「波止場」
波止場 1954・米
波止場

製作:サム・スピーゲル
監督:エリア・カザン
原作:脚本:
    バッド・シュルバーグ
撮影:ボリス・カウフマン
音楽:レナード・
バーンスタイン

出演:マーロン・ブランド
    エバ・マリー・セイント
    リー・J・コップ
    ロッド・スタイガー
    カール・マルデン
    パット・ヘニング




リー・J・コップ(左)とマーロン・ブランド

ロッド・スタイガー(左)とマーロン・ブランド

マーロン・ブランドとエバ・マリー・セイント

波止場
物語

ニューヨーク港の波止場。ここは多くの沖仲士たちが船荷の運搬の仕事に従事していた。
しかし、最近は、港湾組合のボス、ジョニー(リー・J・コップ)が幅を利かせていた。沖仲士たちは彼の采配に身をゆだねるしか能がない。ジョニーに睨まれると仕事にあり付けないのだった。

ある夜、ジョニーの子分、ボクサーくずれのテリー(マーロン・ブランド)の誘い出しで、ジョーイが屋上に上がって行き、ジョニーの子分に突き落とされて死んだ。
テリーは、兄のチャーリー(ロッド・スタイガー)に食って掛かる。「俺はジョーイを少し痛めつけるだけと思った。殺すことはない、ジョーイはいい奴だった」 「だがな、奴は密告屋だった。一杯おごろう」兄はそう言ってテリーをなだめた。

ハリー神父(カール・マルデン)はジョーイの死体に祈りをささげる。傍らでジョーイの妹イディ(エバ・マリー・セイント)が泣き崩れている。

町の教会でハリー神父が熱弁を振るっていた。「誰がジョーイを殺したか。君たちは真相を究明せずに一人一人殺されていくのか」
イディと数人の男たちが集まっていたが、皆だんまりだ。テリーがジョーイの命令で教会へ入ってきていた。余計な発言をする人間を見張っているのだ。
その時、教会の窓ガラスが割られ、ジョニーの手下たちが侵入してきた。逃げ惑う労働者たちをぶちのめす。
テリーはそこに来ていたイディを連れ裏口から脱出する。

イディの父親は娘に言う。「ボスの右腕、殺し屋チャーリーの弟のテリーと腕を組んで歩くとは何事だ」 「テリーは強がっているだけだわ。目でわかるの」
娘のイディを学校の先生にするために苦労している父だが、イディは決然として言う。「あんな不正を見て本に集中できると思う?誰が犯人なのか突き止めるわ」

テリーがイディを酒場に誘う。イディはテリーを根っからの悪ではないと信じたかった。
「何故ボクサーに?」 「同じ殴り合いでも金になるからな。オヤジが殺されて、兄貴と私設に入れられ、逃げ出してモグリ試合をしている時、ボスのジョニーに買われたんだ」
イディは意を決して言った。「お願い、手を貸して」 「ジョーイのことをつつくのはやめろ、学校へ帰りな」「ジョーイを殺したのは、ジョニーとチャーリーね、あなたも仲間だから言えないんだわ。・・・やっぱり、あなたはクズだわ」


ジョニーはテリーに凄む。「あの女と歩くな。死にたくなきゃな」
そして、ドーガンという労務者が荷役作業中に落ちてきた荷の下敷きになって死んだ。明らかにジョニーの指図だった。ドーガンもジョニーの悪事に敵意を持っていたのだ。

ハリー神父がドーガンを弔った。彼は叫ぶ。「私はドーガンと約束した。彼と共に立ち上がり、暴力団と戦うと」 船の上からジョニーとチャーリーが苦々しく見ていた。
テリーもハリー神父の近くで聞いていた。テリーはハリー神父の演説を阻止しようとしたジョニーの手下を殴り倒した。イディははっとしてそれを見た。
テリーに変化が起きている。

夜、屋上にいるテリーのところへイディがやって来た。言葉少なに自然とキスを交わす二人。

タクシーの中で、チャーリーはテリーを諭す。テリーが密告する危険があったからだ。しかし、テリーは言った。「あの時、兄貴が八百長試合を頼まなかったら、俺はこんなクズじゃなく、いっぱしの選手になっていた」
チャーリーにも弟に対して過去の負い目があった。「ジョニーにはテリーが見つからなかったと言おう」
だが、二人の話を聞いていた運転手はジョニーの息の掛かった者だった。

