「ロープ」
ロープ 1948・米

ロープ

製作:シドニー・L・バーンスタイン
製作:監督:
    アルフレッド・ヒッチコック
脚本:アーサー・ローレンツ
撮影:ジョゼフ・バレンタイン
    ウィリアム・V・スコール
音楽:レオ・F・フォーブスティン

出演:ジェームズ・スチュアート
    ファーリー・グレンジャー
    ジョン・ドール
    
サー・セドリック・ハードウィック



物語

夕暮れのマンハッタン。高層アパートの一室でたった今、殺人が行われた。
二人の青年が友人の首をロープで締めて殺したのだ。そして、死体を部屋の隅にあった衣裳箱の中に押し込んだ。

殺人を行った二人は、ショウ・ブランドン(ジョン・ド−ル)と、フィリップ(ファーリー・グレンジャー)だ。
特に動機があった訳ではない。“超人は凡人を殺すことが許される”という、理不尽な思想に取り付かれたブランドンにフィリップが同調し、友人の一人、デビッドを殺し、完全犯罪への第一歩を歩みだしたのだった。

これからパーティーが予定されていた。デビッドの父親も招待客に入っていた。
気の弱いフィリップは殺人の興奮からさめず落ち着かない。その上、ブランドンは死体の入った衣裳箱の上にクロスをかけ、食台にしようと、自分の思いつきに悦にいっていた。

家政婦のミセス・ウイルスンが使いから戻り、パーティーの準備を始めた。
ブランドンからルパート・キャデル教授(ジェームズ・スチュアート)も来ると聞いて動揺した。キャデル教授は彼らに心理学を教えた人物である。ブランドンにしてみればキャデルだけが、この“超人思想”を理解できる唯一の人物だった。

最初に来たのは学友のケネス・ローレンスだった。続いてデビッドの婚約者ジャネットがやって来た。そして、デビッドの父親ヘンリー・ケントリー(サー・セドリック・ハードウィック)が現れた。彼は初版本収集家としても知られる金持ちだ。

パーティーが始まった。落ち着かないフィリップがピアノを弾きはじめた。その時、何時に間にかキャデル教授が立っていた。
食べ物が衣裳箱の上に運ばれる。ジャネットはデビッドが遅いのを気にしだした。

殺人是非論がひとしきり戦わされた。キャデルとブランドンが熱っぽく持論を主張した。ケントリーはその話題が耳障りだった。デビッドはまだ現れない。
ケントリーが家に電話をかけると言いだし、ブランドンは初版本を持ってくると言い、席をはずした。
フィリップのピアノの前に座っていたキャデルが言った。
「悦にいってるのはブランドンだけだね。ただのパーティーじゃないようだ」フィリップはピアノの手を止めた。

その時、ケントリーとブランドンが部屋に入ってきたが、ブランドンの持っている数冊の本は殺人に使ったロープで縛ってあった。ブランドンは誇らしい表情である。

ケントリーはデビッドのことが気になり帰り支度を始めた。皆も引き上げることにした。ケントリーのロープで縛った本を持ってやったキャデルは家政婦の差し出した帽子をかぶってみたが、サイズが合わないので何気なく帽子の内側を見てハッとした。

皆が帰るとブランドンは勝利に酔いしれた。フィリップは気を紛らわそうと立て続けに飲んだ。

その時、キャデル教授が忘れ物をしたと言って戻って来た。そして、ブランドンたちを問い詰めていく。帽子の内側にデビッドの名前があったのだ。そして、彼はポケットから例のロープを取り出した。
敗北を悟ったブランドンは衣裳箱を示した。キャデルは衣裳箱の中を見て悲嘆にくれた。

マンハッタンはすでに濃い闇に包まれていた。


映画館主から

まるでドストエフスキーの「罪と罰」を彷彿とさせるような内容の舞台劇の映画化ですが、ヒッチコックは大胆な実験をしています。

“10分間撮影”というのがそれで、映画のフィルム一巻にあたる10分をノーカットで撮影し、それを81分の全編を繋ぎ全編ノーカットで、“編集”がいっさいされていないように見せようとしているのです。

巻のつなぎ目は、画面を横切る人間の背中のアップや、物陰にカメラを入れるなど工夫しています。
従って、撮影は綿密な計算のもとに組み立てられ、人物をリレー式に追ってパンしたり、部屋を移る場面はセットを取り外したり、組み立てたりで大変な苦労をしたようです。

したがって物語の進行時間と映画の時間はぴったり同じです。しかしながら、映画の持つ時間と空間の編集という最大の武器を放棄しているわけですから、さすがのヒッチコックもスリルとサスペンスはいまいちでした。

しかし、窓の外のマンハッタンの摩天楼が夕暮れから夜のネオンにかわるまでのひと時、殺人ゲームに時を忘れさせてくれる一篇でした。



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