「探偵スルース」
探偵スル−ス 1972・英


監督:ジョゼフ・L・マンキウィッツ
原作:アンソニー・シェ−ファー
撮影:オズワルド・モリス
音楽:ジョン・アディスン

出演:ローレンス・オリビエ
    マイケル・ケイン







  
物語

ロンドン郊外の推理作家・アンドルー・ワイクの大邸宅へ美容師・マイロ・ティンドルが訪れた。アンドルーから招待の手紙を受け取ったからだ。邸宅の庭は巨大な生垣の迷路が作ってあった。
初対面のマイロは家の中へ招かれると、アンドルーは開口一番、
「君は家内のマーガリートと結婚したいのかね?」と切り出した。マイロはアンドルーの妻と恋愛関係にあったのだ。「望んでいます」とマイロ。
妻のマーガリートは親戚の家へ遊びにいって留守。召使夫婦には休暇を取らせてあった。広い屋敷の中で、二人だけのゲームが始まった。

「この部屋の中に宝石が隠してある。君はそれを盗め」 「・・・・!」 「あるルートで換金できる。17万ポンドにはなる。その金で、マーガリートと海外で暮らせ!私は、盗難届を出し、保険金をもらう。そして、愛人のティーアと暮らす。17万ポンド稼ぐのは美容師ではことだぞ」

マイロは半ば、アンドルーのゲームに乗った。部屋の中を見渡した。様々な人形が電気仕掛けで動いた。ダーツボードに目を付けた。マイロが矢を投げた。真中に命中すると蓋が開いた。
「お見事!」アンドルーは言った。「その中に宝石がある。今度はそれを盗むんだが・・・・・」 アンドルーはマイロを地下室へ連れて行き、ピエロの扮装をさせた。「イギリス風のユーモアが必要だ。外から忍び込め」
マイロは外から梯子をかけ、窓ガラスを割って忍び込む。ピエロはアンドルーの言うまま、部屋を荒らした。ダーツボードの奥に宝石箱があった。中にイヤリング、ネックレスなど高価そうな輝きがある。

アンドルーがマイロにピストルを向けた。
「これで、私が君を殺す舞台が出来た」 「冗談は辞めてください!」 「バン!」銃弾がマイロの近くで弾けた。「本気だ。私が家内も宝石もやると信じたのか!私はそんなお人好しでは無い!」
「助けてくれ、許してくれ・・・」
階段のマイロは懇願した。しかし、アンドルーの銃口はマイロの頭に向けられた。「バーン!」 マイロは階段を転がる。そして、動かなくなった。
数日後の夜、アンドルーが一人で夕食を取っていると、訪問者があった。「夜分に恐れ入りますが、マイロ・ティンドルという男の件で、2,3お尋ねしたい・・・」 ドッペラー警部と名乗る、頭の禿げ上がった初老の男だ。アンドルーは部屋の中へ招いた。

「金曜の夜、銃声を聞いたという知らせがありましてな」「はて・・・」とアンドルー。「実は、マイロ宛に来た、貴方の手紙があります。これは貴方の筆跡ですかな?」「いかにも・・・」 「お宅の庭に新しく掘り返した土がある。あそこになにを埋めました?」「まさか!私がマイロを殺して埋めたとでも?・・」「その可能性は大きい!金曜の夜、マイロはここに来た後、どこにもいない!」「・・・実は、彼はここに来た。私の妻を寝取った仕返しをしたんです。だが、彼を撃ったのは空砲です!彼は私が真に迫っていたので、本当に殺されたと思い、気を失って倒れたんです。少したって、気がつき帰りましたよ」

ドッペラー警部は部屋の中を見て周った。そして、階段のところで、何やら発見した。
「これは・・・血だ。やはり警察へ来てもらおう」「そんな馬鹿な!・・・」逃げようとするアンドルーをドッペラー警部が取り押さえた。

ドッペラー警部がカツラ、付け髭を取ると、なんとマイロだった。アンドルーは驚愕した。
「何となく変だと思った・・・しかし、君は一流だ。芝居と見抜けなかった!」
「まあ、一杯やらんかね!」二人は乾杯した。そしてマイロが切り出したのだ。「実は、貴方の恋人はもう、この世にはいない。私が絞め殺したからだ・・・」「・・・・!?」 「そして、昨日、貴方の留守中にこの部屋の中に彼女の遺品を4つ隠した。10時になると警察がやって来る。早く見つけて処分しないと貴方は犯人になる。あと15分しかない!!」 「何というふざけた真似を!」アンドルーは受話器を取った。「ティーアを!・・・エッ!・・絞め殺された!?・・・」アンドルーは青くなった。「君!!・・・」 「貴方は私を死ぬ目に合わせた。今度は貴方の番だ。早く、証拠品を探すんだな!」

アンドルーは必死に部屋を探し回る。マイロがヒントを出し、次々と出てきた。宝石、靴、付けまつげ、ストッキング・・・。死んだティーアの物だ。アンドルーは全部暖炉へ投げ込み焼いた。
「そろそろ、警察が・・・」マイロが玄関へ出た。「さあ、どうぞ、お待ちしてました!・・・」アンドルーは落ち着き澄まして待った。・・・しかし、誰も入ってこない。突然、マイロが笑い出し肩をすくめた。
「どうですか、肝を冷やしたでしょう。貴方の推理小説もたいしたこと無いね!愚作だ!」 「・・・・・・!!」 「ティーアに貴方のしたことを話したら、協力してくれたんですよ。彼女言ってました。貴方、あっちは全然駄目だとね・・」
完全に取り乱したアンドルーはピストルを握った。
「バーン!」 マイロが血を吹いて倒れた。その時、外が騒がしくなった。パトカーのサイレンと明かり。
マイロが息も絶え絶え言った。
「サツに言うんだな・・・ゲームでしたと・・・」マイロが死んだ。アンドルーは呆然と立ち尽くした。
映画館主から

どんでん返しに次ぐどんでん返しの連続で、2時間20分を飽きさせないスリラーの傑作。しかも、演ずるのはたった2人です。老練ローレンス・オリビエとマイケル・ケイン。共にイギリス人で、演劇界の出身ですから、演技力は抜群。物語もヒットした舞台劇ですから、まさに打ってつけの配役といえます。

マイケル・ケインは名優オリビエと互角に渡り合って、彼の代表作ともいえる演技を残しました。中盤、警部に変装して登場しますが、最初に観た時はすっかり騙されました。オリビエのように、「何となく変だと思った」くらいのものです。
こういう映画の場合、騙されることは快感です。

予想もつかない結末へ、観客を引きずり回し、THE END 。お見事でした。

監督のジョゼフ・L・マンキウィッツは’50年「イヴの総て」でアカデミー監督賞を得た名監督ですが、’63年エリザベス・テーラー主演の「クレオパトラ」で、莫大な予算を掛けながら興行的に大失敗した苦い経験があります。
しかし、最後の作品「探偵スル−ス」で見事、アカデミー監督賞にノミネートされるまでに名誉を回復し、’93年、84歳で世を去りました。


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