「コレクター」
コレクター 1965・米
コレクター

製作:ジョン・コーン
    ジャド・キンバーグ
監督:ウィリアム・ワイラー
原作:ジョン・フォウルス
脚本:スタンリー・マン
    ジョン・コーン
撮影:ロバート・サーティース
    ロバート・クラスカー
音楽:モーリス・ジャール

出演:テレンス・スタンプ
    サマンサ・エッガー
    モーリス・バリモア

物語

青年銀行員フレディ(テレンス・スタンプ)は、内気な性格で銀行内でも皆の笑い者だが、唯一の趣味が蝶のコレクションで彼の生き甲斐だった。
休日となると郊外に蝶の採集にでかけ一日中蝶を追いかけていた。
ある日、片田舎のはずれに売家を見つけた。地下室も付いている。
フレディの目が異様に光を帯びた。彼は、最近、サッカーくじを当て、大金を手にしたのだった。

フレディはかねてから目を付けていた美しい美術学校の女学生ミランダ(サマンサ・エッガー)を車で付回し、人気の無いところでクロロホルムを嗅がせて失神させた。

目を覚ましたミランダは、まったく見知らぬ家にいた。ドアには鍵が掛かっていて出られない。しかも、洋服、洗面用具、美術の本などが一式揃えてあった。ミランダには自分がどういう立場にいるのか理解できなかった。

ドアが開いて、フレディが食事を運んできた。そこは地下室だった。
「ここはどこ?貴方は誰?」ミランダは叫ぶ。
「ここが君の家だ」フレディは言った。
フレディはこうなった経緯を話し始めた。以前からミランダを見初め、唯一の女性と思ってきたこと。愛していること。だからここに二人の場所を作ったと。
しかし、ミランダにとってそれは一方的な理不尽な話だ。

フレディはミランダにいっさい手を触れなかった。食事は決まった時間に運んでくる。「僕を知って欲しいんだ」 
ある日、逃げようとしたミランダともみ合いになる。「取引しよう」 4週間の期限で解放すると約束した。その間は逃げようとせず、会話に応ずること。ミランダは絵画の道具を揃えるよう要求した。

バスルームは母屋の2階にある。地下室から連れ出す時はミランダの手を縛る。バスルームのドアの外でフレディが待っている。
そこへ、玄関の呼び鈴が聞こえた。フレディは慌ててミランダをバスルームのパイプに縛り付け、猿轡をしてから玄関に急いだ。隣人の老人が立っていた。パーティーの招待に招きに来たのだが、フレディは何かと理由をつけて断ろうとした。
その時、ミランダは足を伸ばしてバスの蛇口を全開にしていた。バスの湯が溢れ、2階のバスルームから階段を流れ落ちてきた。
あせったのはフレディだ。「客がいるのか?」老人を尻目に2階に駆け上がったフレディは蛇口を閉め、バスの栓を抜いた。
老人が階段を登ってきた。ドアを閉めてフレディは言った。「何でもありません。実は彼女が来てるんです」 老人はそれ以上の追及は野暮と、引き返していった。

「君に見せたい物がある」 母屋の部屋に彼が収集した夥しい蝶の標本が所狭しと並んでいる。壁から引き出しの中までびっしりと。
「私も貴方のコレクションなのね」 ミランダは言った。「貴方が愛しているのは、死なの?」

ピカソの絵をめぐり二人の意見は論争になった。「こんなのは絵じゃない。100万人に一人でも認める人間なんかいないよ。君は先生がそう教えたから良いと思ってるだけだ」

そうこうする内に約束の4週間の日がやってきた。
母屋での晩餐の夜、フレディはミランダの為にドレスを買ってあった。「素敵!」ミランダは喜んだ。シャンパンで乾杯した。
しかし、フレディが差し出した物、それは指輪だった。「・・・結婚してくれ」
「約束を破るの!」ミランダは絶望的になった。この男に自分を解放する気はない。

ミランダは裸になり、フレディを挑発した。彼女の最後の手立てだった。しかし、フレディは怒り出す。「君は街の女と同じだ!」
降りしきる雨の中、地下室へ戻される途中、ミランダは隙を見て立てかけてあったスコップでフレディを殴りつけた。顔から血を流すフレディ。
逃げようとするミランダを追って来たフレディが捕らえた。ネグリジェ姿のまま引きずり戻されるミランダ。

翌朝、フレディが食事を運んでくると、ミランダが高熱を発して苦しんでいた。雨の中の格闘で肺炎にかかっていたのだ。
町へ薬を買いに行ったフレディが戻った時、ミランダはすでに息を引き取った後だった。

若い看護婦が道を歩く。その姿を追っている車がある。運転するフレディの目が無気味な光を帯びているのだった。
映画館主から

ウィリアム・ワイラー監督の描いたサスペンス・スリラー。
主人公は蝶の採集を趣味とする青年。このコレクターが人間の女性を標的にするという理不尽なお話しです。
まさに、現代のストーカーの究極であり、最近、世間を騒がせた新潟の少女9年間監禁事件を彷彿させるストーリーです。

まったくの独り善がり男性の行為によって監禁される女性の恐怖を描いて際立っています。登場人物はほとんどこの二人です。女性が逃げられるのか、どうなるのか、ドラマが進行し、最後には死に至るという理不尽さに胸が悪くなります。

主役の青年に個性派のテレンス・スタンプ。拉致される女学生にサマンサ・エッガー。二人は、共に同年のカンヌ映画祭で演技賞を受賞しています。

監督のウィリアム・ワイラーはまさに職人芸。丁寧な演出は隙がありません。
彼の手がける作品のジャンルも様々です。文芸作品の「嵐が丘」’39年、社会派ドラマ「我等の生涯の最良の年」’46年、ロマンチックコメディの「ローマの休日」’53年、サスペンス「必死の逃亡者」’55年、西部劇「大いなる西部」’58年、スペクタクル史劇「ベン・ハー」’59年、ミュージカル「ファニーガール」’65年など、あらゆるジャンルを手がけたにもかかわらず、どれも一級品の完成度を誇っています。職人芸であり、サービス精神の旺盛な監督でありました。

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