「オリヴァ・ツイスト」
オリヴァ・ツイスト 1947・英
 「オリヴァ・ツイスト」左からフェイギン、サイクス、ナンシー

製作:ドナルド・ニーム
監督:デビッド・リーン
原作:チャールズ・ディッケンズ
脚本:デビッド・リーン
    スタンリー・ヘインズ
撮影:ガイ・グリーン
音楽:アーノルド・バックス
    ミュア・マシースン

出演:アレック・ギネス
    ロバート・ニュートン
    ジョン・ハワード・デイビス
    ケイ・ウォルシュ
   ダイアナ・ドース

フェイギン(アレック・ギネス)

ナンシーは秘密を知る

オリヴァ・ツイスト

「オリヴァ・ツイスト」のジョン・ハワード・デイビス
物語

19世紀初頭のロンドン郊外。嵐の中を一人の若い女がずぶ濡れになり、ふらつきながらある救貧院にたどり着いた。女は身篭っていた。女は男の子を出産し、見取った老婆に一言言い残し、そのまま死んだ。老婆は女の首の金の首飾りを自分のポケットにしまいこんだ。

男の子はオリヴァと名づけられ、多くの孤児たちと共に成長していった。
9歳になったオリヴァ(ジョン・ハワード・デイビス)は、ある日教区役人のバンブル(フランシス・サリバン)に呼ばれ奉公に出された。
そこは葬儀屋の家だった。冷酷そうな女主人は痩せこけて貧相なオリヴァを見ていうのだった。「犬の分をその子におやり!」
オリヴァの風貌は葬式の場にふさわしい悲しみをたたえており、葬儀屋にとって好都合なのだ。

ある日、兄貴分のノアから母親の悪口を言われたオリヴァは、ノアに馬乗りになって殴りつけた。オリヴァはお仕置きに石炭小屋へ入れられる。女主人は教区役人のバンブルを呼び、いまいましく言った。「母親の歪んだ性格を受け継いだのでしょう」

夜、オリヴァは葬儀屋を逃げ出した。大都市ロンドンをさ迷う。
雑踏の中を歩いていたオリヴァは、ドジャーという少年に呼び止められ、誘われるままついて行った。薄汚れた建物の上の方に行くとそこはフェイギン(アレック・ギネス)の支配する泥棒の巣窟だった。フェイギンは浮浪児を集めては彼らにスリをさせ、上前をはねているのだった。

ドジャーたちと街へ出たオリヴァは、ドジャーが一人の老紳士から盗もうとしているのをハラハラして見ていた。
「泥棒だ!泥棒だ!」突然、声がしてドジャーたちが逃げ出した。オリヴァも逃げる。ドジャーたちがどこかへ消え、今追われているのはオリヴァだった。
目の前からこぶしが飛んできてオリヴァは失神した。

警察で取り調べを受けるオリヴァ。「この子ではない」立ち会った老紳士ロバート・ブラウンロー(ヘンリー・ステファーソン)は言った。「怪我をしてるじゃないか、乱暴しないでくれ」

フェイギンは怒り狂っていた。オリヴァが警察に捕まったとあっては、この隠れ家も危ない。そこへ、悪仲間のサイクス(ロバート・ニュートン)が情婦のナンシー(ケイ・ウォルシュ)とやって来た。ナンシーが警察へオリヴァの様子を見に行った。
尋問されているうちにオリヴァは倒れた。ブラウンローはオリヴァを馬車に乗せて家に向かった。

オリヴァは邸宅のベッドで目を覚ました。ブラウンローは優しかった。夫人も慈愛の篭った眼差しをオリヴァに向けた。何と言う暖かい人たちなんだろう。オリヴァは生まれて初めて幸せを実感していた。
初めて食べる美味しい食事に舌鼓を打つオリヴァ。

ナンシーの報告を受けたフェイギンたちは盗品をまとめ、巣窟を逃げ出した。
救貧院長になっているバンブルのもとへ役人マンクスが現れた。
「葬儀屋へ出したオリヴァの母親のことで知りたいことがある・・・」
以前、オリヴァの母親が死ぬのを見取った老婆がやって来て死ぬ間際に言った話・・・あれは・・・。真実だとすれば、オリヴァは貴族ロバート・ブラウンローの孫ということになる!

