| ミッドナイト・エクスプレス 1978・米 |
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![]() 製作:デイヴィッド・パトナム アラン・マーシャル 監督:アラン・パーカー 原作:ビリー・ヘイズ ウィリアム・ホッファー 脚本:オリバー・ストーン 撮影:マイケル・セラシン 音楽:ジョルジョ・モロダー 出演:ブラッド・デイビス ランディ・クエイド ボー・ホプキンス ジョン・ハート ポール・スミス マイク・ケリン ノーバート・ワイザー アイリーン・ミラクル パオロ・ボナチェリ マイケル・エンサイン フランコ・ディオジェーネ ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語 1970年10月、トルコのイスタンブール。 男がハシシ(麻薬の一種)を平べったくつぶし銀紙に包む。それを幾つも並べてテープで自分の素肌の腹に巻く。アメリカ青年ビリー・ヘイズ(ブラッド・デイビス)は空港で恋人のスーザン(アイリーン・ミラクル)と落ち合う。 だがハシシを隠し持っていることは言ってはいない。ヘイズはトイレへ行く。緊張を鎮めるために顔を洗う。大きく息を吸う。心臓の鼓動が高まる。 パスポートのチェック、バスケットのチェックを終え、飛行機のタラップまでのバスに駆け込む。スーザンが待っていた。飛行機のタラップにバスが近づくと大勢の警備員が待機している。 スーザンを先に飛行機に乗せ、ヘイズはボディチェックを受ける。警備員がヘイズの腹部を触り服を剥ぎあげた。「爆弾だ!」 周りの警備員たちが色めき立ち拳銃を構える。「ハシシの運び屋だ」 一人がヘイズの腹を確かめて言った。 ヘイズは麻薬不法所持で逮捕された。 言葉も通じぬ係官に囲まれ、ヘイズは全裸になり取り調べを受ける。そんな時やって来たトルコ警察と手を組み麻薬ルートを追うテックス(ボー・ホプキンス)はヘイズが麻薬ルートに関係ないと知ると車で護送する途中言った。 「時機が悪かったな。ゲリラの爆弾事件が増えた。4日で4機やられた。トルコは今、ヘロインの密輸で非難を受けているのだ」 「ヘロインはやってない」とヘイズ。 「ヘロインもハシシも同じだ」 「今度が初めてでたった2キロだ」 「当局には2キロも200キロもいっしょだ、政府は汚名挽回に必死なのだ」 「サグマルチラー刑務所へ良く来た」 看守長のハミドウ(ポール・スミス)がヘイズを見据えて言った。 ヘイズが放り込まれた監房には毛布がなく、寒さに耐えかねたヘイズがよその房から毛布を持ち込んだことがハミドウ看守長に見つかり、ヘイズは裸にされた。ハミドウがヘイズの足の裏を棍棒で打ちのめした。 歩けないヘイズは同じアメリカ人青年の囚人ジミー(ランディ・クエイド)とエリック(ノーバート・ワイザー)の介護を受ける。ジミーは言う。「この刑務所に入れられたら半病人になるか深夜特急(ミッドナイト・エクスプレス)に乗るしかない」 「・・・?」 「刑務所用語で脱獄のことさ」 父親(マイク・ケリン)が面会に訪れた。「ごめんよ、父さん・・・」 「もういい、そのうちにぶん殴ってやる。それより早くここから出んとな、法廷ではきちんとしろ」 父親はイスタンブールでヘイズの服を買ってきていた。父親に同行してアメリカ領事のS・ダニエルスと太っちょの弁護士イシエルもいた。 「出来るだけ早く君が出所できるように努力する」 ダニエルスは言い、弁護士イシエルも「気がかりだろうが心配無用です」と愛想を振りまいた。 「世界に注目されるトルコは、全世界へのヘロイン提供者のように見なされ各国のテレビや新聞で報道されています」 検事が裁判長に向かって声を高める。 「裁判長!このような誤ったイメージを変えねば我々は孤立し、全人類から追放されかねないでしょう。わが国の麻薬密売者に厳罰を加えると同時にトルコの文化を害する不法外国人に対し今まで以上に厳しく処罰することを要求します!