「アフリカの女王」
アフリカの女王 
1951・米=英
アフリカの女王

製作:サム・スピーゲル
    S・P・イーグル
監督:脚本:
    ジョン・ヒューストン
原作:C・S・フォレスター
脚本:ジェームズ・アギー
撮影:ジャック・カーディフ
音楽:アラン・グレイ

出演:ハンフリー・ボガート
    キャサリン・ヘプバーン
    ロバート・モーリー


左からキャサリン・ヘプバーン、ロバート・モーリー、ハンフリー・ボガート

キャサリン・ヘプバーン

ハンフリー・ボガート

物語

1914年9月、ドイツ領の東アフリカ。
「メソジスト教会のクンドゥ支部」で原住民たちに聖歌を教えるローズ(キャサリン・ヘプバーン)と宣教師の兄(ロバート・モーリー)。

近くを流れる小さなウランガ川を往来して、定期的に日用品や手紙などを小舟で運んでくるのはカナダ人の船長、チャーリー(ハンフリー・ボガート)だ。
「ヨーロッパで戦争が始まった。郵便物はドイツ軍が没収、当分届かない。ドイツとイギリス、フランスとスペインも参戦したそうだ。敵味方がどうなってるかは知らんがね」チャーリーが言った。彼は戦争に無関心で、世の中が静かになるまで奥地に潜んで休憩しようと考えているのだ。

ある日、突然に教会の村にドイツ軍がやって来た。村を焼き払い、原住民の男たちを兵士として駆り集めていく。宣教師の兄は抗議しようとして兵士に暴行を受け、それが原因で死んでしまった。

チャーリーがその後やってきて村の惨状を目の当たりにした。ローズが教会の焼け跡で呆然としている。
チャーリーは宣教師の遺体を埋葬するとローズを船に乗せた。ローズはドイツ軍に復讐したくて仕方が無い。

ローズは、川下の湖にドイツ軍の砲艦ルイザ号がいて味方の侵入を妨げていると知ると目を輝かせた。「魚雷を作れる?」この船(アフリカの女王)には爆発性ゼラチンと酸素ボンベ、水素ボンベが積んであるのだ。「ドイツの砲艦ルイザ号をやっつけるのよ」
「何を言い出す、素人はこれだから怖い」 チャーリーは請合わない。「この船で川を下ろうとしても無理だ。まず、ショーナ(敵の砦)がある。次に激流が160キロも続くんだ」
しかし、ローズの強い意志には敵わない。とうとう根負けしたチャーリーは川を下る事にするのだった。

川は浅瀬になり、急流を下る。懲りると思ったチャーリーは、ローズがスリルを楽しんでいる様子なのにあきれ果てた。「付き合ってられない。この先にショーナ(敵の砦)があるんだぞ。銃弾の雨が降る。爆発性ゼラチンに当たれば船ごと木っ端微塵だ」
「夜通れば?」 「激流で通れるもんか」 チャーリー、自棄酒を飲む。したたかに酔って目を覚ますと、ローズが酒を川に捨てている。「俺の命の水だぞ」
大量の酒の瓶が川に流れていく。「川を下る約束よ」 「そんなの知るか」

再び根負けしたチャーリーは、更に川を下る。鰐の群れが川になだれ込む。
ショーナが近づく。ドイツ軍が川を下ってくる小舟を発見し、発砲してきた。頭を下げ、身を隠す。船のあちこちに銃弾が弾けた。
運良くショーナを通過すると今度は激流が待っていた。いまや舵取りを覚えたローズが必死に舵を取る。二人は波と戦いながらようやく穏やかな流れに出た。
「やったぞ!」叫んだ二人は思わず抱き合いキスを交わす。そして気が付いた。二人はお互いに惹かれあっていたのだ。