ブラウンローの広い書斎に並ぶ本を見て目を見張るオリヴァ。書斎の壁に掛かった若い女性の肖像画が気になるオリヴァ。
「奇麗な人ですね」 「ああ、奇麗だった」 ブラウンローの顔がこころなし翳った。肖像画はブラウンローの娘で10年前に駆け落ちして行方不明だったのだ。
オリヴァが本を街の本屋まで返しに行くことになった。「あの子は帰ってこないよ」遊びにきていたブラウンローの友人は言ったがブラウンローはかぶりを振った。「必ず帰ってくるさ」 ブラウンローには何故かオリヴァが他人とは思えないのだった。

本を持って街へ出たオリヴァは、たまたま通りかかったサイクスとナンシーに見つかり、フェイギンの新しい巣窟へと連行された。フェイギンとサイクスはオリヴァに泥棒をさせようと企んだ。ナンシーは自分も幼いころから泥棒をさせられていた暗い記憶から、オリヴァに同情的だった。

帰ってこないオリヴァーを心配したブラウンローは、街に張り紙を出した。
『オリヴァー・ツイスト行方不明 発見した者に5ギニー』
酒場でマンクスとフェイギンの話を盗み聞きしたナンシーは、張り紙を見てブラウンローをロンドン橋に呼び出した。
「オリヴァの居場所を知っています。明日の昼、ここへ連れてきます。オリヴァは貴方のお孫さんですよ」 ブラウンローの驚きは頂点に達した。
しかし、ナンシーの挙動に不信感を持ったフェイギンの指示でその様子をドジャーが近くで聞いていたのだ。

ドジャーからの報告を受けたフェイギンはサイクスに話した。サイクスは怒り心頭に発し急ぎねぐらに帰ると寝ていたナンシーを叩き起こした。
「裏切り者め!」サイクスは燭台でナンシーを殴りつけ殺してしまった。サイクスの飼い犬が怯えて悲痛な叫び声を上げた。

翌日の昼、ロンドン橋でオリヴァがくるのを待っていたブラウンローは、「人殺しだ!人殺しだ!」の声で、警官の後を追った。ブラウンローが確認した死体は昨日会ったナンシーだった。
さっそく、サイクスと仲間のフェイギン、マンクスの捜索が開始された。
マンクスはほどなく捕らえられ、一味の巣窟へ案内させると、そこはもぬけの殻だった。
その時、けたたましく咆える犬がいた。サイクスの犬だ!「犬を追え!」

フェイギンの新しい棲家へ逃げてきたサイクスを少年たちは白い目で見た。「こいつは人殺しだ」 けたたましい犬の鳴き声で窓を開けると、外に警官隊と松明を掲げた群集が押し寄せていた。彼らは門を叩き破って侵入し、フェイギンを逮捕した。
「俺は逃げてみせるぜ」 サイクスはオリヴァを連れ、屋根の上に逃げた。
「助けて!助けて!」 オリヴァの叫びが下に届いた。群集の中にブラウンローがいた。「孫を助けてくれ!」
その時、警官隊の狙った銃弾がサイクスを捕らえ、サイクスは転落していった。

晴れてオリヴァ・ツイストは、祖父の家へ迎えられた。祖母の目は慈愛に濡れていた。
映画館主から

デビッド・リーン監督の初期の作品で、ディッケンズものとしては、「大いなる遺産」に次ぐ2作目となります。
孤児として産まれたオリヴァ・ツイストの波乱に満ちた少年時代のお話です。
カメラワークは群を抜いており、冒頭の嵐の場面から始まり、孤児院の貧しい生活や19世紀のロンドンの街で息づく人々の様子が見事に再現されています。

浮浪児たちにスリをさせる悪党フェイギンに「戦場にかける橋」(’57年)のアレック・ギネス。その仲間の更に悪党サイクスに「邪魔者は殺せ」(’47年)のロバート・ニュートン。
特にアレック・ギネスは、リーン作品初期の「大いなる遺産」から、大作「戦場にかける橋」(’57年)、「アラビアのロレンス」(’62年)、「ドクトル・ジバゴ」(’65年)、晩年の「インドへの道」(’84年)に至るまで欠かせない役者でした。フェイギンに扮した彼は、鼻を尖らせまるで魔法使いのような形相でした。彼の百面相ぶりは知る人ぞ知るところです。

オリヴァ・ツイスト役のジョン・ハワード・デイビスは、その後成人して映画監督になったようですが、詳しいことは分かりません。

文芸作品の持つ格調を映画として更に高めたデビッド・リーンの功績は、永遠に語り継がれるでしょう。

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