「反撥」
反撥 1965・英


監督:脚本:
    ロマン・ポランスキー
脚本:ジェラール・ブラッシュ
撮影:ギルバート・テイラー
音楽:チコ・ハミルトン

出演:カトリーヌ・ドヌーブ
    イボンヌ・フルノー
    ジョン・フレーザー






物語

ベルギーのブリュッセルからロンドンに移住して来た姉妹、キャロル(カトリーヌ・ドヌーブ)と姉のヘレン(イボンヌ・フルノー)は、美容室に勤めていた。

外国からの出稼ぎの二人には知人が少ない。だが、ヘレンには愛人マイケルがいてアパートに良く泊まっていく。そして、その度にキャロルは隣室の情事を聞かされるのだった。

キャロルに思いを寄せる男コーリン(ジョン・フレーザー)がいた。彼は熱心にキャロルをデイトに誘うがキャロルはつれなかった。

ある朝、キャロルが洗面室に行くと、自分のコップにマイケルの歯ブラシが入っていた。キャロルは不潔感にゾッとした。「あの人、毎晩来るの?・・・奥さんがいるのに・・・」 キャロルがヘレンに言うと、「あなたに関係ないわ」と一蹴された。

マイケルはヘレンに言った。「あの子は僕が嫌いらしい」 「感じやすい年頃なのよ」とヘレン。
その夜もキャロルは隣室の様子に身悶えするのだった。

キャロルがコーリンとの食事の約束を忘れて歩いている所をコーリンが見つけて近づいた。「1時間も待ったぞ」 キャロルの様子がおかしい。
「何か変だな・・・気のせいかな」 「私にも解らないの・・・」 アパートまで送ったコーリンがキャロルにキスした。瞬間、キャロルは不意に車を飛び出し、アパートへ帰る。歯を磨く。姉の男の歯ブラシをゴミ箱に捨てる。

翌朝、ヘレンはマイケルとイタリア旅行に出かけた。キャロルは美容室へ行っても何か生気がない。ただぼんやりしているのみだ。皆は心配してキャロルをアパートへ帰した。

アパートへ帰っても、キャロルは精彩なかった。冷蔵庫のウサギの肉が腐りかけていた。
孤独な夜を迎えた。足音が空恐ろしい。そして、誰か荒々しい男に犯される夢を見た。電話が鳴った。キャロルが出ると「僕だ・・・」コーリンだった。電話を切るキャロル。

翌日、美容室でキャロルはぼんやりしていて、うっかり客の手を傷付けてしまった。再び帰される。
アパートへ帰ったキャロルは幻覚に襲われた。壁に突然亀裂が走る。
ドアの呼び鈴が鳴る。コーリンがドアの前に立っていた。キャロルが開けようとしないので、コーリンはドアを押し破って入った。「ごめんよ・・・一緒にいたいんだ」 キャロルは黙っている。そしてキャロルの次の行動は異常だった。手にしていた置物でコーリンの後頭部を打ち付けたのだ。続けて何回も・・・。倒れたコーリンの頭から血が溢れた。

ドアに板を打ち付ける。コーリンの死体を引きずってバスに入れるキャロル。
又、幻覚が・・・突然、壁から手が延びてキャロルの乳房を掴む。
ドアの呼び鈴がした。大家が滞納していた家賃を取りに来たのだ。キャロルは黙っている。「居るのはわかってるんだ」 大家がドアをこじ開けて入って来た。「何故、板を打つ?」 キャロルは黙って姉から預っていた家賃を大家
を渡すと大家は急に態度を軟化させた。そしてキャロル一人だと知ると、「寂しいのか?」とキャロルに擦り寄っていく。キャロルは後ろ手に剃刀を持っていた。キャロルを抱こうとした時、キャロルの剃刀が大家の首筋を引き裂いた。キャロルは倒れている大家に執拗に剃刀で斬りつけるのだった。

壁から無数の手が延びる。手がキャロルに襲い掛かる。

ヘレンとマイケルが旅から帰って来た。アパートの部屋は悪臭に満ちていた。二つの死体とともに気の触れたキャロルがベッドの下に呆然と横たわっていた。
映画館主から

ロマン・ポランスキーの描いた背筋も凍る狂気の世界。

思春期の少女の性に対する期待と嫌悪を日常生活の中に淡々と表現しています。説明が少なく、会話も少なく、モノクロ映像の暗い映画です。

コップの歯ブラシ、腐ったウサギの肉、壁に亀裂、壁から出現する手、剃刀などの視覚に飛び込む映像で、主人公が次第に狂気に苛まれていくのを見せ、我々を不安の世界へ引きずり込んでいきます。

フランスを代表する美人女優カトリーヌ・ドヌーブはこの時22歳。「シェルブールの雨傘」’64の可憐さが印象に残っていたので「反撥」のドヌーブにはゾッとしたものです。

母親をアウシュビッツの収容所で亡くしたポランスキーは、一貫して不安におののく人間心理と孤独をテーマに作品を発表してきました。
愛妻シャロン・テートが惨殺されるという悲劇に見舞われたことも彼の心に大きな傷を残しましたが、ヨーロッパで活躍中と言われています。

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