し海に投げ出され溺れた。

傾いた船体の甲板にミュラーとカイルの二人が残された。ミュラーが船底を覗き込んで言った。「船荷のラードが溶けて固まり穴を塞いでいる!」
「そうすると数時間はもつな。私のために米国艦隊に無電を打ってはくれないだろうね」と、カイルは言った。
「君は利口ではないが、勇気があるな」ミュラーは答え、無電を打つため船室に入って行くのだった。
映画館主から

第二次世界大戦時の船上の争いを緊迫感溢れる演出で描いた戦争映画の傑作です。ドイツ人監督のベルンハルト・ビッキの他の作品を私は知りませんが、本作はテンポ、モノクロの引き締まった画面、演出、キャスト、どれをとっても一級品です。しかし、地味なせいか、残念ながらあまり知られていないようです。

嬉しいのは、マーロン・ブランドとユル・ブリンナーの異色の顔合わせ。恐らくこれ一作だけではないでしょうか。
お互い立場は違えど相手を男と見抜き、自分の意志を貫き任務をまっとうしようとする一徹なところを好演しています。しかも、お互いに戦争はいかなる戦争でも愚かで無意味であるという信念を持っている点も同じです。

さらに嬉しいのは序盤にイギリス情報部の大佐役でトレバー・ハワードが出ていることです。いぶし銀の演技力を持つ、トレバー・ハワードは私の好きな俳優の一人です。デビッド・リーンの「逢びき」(’45年・英)、キャロル・リードの「第三の男」(’49年・英)で名優の位置を不動にした演技派です。マーロン・ブランドとは、大作「戦艦バウンティ」〔’62年・米、監督:ルイス・マイルストン)で、海の上で男の対決を繰り広げています。

マーロン・ブランドがピストンが激しく動く機関室に忍び込んで破壊工作をするシーンは、引き締まったモノクロ画面に類稀な緊張感を生んでいます。

本作は、館主お勧めの一作であります。

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