「逃亡地帯」
逃亡地帯 1966・米


製作:サム・スピーゲル
監督:アーサー・ペン
原作:ホートン・フート
脚本:リリアン・ヘルマン
撮影:ジョゼフ・ラシェル
    ロバート・サーティース
音楽:ジョン・バリー

出演:マーロン・ブランド
    ジェーン・フォンダ
    ロバート・レッドフォード
    アンジー・ディッキンソン
    ロバート・デュバル
    E・G・マーシャル






物語

刑務所を脱走した二人の男が走る。
一人は凶悪犯、もう一人は服役間もない筈のババー(ロバート・レッドフォード)だ。
三道で、通りかかった車を止めると凶悪犯は運転手を殴り倒した。ババーが確認すると運転手は死んでいた。その隙に凶悪犯は車を発進し、走り去った。
ババーは当てもなく山野を走り続けた。

テキサスの田舎町タールは、石油で財をなしたバル(E・G・マーシャル)が権力を握る町だ。町の保安官カルダー(マーロン・ブランド)は妻(アンジー・ディッキンソン)とともに保安官事務所にいたが、ババーが刑務所を脱走した知らせを受けた。

石油王バルの息子ジェイク(ジェームズ・フォックス)とババーの妻アンナ(ジェーン・フォンダ)は、ババーの服役中に愛人の関係にあった。
保安官カルダーがババーの両親のもとへ出かけババーの脱走を伝える。
「もし、ここへ来たら自首するように説得しなさい」

ババーが貨物列車に乗り、逃げた先は自然とテキサスに向かっていた。
バルの誕生パーティに夫婦で出席したカルダーは、バルにババーの脱走を伝えた。カルダーはバルに世話になってはいるが、いつも恩をふりかざされるのを快く思っていない。
バルは町の篤志家であり、彼の元で働く人間も多い。だが、権力を気ままに振るう尊大な男だった。そして、ババーの脱走に関連して山道での死体発見の知らせが入る。

町では若い男女が酔いしれていた。ダンスに興じる者、車を暴走する者。
ババーの脱走は皆の知れるところとなり、皆の狂態に拍車をかけた。「町に戻ってきたら殺してやる」
バルからババーの脱走を聞いた息子のジェイクはアンナとともに町を車で巡回した。アンナはババーを愛しており、ジェイクもそれは解っている。

ババーはとうとう、タールの町はずれにたどり着いた。黒人レスターの自動車修理工場でババーはレスターにアンナへの伝言を伝えた。波止場で待ってると。
レスターがアンナのアパートを訪ねると留守だった。
「黒人が白人の女に用か?」レスターを見た町の与太者がレスターを取り囲む。リンチにされそうなところへカルダーが車で通りかかった。カルダーはレスターを車に乗せ、拘置所に入れた。町の与太者たちから守るためだ。
しかし、レスターはババーの居所を話そうとしない。

アンナとジェイクが保安官事務所へ来た。カルダーはアンナをレスターに会わせた。「奴はババーの居所をしゃべらない。ババーの情報を持ってる筈だ。ババーに自首させるんだ。奴等はババーをリンチしかねないぞ」
アンナとジェイクはレスターからババーの場所を聞くと、車を走らせた。

石油王バルがやって来た。「黒人に会わせろ」拘置所へ向かおうとするバルをカルダーが遮った。その時、町の連中がなだれ込んで来た。カルダーを押さえ込み叩きのめす。カルダーは顔面がはれ上がり、血だらけの状態だ。

立ち上がるのもやっとのカルダーは、バルから暴行を受けたレスターからババーの居所を聞くとそこへ向かった。
レスターの自動車修理工場。そこは山と積まれた廃車の群れだ。
ババーは駆けつけたアンナと再会する。「自首して!」ジェイクも顔を出す。
「やはりな、前から分かってたんだ。俺は逃げ延びる。車を手配してくれ。落ち着いたら呼ぶから来たかったら来い」アンナは頷いた。

バルがやって来た。「ババー!出て来い、私の車を使え」
しかし、間も無く町の連中が大挙して車で押し寄せた。廃車の山に次々と火炎瓶を投げつける。廃車の中を逃げ回る3人。あちこちで火の手が上がり、さながら戦場となった。
ジェイクは崩れた廃車の下敷きになり、虫の息だった。ババーが追い詰められ撃たれる寸前、カルダーが駆けつけた。

保安官事務所までババーを車で連れてきたカルダーは大勢の町の人間の中を歩く。ババーの両親もいた。突然、ババーに近づいた男がババーを撃った。もんどりうってババーが倒れた。
カルダーは撃った男を殴る。カルダーはもはや正常ではない。狂ったように殴りつづけるのを周囲の人間が止めた。

アンナは二人の男を同時に失った。
翌日、カルダーは妻と共にもはや未練もないこの町を去っていくのだった。
映画館主から

アーサー・ペン監督が「俺たちに明日はない」の1年前に発表した異色バイオレンス作品。

不倫のカップル、脱走者、町を牛耳る実力者、それにへつらう人々、殺人、リンチ、人種差別などが、リアルに描き出されたこの作品は、アーサー・ペンの意欲ほどにはヒットしませんでした。

しかし、「俺たちに明日はない」の大ヒットにつながる萌芽はここにあり、ラストの衝撃的なバイオレンスは深く印象に残るものでありました。
マーロン・ブランド演ずる保安官が町の与太者に痛めつけられ、腫れ上がった変形した容貌は、黒澤明の「用心棒」で、痛めつけられた三船敏郎のそれに匹敵します。

脱走犯のロバート・レッドフォードはまだ新人でしたが、着実な演技で、続く「夕日に向かって走れ」「明日に向かって撃て!」でスターの位置を不動にしていきました。

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