「早いとこルイザを片付けよう」 チャーリーははしゃいでいた。川から顔を出すカバの真似をする。陸には猿の群れ。猿の真似をしてローズを笑わせる。
その時、「あの音!」 なだれ落ちる急流の音。巻き込まれる「アフリカの女王」。落ち着いた時、スクリューの異常に気付く。浅瀬の岩にやられたのだ。
岸辺に寄せ、チャーリーとローズは水中に潜り、スクリューとシャフトを外した。火を起こし、フイゴでスクリューを焼く。鍛冶屋よろしくチャーリーはスクリューを補修した。

再び船を出す。しかし、水面一帯に生え茂った葦の迷路にはまり込み動きが取れなくなってしまった。チャーリー、船から降りてロープで引く。異変だ。チャーリーの体中にヒルが吸い付いていた。塩をまいてチャーリーのヒルを剥がすローズ。「ヒルは苦手なんだ」 とうとう、チャーリーが熱を出した。
「ロージー、いくら頑張っても抜け出せない。でも、俺は後悔してない。君と素晴らしい時を持てた」 神に祈るローズ。

やがて雨が降り、川の水かさが増し、「アフリカの女王」は葦の迷路から脱出した。そこはもう、湖の近くまで来ていたのだ。
ルイザ号を発見。葦に隠れてチャーリーが魚雷を作る。酸素ボンベと水素ボンベを使い、先端に手製の雷管を付ける。それを「アフリカの女王」の左舷と右舷に設置してルイザ号に体当たりさせるのだ。

ルイザ号目掛けて「アフリカの女王」を乗りだした時、嵐が吹き荒れ、船は沈み、二人は投げ出された。
湖からルイザ号に引き上げられた二人は、艦上でドイツ軍の裁判にかけられた。
「死刑」だった。ローズは勝ち誇ったように言った。「魚雷を作ったのよ」 「不可能だ」敵は嘲笑った。
その時、湖に「アフリカの女王」が浮かび上がり、舳先の魚雷がこちらを向いているのに誰も気が付かない。
死刑の直前、チャーリーが言った。「二人の結婚式をしてくれないか」 艦長は二人の最後の言葉を聞き入れ、簡易な式をしてやった。ローズもチャーリーも満足だった。人生の最後に最高の伴侶と行動を共にできたのだから。

二人の首に縄がかけられた。その時だ。ルイザ号が轟音とともに揺れた。艦が傾き、ドイツ兵たちがパニックになる。爆発。魚雷がルイザ号に衝突したのだ。二人はその混乱に紛れて湖に脱出した。
ルイザ号は二人の魚雷により湖に沈んでいった。木っ端微塵となった様々な破片の中に「アフリカの女王」と書いた船の木片が浮かんでいるのだった。
映画館主から

ハンフリー・ボガートとキャサリン・ヘプバーンという二大名優共演のアドベンチャー物語。
第一次世界大戦中の東アフリカで、「アフリカの女王」という小舟でドイツの砲艦をやっつけるという、ドン・キホーテさながらの奇想天外なストーリー。
ジョン・ヒューストン監督の緩急自在の男っぽい演出が全編にみなぎり、息つく間もないほどのスリル。しかも、二人の中年の掛け合いが楽しく、人間ドラマとしても一級品です。

この時、ハンフリー・ボガート、52歳。キャサリン・ヘプバーン、44歳。共に油の乗り切った演技で、本作でボガートはアカデミー主演男優賞受賞。ボガートはどこか小汚い飲んだくれの船長を演じ、美男子とは程遠い俳優なのに、見るほどに味があり実に魅力的なのが不思議です。

キャサリン・ヘプバーンは主演女優賞候補。しかし、彼女は「勝利の朝」’33年でアカデミー主演女優賞を受賞して以来、「招かれざる客」’67年、「冬のライオン」’68年、「黄昏」’81年と計4度も受賞している大ベテランです。この記録はまだ破られていません。

ジョン・ヒューストンはこの時、45歳。本作のほか、「マルタの鷹」’41年、「黄金」’48年、「白鯨」’56年、「許されざる者」’59年などの骨っぽい作品で知られますが、俳優としてもその容貌魁偉の演技で圧倒されます。「チャイナタウン」(’74年、ロマン・ポランスキー監督)での政界の黒幕役が役者としての代表作でしょう。

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