「七人の侍」
七人の侍・前編 ’54・東宝  


製作:本木荘二郎
監督:黒澤 明
脚本:黒澤 明
    橋本 忍
    小国英雄
撮影:中井朝一
美術:松山 崇
録音:矢野口文雄
照明:森 弘充
音楽:早坂文雄
時代考証:江崎孝坪

出演:志村 喬
    三船敏郎
    木村 功
    加東大介
    宮口精二
    稲葉義男
    千秋 実
    
    高堂国典
    左 ト全
    小杉義男
    藤原釜足
    土屋嘉男
    津島恵子
    島崎雪子
    渡辺 篤
    東野英治郎 
    山形 勲
    上田吉二郎
    多々良純
    清水 元
    ほか多数
物語

野武士の群れが峠の下の村を見下ろしていた。
「やるか・・・この村も」「待て待て、去年の秋、米をかっさらったばかりだ。今、行っても何もあるめえ」「よーし、あの麦が実ったら、又、来るベえ」・・・

時は戦国時代。野武士の横行は毎年、農民達の生活を脅かしていた。戦って勝てる相手では無いが、若い利吉は何故か戦うことを主張した。
「やるべす!」との長老儀作の一言で方向が決まった。「そら、無茶だ!」と万造。「侍、雇うだ!」儀作は続けた。「お前らの村が焼かれてこの土地に逃げて来る時に見ただ。焼けてねえのは、侍雇った、その村だけだった」「・・・百姓のために戦う侍があるべか、侍は気位が高いだぞ!」儀作は言った。「腹の減った侍、探すだよ。腹が減りゃ、熊だって山おりるだ・・・」

かくして、万造、茂助、与平、利吉の四人は侍探しの旅に出た。しかし、侍は気位が高く、百姓のために一肌脱ごうなどと言う物好き者がそうそういる筈は無い。
そんな時4人は、事件に遭遇した。一人の侍が頭を剃り、僧から袈裟を借りると、握り飯を二つ手にして納屋へ近づいた。盗賊が子供を人質に納屋に立てこもっていて、皆、為すすべが無かったのだ。
「腹が減ったろう」と握り飯を中へ投げ込んだ瞬間、侍は納屋の中へ飛び込み、盗賊を倒したのだ。

つるつる頭を撫でながら勘兵衛が街道を歩く。後を追う四人の百姓。弟子にして欲しい勝四郎、それに、長刀を担いだ菊千代。

木賃宿で四人からの話を聞いた勘兵衛だが、
「出来ぬ相談だな」しかし、その目は必死に考えを凝らしていた。「どう少なく見積もっても・・・わしを入れて七人・・・」そのうちに、しょげ返っている百姓を見て、人足が悪態をつき出した。「死んじめえ、死んじめえ、その方が楽だぜ」「下郎!口をつつしめ!貴様らにはこの百姓の苦衷が解らんのか!」と勝四郎。「ヘン。笑わしちゃいけねえ、解ってねえのはお前さんたちよ」「なに!」「解ってたら助けてやったらいいじゃねえか」
この争いに割って入った勘兵衛、人足からめし椀を受け取り言うのだった。
「このめし、おろそかには食わぬぞ!」4人の顔が輝いた。勘兵衛は百姓達の願いを聞き入れたのだった。

勘兵衛を頭に、五郎兵衛、平八、七郎次、久蔵、勝四郎、それに菊千代と、七人の侍が集まった。

万造達と七人の侍が部落へやって来ると、皆、家の中に閉じこもって迎えにも出ない。侍に怯えているのだろうか。こんなことで、侍と百姓が野武士と戦えるのか。水車小屋の長老、儀作の所へ相談に行く。
「村の者は我々の何を恐れているのかな」と勘兵衛。儀作はただ目をつぶっていた。「・・・・・・・・・・・」
と、その時、激しい板木の音が鳴り響いた。
「カン、カン、カン、・・・」野武士が来たと侍達が走る。村の広場は飛び出して来た村人でごった返した。「お侍様〜、お侍様〜」 「うろたえるな!」勘兵衛が一喝。「野武士を見た者はこれへ出ろ!」誰も出ない。「では板木を打った者は誰だ!」 「俺だァ!」菊千代が踊り出た。
「やい!抜作ッ!」と菊千代。「俺達が村へ来た時、おめえ達はどんな面で出迎えた? そのくせ、俺が一寸板木ぶっ叩いたら・・・お侍様〜、お侍様〜・・・フン・・手合わして拝んでけつかる!」その時、百姓達の群れが二つに割れ、杖をついた儀作が現れた。菊千代「爺い、なんか文句あるのか?」儀作「これでええ!」 百姓達と侍達の奇妙な結合の場がそこにできたのである。

勘兵衛は村の地図を作り、東西南北を検分する。百姓達は四組に分けられ、戦闘訓練を開始した。馬止めの柵作りの七郎次組。竹槍の訓練をする久蔵組。実践の心得を聞かせる平八組。整列させ檄を飛ばす菊千代組。「写真(1)」

まだ若い勝四郎は裏山の花の中で寝て、花の香りを胸一杯に吸い込んでいると、人の気配に飛び起きた。花を摘んで手に持った志乃の姿があった。侍と百姓の娘の許されぬ恋がここから始まる。「写真(2)」


「大漁、大漁!」
菊千代が鎧や兜に身を包み、その後を百姓達が運んできた刀、弓矢の数々。「どこから持ってきた!」勘兵衛の顔が険しくなった。「上物だぜ」と菊千代。「それでも侍か!この鎧は百姓が侍を突ッ殺して手に入れた品物だぞ!」と七郎次。「まあ待て、落ち武者になって、竹槍に追われた者でなければこの気持ちはわからん」と勘兵衛。無口の久蔵までが「俺はこの村の奴らが斬りたくなった!」と吐きすてた。・・・・・・・・・・場が重苦しく白けきった。
突然、菊千代が立ち上がった。
「ハハハ・・・・こいつァいいや」いつに無く真剣な眼差しである。「一体、百姓を何だと思ってたんだ?神様だとでも思ってたか?・・・・百姓位悪びれした生き物はねえんだぜ!」菊千代は、生きるための百姓の行為をなじる侍達を攻め立てた。「・・・・そんな、けち臭いけだもの作ったのは誰だ?・・・お前達だぜ!侍だってんだよ!」菊千代は泣いていた。狂ったような絶叫だった。「・・・・百姓はいったいどうすりゃいいんだよう・・・」  やがて、「貴様、百姓の生まれだな?」と勘兵衛が言うと、菊千代はうろたえて出て行った。「写真(3)」




               「七人の侍」 後編へ
 
(1)百姓達に檄を飛ばす菊千代

 
(2)勝四郎と志乃の出会い

(3)絶叫する菊千代

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