このアメリカ人に密輸罪の最高刑を宣告し、全世界にトルコの正義と麻薬撲滅の意図があることを示すべきです!ビリー・ヘイズには終身刑が当然であると思います!」 刑期は4年2ヶ月だった。「上出来だ」 弁護士イシエルは勝ち誇ったように言う。「検事の求刑は終身刑ですよ。それが4年2ヶ月です。模範囚になれば1年は減刑される」 しかしヘイズにしてみれば、たかがハシシの所持だけで4年とは気の遠くなるような長さだった。 ヘイズの過酷な刑務所生活が始まった。 1972年になった。ある日ジミーが広げたものは刑務所の青写真だった。 病棟送りになっていたとき、かってここの建設に携わったドイツの建築屋に金を掴ませて書かせたのだという。 それによると刑務所の壁に地下に抜けるトンネルがあり、その下に墓地まであるという。数千年前もの昔、キリスト教徒が作った坑道が沢山あるらしい。ジミーはミッドナイト・エクスプレスは力を合わせれば可能だと熱弁をふるう。 麻薬中毒の囚人マックス(ジョン・ハート)は無理な話だと難癖をつけた。ヘイズも気が進まない。残りの刑期は20ヶ月。捕まれば3年以上も喰らってしまう。 業を煮やしたジミーは結局屋根伝いに脱出を図ったが捕らえられて看守長ハミドウに殴られヘルニアになったあげく療養所に送られた。睾丸もつぶされていたという。 1974年6月。アメリカ領事のダニエルスが面会に来る。 「悪い知らせだ」 ダニエルスが切り出した。「裁判のやり直しだ。密輸で再審することを最高裁が認めた。前例にするつもりだ。君を生贄に・・・」 エイズは声も出ない。「35人の検事のうち28人の投票は終身刑なのだ、イスタンブールの地裁は従わざるを得ない」 エイズは格子越しにダニエルスの胸倉を掴む。「あと刑期は53日なのに、何で終身刑なのだ!」 エイズはダニエルスの首を絞め続けるが看守長ハミドウに引き離され掴み出された。 「何の罪だ!」 ヘイズは裁判のやり直しの際、声を荒げて思いのたけを述べた。「この国は時によって変わるらしいな。今日は合法でも明日は違法になる。特殊な社会だからだ。俺の人生のうち3年半の歳月をここの刑務所で過ごした。犯した罪は償ったと思う。前の判決ならあと53日の刑期だ。それを取り上げた奴がいる!」 ヘイズは指差し検察官を睨みつける。「あなただ!ここに立って今の俺の気持ちをたっぷり味わうがいい・・・どこの社会にも慈悲の心と公正さはあるものだ・・・あんたら豚だ!」 「ビリー・ヘイズはサグマルチラー刑務所にて30年の懲役刑に処す」 裁判長は平然と言い放った。 絶望的になったヘイズはマックスやジミーとともにミッドナイト・エクスプレスの道を探る。壁を注意深く叩いて音を調べる。すると音の違う部分があった。火かき棒でブロックの回りをけずると意外にもろく掘れる。ブロックを外すと壁にぽっかりと穴が開く。 「俺の言ったとおりだろ」 ジミーが胸を張った。 翌日、壁から坑道を垂直に降りる。下は下水道になっている。迷路のような下水道をたどっていくと行き止まりだ。もう明け方で時間がない。3人は一旦戻る。脱出口を見つけるまで毎晩挑戦するつもりだった。 しかし、囚人のリフキの通報で壁のブロックの抜け穴が看守長ハミドウに見つかってしまう。再びジミーが目を付けられ連れ去られた。 マックスは憤る。「あいつの喉をかき切ってやる」 ヘイズはマックスを鎮める。二人はリフキの隠し金をラジオの裏側から見つけ焼却炉で燃やしてしまった。 有り金を失ったリフキは怒り狂い、マックスをハシシの出所として看守長ハミドウに通報する。ハミドウは問答無用でマックスを連れ去った。 ヘイズはリフキを見て血が沸騰した。殴る蹴るを繰り返し、逃げ回るリフキを追い詰めリフキの口の中に自分の口をねじ込みリフキの舌を噛み千切った。 精神異常者専用第13区。7ヵ月後のヘイズはそこにいた。魂の抜け殻のようなヘイズ。髪と髭は伸び放題、目に光はない。周りは精神を侵された囚人たちが意味もなく歩き回る。