| 吸血狼男 1960・英 | |
![]() 製作:アンソニー・ハインズ 監督:テレンス・フィッシャー 原作:ガイ・エンドア 脚本:ジョン・エルダー 撮影:アーサー・グラント 音楽:ベンジャミン・フランケル 出演:クリフォード・エバンス オリバー・リード イヴォンヌ・ロメイン キャサリン・フェラー アンソニー・ドーソン ![]() ![]() ![]() |
物語 18世紀後期のスペイン。 放浪者がある町にたどり着く。その町は、日曜日でもないのに教会の鐘が鳴り、店も閉まっていた。酒場では昼間から酒盛りの最中だった。 「恵んでくだせえ」 放浪者が言うと、「俺たちの金はもうねえぞ、城へ行ってみな、今日は公爵の結婚式だ、俺たちの金で祝ってるはずだ」 酒場の客は答えた。 長い道のりを歩き、放浪者が城へ行くと、確かに宴の最中だった。 「お恵みを少し・・・パンを少し・・・」 放浪者が訴えた。新郎のマーキス公爵(アンソニー・ドーソン)は偏執的な性格の持ち主だった。放浪者にワインを与え、「踊れ!」と命じた。放浪者は皆の前で踊り、疲労で失神した。 放浪者はそのまま、地下牢に入れられた。放浪者の世話をする看守の娘は口が利けない少女だった。 その少女は成人し、メイドになっていた(イヴォンヌ・ロメイン)。相変わらず地下牢の放浪者の食事の世話もしている。 マーキス公爵の度の過ぎた我儘のためか、妻は早死にし、友人もいなくなっていた。公爵は肉感的なメイドに手を出そうとして逆に噛み付かれる。 逆上した公爵はメイドを放浪者と同じ地下牢に閉じ込めた。 髪が伸び放題の放浪者は、若いメイドに目を血走らせ、舌なめずりした。そして犯される。メイドは口が利けないため、助けを呼ぶことさえできないのだった。 やがて、時がきてメイドは地下牢から出された。メイドは心身共にズタズタだった。そしてマーキス公爵の部屋に忍び込むと公爵の胸を刺し、城外へ脱出した。 森の湖まで逃げてきたメイドは、たまたま通りかかったドン・アルフレッド・コルレド(クリフォード・エバンス)に助けられた。メイドは瀕死の状態で更に腹に子を身篭っていた。 12月25日にメイドは男児を出産し、そのまま息を引き取った。男児はレオンと名づけられ、コルレド夫婦が親代わりとなった。 レオンは少年となった。このところ、村の山羊や猫が咽喉を切られて死んでいるのが頻繁に見つかるようになった。 ある満月の夜、村のハンター、ペペが銃を手に見張りをしていると、暗がりに怪しい動物の影が・・・。ペペが狙いを定めて撃った。手ごたえがあった。 明け方、コルレド家ではレオン少年の怪我の手当てにおおわらわだった。レオンは、足から血を流しており、驚いたことに足の中から銃弾が出てきたのだ。 コルレドがレオンに問い詰めた。昨夜何をしていたのか、どこかへ出かけたのかと。レオンに記憶がない。ただ怯えながらレオンはこう話したのだ。 「怖い夢を毎日見るんだ・・・ペペと狩に行った時、撃たれた子リスにキスした夢・・・血の味が甘くて・・・もっと味わいたくて・・・」 レオンの挙動に不安感を持ったコルレド夫妻は、神父に相談した。神父は言った。 「誕生の瞬間に獣の霊が取り付くことがある・・・そうなると、人間の魂と獣の霊が支配力を争う・・・人間の魂が強くて清ければ、幼い時に獣の霊を追い出すだろう・・・だが、訳あって魂が弱いと、つまり遺伝性の弱さとか、誕生時の事故とかがあった場合が問題なのだ。オオカミ男・・・貴方の息子は体内で魂と霊が常に戦っている。オオカミの霊は悪の力が強い。特に満月の夜・・・それを救うには愛の力しかない」 村のハンター、ペペは十字架を溶かして銀の弾丸を作った。そしてそれを撃った。