| 断崖 1941・米 | |
![]() 監督:アルフレッド・ヒッチコック 原作:フランシス・アイリス 脚本:サムソン・ラファエルソン ジョーン・ハリソン アルマ・レビル 撮影:ハリー・ストラドリング 音楽:フランツ・ワックスマン 出演:ケーリー・グラント ジョーン・フォンティーン ナイジェル・ブルース サー・セドリック・ハードウィック デイム・メイ・ホイッティ レオ・G・キャロル ![]() ![]() ![]() |
物語 リナ(ジョーン・フォンティーン)は、ロンドンからの列車の中でジョン(カーリー・グラント)と知り合った。 ジョンは、社交界ではプレイボーイとして鼻つまみものだったが、女性たちの間では人気があった。リナは町の有力者、マッキンロウ将軍(サー・セドリック・ハードウィック)の娘だったが、ジョンとの結婚に反対され、駆け落ち同然にジョンと結婚してしまう。 新居は豪華だった。しかし、リナの父親から贈られてきた年代ものの椅子を骨董屋に売ってしまうジョンに疑念が生じた。そして、新婚旅行の請求書が送られてきた。ジョンは無一文だったのだ。 リナはジョンに真面目に働くよう説得した。不動産屋の支配人として働き始めたジョンは、やがて競馬場での穴埋めに会社の金を使い込んでいた。 ショックを受けたリナは、実家に戻る決心をした。そこへ、リナの父親のマッキンロウ将軍の死の報せが入る。遺産の分配では、将軍の肖像画しかもらえないことにジョンの機嫌は悪かった。 ジョンの友人ビーキー(ナイジェル・ブルース)とジョンは二人で不動産会社を設立する計画を立て始めた。断崖の景観の良い場所にリゾートの計画だ。夜、二人の話を聞くともなく、スクランブルでカードをもてあそんでいるうちに、そのカードが偶然、’M・U・R・D・E・R’(殺人)となっていた!ジョンとビーキーは明日、断崖の現地へ下見に行くという。ジョンがビーキーを殺す!断崖からビーキーを突き落とすジョンが幻想となり、リナは失神してしまった。 翌朝、目がさめたリナは、女中から二人が下見に出かけたと聞き、断崖まで車を飛ばした。しかし、誰もいない。疑惑が脳裏をよぎりながら家へ戻ると、ジョンとビーキーは何事も無くくつろいでいた。ほっと胸をなでおろしたリナだが、ビーキーが車が崖から落ちそうになったと聞き、再び疑念が頭をもたげてきた。 そのビーキーがパリで死んだ。ジョンも同行している。リナは夫を疑い始めた。自分を財産欲しさに殺すつもりではないだろうか。その気になってみると、ジョンの言動は全て疑わしい。リナはジョンが自分に生命保険をかけていることも知った。 リナの友人の推理作家のもとへジョンがたびたび訪問している。リナが作家に聞くと、ジョンは劇薬や毒薬の秘密を聞き出そうとしていたと言う。 体調を崩したリナのベッドに夜、ミルクを運んでくるジョン。ボウッと光るミルク。毒が入っているに違いない。リナはいくら勧められても飲まなかった。 翌朝、リナは実家へ戻るとジョンに言った。一刻も早くジョンから離れたい。しかし、ジョンは車で送ると言い張った。やむなく車に乗った。 車はスピードを増し、断崖に差し掛かった。ジョンの運転は何時に無く乱暴だ。“殺される”このまま、車から突き落とされたら、下は絶壁だ。リナは不安に耐え切れず、自らドアを開けて脱出しようとした。ジョンの腕が伸びてくる。 ジョンは車を止めた。逃げようとするリナを押さえつけて、ジョンは告白した。ジョンは、ビーキーとパリで一緒ではなく、ロンドンへ行って金策に走り回ったが上手くいかず、自殺を考えていたと言うのだ。真相を知って驚き、リナはジョンを疑っていたことを恥じた。そして、再び生活をやり直そうとジョンに言うのだった。 車は断崖の淵を走り始めた。そして、ゆっくりとUターンして行くのだった。 |
| 映画館主から フランシス・アイリスの原作「犯行以前」をもとにした、ヒッチコックの心理サスペンスです。夫に対する疑惑が積み重なり、自分も殺されると信じ込んだ妻の話。 原作では、最後、毒入りミルクで妻を殺し、妻も夫への愛のためにそれを望んだ、ということらしいのです。ヒッチコックは最初、原作通りしたかったのですが、製作会社RKOの意図で実現しませんでした。もし原作通りになっていたら、映画そのものがガラリと変わってしまいます。後味の悪いものになってしまったでしょう。 ケーリー・グラントが妻にミルクを運んで階段を上って来るシーンでは、ミルクの白さを強調するため、ヒッチコックは、ミルクの中に豆電球を入れたのだそうです。観客の目はボウッと不気味に光るミルクに引きつけられるという、ヒッチコックの伝説的な場面です。 ケーリー・グラントはジェームズ・スチュアートと並んでヒッチコック最多出演男優ですが、この作品が最初です。プレイボーイで金にだらしなく、何を考えているのか良く解らない疑惑の男をさりげなく演じています。 ジョーン・フォンティーンは、前年、「レベッカ」でもヒロインを演じ、大スターになりましたが、この作品でアカデミー主演女優賞を獲得しています。最初、眼がねをかけた垢抜けない女で登場してきますが、恋をしながら変身していく様は正に女優。夫に殺されるという疑惑に取り付かれるヒロインは、観客に不安を抱かせるに充分な演技でした。 高い所から落ちるというサスペンスは、ヒッチコックの十八番で、本作の他にも、「海外特派員」「白い恐怖」「レベッカ」「逃走迷路」「裏窓」「泥棒成金」「知りすぎていた男」「めまい」「北北西に進路を取れ」など、随所に使われています。 「めまい」は、そのサスペンスが最高に生かされた代表でしょう。 不動産会社の社長を演じた、レオ・G・キャロルという脇役俳優はヒッチコック映画の常連ですが、長い馬面が妙に存在感があって、私は好きです。「北北西に進路を取れ」の教授役が、彼の代表作でしょうか。 |
|
|