「白い恐怖」
白い恐怖 1945・米
白い恐怖

製作:ディヴィッド・O・セルズニック
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:フランシス・ビーディング
撮影:ジョージ・バーンズ
夢のシーンのデザイン:
    サルバドール・ダリ
音楽:ミクロス・ローザ

出演:イングリッド・バーグマン
    グレゴリー・ペック
    レオ・G・キャロル
    ロンダ・フレミング

   マイクル・チェコフ

グレゴリー・ペックとイングリッド・バーグマン

グレゴリー・ペックの記憶は戻るのか

幼い頃の忌まわしい記憶
  幼い頃の忌まわしい記憶


サルバドール・ダリによるイメージ
サルバドール・ダリによるイメージ

イングリッド・バーグマンとレオ・G・キャロル
物語

ヴァーモント洲にある精神病療養所。
マーチスン博士(レオ・G・キャロル)が所長を解任されることになり、新任のエドワーズ博士(グレゴリー・ペック)がやって来た。
女医のコンスタンス・ピーターセン(イングリッド・バーグマン)は、ひと目でエドワーズに惹かれた。

だが、歓迎の席で隣に座ったエドワーズに療養所に計画中のプールの説明をしようと白いテーブルクロスの上にフォークで曲線を引いた時、エドワーズの顔色が変わった。

コンスタンスは今までこれといった恋愛経験はなかったが、何故かエドワーズに惹かれた。彼とて思いは同じだった。
エドワーズの部屋で抱き合った時、彼は彼女の白いガウンの縞模様を見て突如不快感に襲われた。
コンスタンスは彼に何か秘密があるのを感じ取った。

手術室で倒れたエドワーズを看病していたコンスタンスは、以前療養所に送られてきたエドワーズの署名入りの筆跡が彼と違うのを発見、彼に問いただすと、彼はエドワーズではなく、エドワーズを殺して彼になりすましたのだと言い出した。彼は記憶を失っていて、自分が誰だかわからないと言うのだ。

手がかりはただ一つ。彼の上着のポケットに入っていたJ・Bというイニシャルのシガレットケースだけだ。
本物のエドワーズ博士が行方不明となり、検事たちが療養所を訪れた時、彼はすでに立ち去った後だった。コンスタンスのドアの隙間に手紙が挿入されていた。マーチスン博士たちがやって来たが、手紙には気付かずに立ち去る。
手紙には「真実を知るためニューヨークへ行く」と書いてあった。

コンスタンスは誰にも告げずにニューヨークへ向かった。エンパイア・ステートビルで彼と再会するが、コンスタンスは新聞で彼女の顔入りで共犯として追われているのを知る。

二人は、彼女の恩師、ブルロフ博士(マイクル・チェコフ)を訪ね、新婚だと偽って泊めてもらうことにした。ベッドカバーの縞模様を見て、発作を起こした彼をコンスタンスが看病した。
彼は夜中に起き出した。手にはカミソリを持っている。階下にはブルロフ博士が、二人の嘘を見抜いて起きていた。男に睡眠薬入りのミルクを飲ませて安眠させるブルロフ。
翌朝、ブルロフ博士は、男は精神異常とみて警察に届けようとしたが、コンスタンスは4,5日の猶予を懇願した。

やがて、目を覚ました男が今見た夢の内容を話し始めた。“賭博場に大胆に肌を露出した女が現れたこと、イカサマカードで追い出された男のこと、男が屋根から落ちたこと、・・・”。
ブルロフ博士がコンスタンスは夢分析をしているうちに、男はガブリエル・ヴァリーというスキー場を思い出した。相変わらず自分がエドワード博士を殺したと思い込んで自首しようとする彼をそのスキー場へ連れて行くコンスタンス。

警察の手も伸びてきた。スキー場で彼は、過去を思い出した。彼のイニシャル“J・B”とは、ジョン・バレンタイン。戦傷を受けて休暇でこのスキー場へやってきた時、エドワーズ博士と知り合ったが、エドワーズは何者かに殺された。

バレンタインは幼児期に事故で弟を死に至らしめた忌まわしい過去があった。弟とエドワーズが重なり、自分がエドワーズを殺したと思い込んでしまったのだ。彼の怯える白と縦縞の恐怖は、スキー場での記憶のイメージであった。

しかし、記憶が戻ったのもつかぬま、雪中からエドワーズの死体が発見され、しかも銃弾による他殺と解り、バレンタインは逮捕された。

コンスタンスはバレンタインの無実を信じていた。病院に戻ると、マーチスン博士が所長に復帰していた。ふとした会話から、コンスタンスはマーチスンに疑惑を抱いた。彼は知らない筈のバレンタインの夢の内容を口走ったのだ。
夜、コンスタンスはマーチスンの部屋を訪れた。そしてバレンタインの夢の断片から推理し、マーチスンを追い詰めていく。

マーチスンは罪を認めた。彼は所長の席をエドワーズに追われるのを恐れて殺害したのだった。
「貴方はエドワーズ博士を銃で撃って殺し、拳銃は谷底に捨てたのよ」コンスタンスが言った時、「そこは少し違うね。拳銃はここにあるからだ」マーチスンは引き出しから拳銃を取り出すと、コンスタンスに銃口を向けた。
コンスタンスは「貴方は撃たないわ」と言いながら、静かにドアへ向かう。そして後ろ手にドアを閉め出て行った。銃口はそのままくるりとこちら向きにゆっくりと回転した。そして、銃弾が発射された。マーチスン博士は自殺したのだった。

容疑の晴れたバレンタインとコンスタンスは結婚し、ハネムーンに旅立った。

映画館主から

ヒッチコックの精神分析を題材にしたサスペンスです。第二次世界大戦中からアメリカでは精神分析が流行していたようですが、その後のヒッチコック作品にも「サイコ」’60年や「マーニー」’64年などがあります。

「白い恐怖」は夢の分析がドラマの重要な鍵となりますが、夢と現実の交錯するシーンを奇人画家サルバドール・ダリが担当しているのも話題でした。
ただ、その夢の解釈があまりにも短絡的でご都合主義になっていたきらいは否めません。

ラストでレオ・G・キャロルが拳銃で自殺するシーンは、銃が発射された瞬間、モノクロ画面が真っ赤になるのだそうですが、私はテレビ放映でしか見ていませんので確認できません。

バーグマンはヒッチコックお好み女優で、本作の後、「汚名」’46年、「山羊座のもとで」’49年とヒロインに起用されています。お堅い女医が恋することにより、次第に魅力的になっていく過程は、「断崖」’41年のジョーン・フォンティーンと同様、役者というべきか。

グレゴリー・ペックも「パラダイン夫人の恋」’47年で再び出演しています。
レオ・G・キャロルはヒッチコック映画のベテラン俳優。あの長い顔で飄々と演ずる不思議な役者でありました。「北北西に進路を取れ」が必見です。

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