兄チャーリーの説得を振り切ったテリーは、すさんだ心でイディの部屋に行く。
「愛してると言ってくれ」 テリーはイディに迫った。その時、外から声が聞こえた。
「テリー、兄貴が会いたいと言ってるぞ」 ジョニーの手のものだ。
何かが変だ。外階段から道へ降りるテリーをイディも追った。狭いビルの谷間をライトを点けた車が突進して来た。危うく脇に避けて車をやり過ごす。
その先のビルの壁にチャーリーの死体がぶら下がっていた。
テリーの怒りが爆発した。「思い知らせてやる」イディは言った。「よそへ逃げましょう、殺されるわ」

拳銃を手にしたテリーが酒場へ来た。ジョニーの手下達を座らせる。ハリー神父がイディの報せで入ってきた。拳銃を持つテリーを殴りつける。
「鉛玉をぶっ放してどうする。ボスをやりたいんだったら、与太者の真似はよせ、連中の思う壺だ。法廷で戦え、事実を話すんだ」

法廷で、テリーはジョーイを誘い出したこと、その後、ジョニーの指図で殺されたことを証言した。ジョニーは憎悪に燃えテリーを睨みつけた。
その後、屋上に上ったテリーは、可愛がっていた少年から「密告屋!」とののしられショックを受ける。鳩小屋の鳩も無惨に殺されていた。

翌朝、テリーはジョニーの事務所の前に行った。多くの港湾労務者たちがテリーの後に続く。
「この裏切り者めが!」ジョニーがドアの外に出て凄んだ。「俺が今まで裏切っていたのは、自分だった。お前はジョーイにドーガン、それに兄貴まで殺した!」 テリーは叫び、ジョニーに飛び掛っていく。殴りあう。ボクサーには敵わないと、ジョニーは手下を呼んだ。
屈強の男たちがテリーに掴みかかった。労務者たちは手が出せない。そこへハリー神父がイディと駆けつけた。テリーは事務所の裏で倒れていた。ハリー神父とイディに起こされるテリーは血だらけだった。
そのテリーに向かって労務者達が叫ぶ。「テリーが来れば、俺たちも行くぞ」
ハリー神父の顔が輝く。「聞いたか、テリー、歩けるか」

ふらつきながら立ち上がるテリー。目がかすむ。やっとの思いで作業船の入り口にたどり着く。待ち受けていた港湾責任者の「よし、仕事だ!」の声でテリーが入って行く。そして、ジョニーの制止を無視して労務者たち全員がテリーに続いた。
ハリー神父とイディは男たちの姿を見て、腕を組むのだった。
映画館主から

エリア・カザン監督の力強い社会派ドラマの傑作。

港湾組合を牛耳るボスの子分でありながら、悪徳に抵抗し、真実の姿に目覚めて立ち上がる元ボクサーの物語です。
カザン演出の重厚なモノクロ画面はリアリティがあり、港湾組合の暗部をドキュメンタリータッチで描き出しました。

元ボクサーのテリーにマーロン・ブランドが扮し、圧倒的な演技でアカデミー主演男優賞を獲得。その他、作品、助演女優賞(エバ・マリー・セイント)、監督賞、脚本賞、撮影賞、編集賞、美術賞と、主要8部門を独占しています。

テリーの兄にロッド・スタイガー、悪徳ボスにリー・J・コップ、神父にカール・マルデンと、曲者揃いでドラマに厚みを出しました。
特にリー・J・コップの悪役は憎らしくなるほどはまっています。

「欲望という名の電車」’51年、「革命児サパタ」’51年で、カザンはマーロン・ブランドを世に送り出して、この「波止場」で決定打を放ったといえるでしょう。
そして翌’54年に「エデンの東」でジェームス・ディーンを鮮烈デビューさせるのです。

カザンは貧しいユダヤ系ギリシャ移民の出身。第二次大戦後のハリウッドの“赤狩り”の洗礼を受け、屈折した時代を耐え忍んできました。
その傷痕は様々な作品に又、主人公の生き方にも反映しているように思われます。

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