マックスも廃人同様の姿で横たわっていた。 「面会人だ」 ヘイズが面会室に行くとそこへ来たのは恋人のスーザンだった。厚いガラスに阻まれた面会室。スーザンは言う。「皆、元気よ。バックレー議員が助命運動を始めたわ。あなたはアメリカとトルコ外交の犠牲者よ」 「脱いでくれ」 ヘイズは唐突に言った。「だめよ、ここじゃ」 「脱いでくれ、お願いだ」 何年も女から遠ざかっていたヘイズは動物のように哀願する。スーザンがためらいながらブラウスを脱ぐと乳房が露わになる。ヘイズはそそくさと自慰を始める。極みに達したヘイズは泣き始めた。「・・・愛してる・・・」 「・・・何もしてあげられない」 スーザンも泣いた。「どんなことがあっても頑張ってね、ここから出るのよ・・・」 スーザンが差し入れたアルバムの表紙裏に札が隠してあった。ヘイズは決心する。ミッドナイト・エクスプレスを決行するしかない。 「俺はここを出る、別れを告げに来たんだ」 ヘイズはマックスに言う。「ここにいたら死ぬ。必ず助けに来る。死ぬなよ」 ヘイズは精神異常者専用第13区から出る看守長ハミドウを追った。「ここに100ドルある、これで病院に入れてくれ」 ハミドウはニヤリと笑みを浮かべヘイズの差し出した100ドルをポケットにしまいこんだ。ヘイズの手を引き連れて行った先は病院ではなく別の部屋だった。 「お前はここで発狂するんだ」 ハミドウはヘイズを踏みつけ殴りつけた。「たっぷり可愛がってやる」 ハミドウがベルトを外しズボンを脱ぎかけたその時、ヘイズは猛烈な勢いでハミドウに体当たりを喰らわせた。ハミドウは壁に激突した。壁にある物掛用の金具がハミドウの首の後ろを貫き、ハミドウはくず折れた。 ヘイズはハミドウの拳銃を構えた。手が震える。しかしヘイズは引き金を引くのを思いとどまる。ハミドウは息絶えていた。 ハミドウの服と帽子を身に着けたヘイズは、何食わぬ顔でサグマルチラー刑務所の戸を開け外界に出た。ヘイズの【ミッドナイト・エクスプレス】は何年ぶりかで自由な世界の空気に向けて疾走した。 1975年10月4日の夜、ビリー・ヘイズはギリシャへ入り、3週間後、ケネディ空港へ着いた。 1978年5月18日、この映画はカンヌ映画祭で公開され、その43日後、米国とトルコは囚人交換の協定を結んだ。 |
| 映画館主から 実話を元にスリリングなタッチで描いたアラン・パーカーの脱出劇。 映画の冒頭からラストの脱獄に至るまで心臓の鼓動が聞こえるような緊張の連続。トルコの刑務所内部の詳細な描写。残忍な看守長の仕打ち。 ニクソン政権下での米国とトルコの政治の犠牲となった青年を通して、罪とは何か、罰とは何か、自由とは何かを問いかけます。 主役のビリー・ヘイズに新人のブラッド・デイビス。容貌が若き日のマーロン・ブランドを彷彿させます。かなりの熱演なのですがその後の彼の映画には出会っていません。 麻薬中毒の囚人に「エイリアン」(’79年)や「エレファント・マン」(’80年)の性格俳優ジョン・ハート。彼は本当にそうかも、と思えるほどに演技が巧いのでうなってしまいます。 監督のアラン・パーカーは、「ダウンタウン物語」(’76年)に続く第二弾の本作で社会派監督として頭角を現し、現在に至ります。 「バーディ」(’85年)、「ミシシッピー・バーニング」(’88年)、「愛と哀しみの旅路」(’90年)などどれも印象深く記憶に残ります。 「エンゼル・ハート」(’87年)という異色オカルト作品も手掛けています。 脚本のオリバー・ストーンはこの後、「サルバドル 遥かな日々」(’86年)で監督デビューし、「プラトーン」(’86年)、「ウォール街」(’87年)、「7月4日に生まれて」(’89年)、「JFK」(’91年)、「天と地」(’93年)と社会派監督として精力的に活躍しています。 参考文献:公開時パンフレット |
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