レオンは自分の部屋の窓の鉄格子を掴み、満月に向かって雄叫びを上げた。レオンの顔はあどけない少年のものではない。目は釣りあがり、奥歯が牙になっている。腕の内側にうっそうと毛が生えていた。 コルレド夫妻に愛情を注がれて逞しい青年に成長したレオン(オリバー・リード)は、酒屋で勤めることになった。 酒造の主フェルナンドの娘クリスチーナ(キャサリン・フェラー)は、美しい娘だったが、地主リコと婚約していた。しかし、出会った途端にレオンとクリスチーナは恋に落ちた。二人はフェルナンドの目を盗んでは逢瀬を重ねた。 祭りの夜は満月だった。レオンに異変が起きる。自分でも押さえることのできない内側から湧き上がる獣の本能。酒場でレオンを自分の部屋へ誘った女を・・・更に酔っ払ってやって来た酒場の同僚を・・・惨殺した。 レオンが気付いた時は、自分の家のベッドだった。手に血がついている。コルレドが心配した。「昨夜のことを覚えていないのか?」 酒場に戻ったレオンは警察に逮捕された。報せを受けたクリスチーナが駆けつけたがレオンとは引き離される。続いて駆けつけた父コルレドにレオンは叫んだ。 「ペペが銀の弾を持っている、それでぼくを撃て!」 コルレドは成すすべもなく息子の声を聞くばかりだった。 牢獄のレオン。折りしも満月の夜だった。高い小窓から満月の光が差し込む。レオンに再び異変が起きる。腕に毛が生えてくる。顔の表情に変化が・・・獣の顔・・・オオカミ男だ。胡散臭そうにレオンの様子を見ていた同室の囚人が震え上がった。飛び掛ったレオンは囚人の咽喉を食いちぎり、鉄格子を押し破った。看守を殺し町の中へ踊り出た。 町中がパニックになった。 オオカミ男は町中を走り回るが逃げ場はない。人々が手に手に松明を掲げて迫ってくる。オオカミ男は建物の屋根を伝い逃げる。 コルレドがペペの銀の弾を銃に詰めて駆けつけた。クリスチーナはどうすることも出来ない。オオカミ男が教会の鐘楼に上り詰めた。 コルレドは鐘楼まで駆け上がった。変わり果てた姿の息子と対峙した。鐘にぶら下がって向かって来たオオカミ男をコルレドの銃弾が貫いた。 オオカミ男は死んだ。コルレドは息子に自分の上着をそっとかけてやるのだった。 |
| 映画館主から 英国のハマー・フィルム・プロといえば、「吸血鬼ドラキュラ」「フランケンシュタインの逆襲」「ミイラの幽霊」などの恐怖映画の殿堂です。 そのハマー・プロが「吸血鬼ドラキュラ」のテレンス・フィッシャー監督で放った強烈な狼男映画の傑作。 「ドラキュラ」や、「フランケンシュタイン」はシリーズ化され、何本か製作されましたが、「狼男」はこれ1本で終わり。 多分、「狼男物」は何だか悲しい物語でありすぎるのかも知れません。 本作においても、偏執的な公爵に地下牢に閉じ込められた若きメイドが囚人に犯された上妊娠し、かろうじて生まれた子は邪悪な血を受け継いでしまったという物語なのです。 獣の霊を宿したレオンは育ての親や恋人の愛をもってしても救うことが出来なかったのです。そこには単なる怪奇映画とは違った一種の悲哀も漂っています。 主演のオリバー・リードにとっては実質的なデビュー作です。本作のヒットによりその後多くの映画で個性派として活躍しましたが、近年の「グラディエーター」を最後に亡くなりました。ちなみにオリバー・リードはあの「第三の男」の名監督、キャロル・リードの甥だそうで、映画界入りを勧めたのもキャロル・リードだったとか。 オリバー・リードの狼男のメイクは恐らく狼男映画では史上最高の怖さでありましょう。後年の「狼男アメリカン」(’81年、監督:ジョン・ランディス)や、「ハウリング」(’81年、監督:ジョー・ダンテ)などは、変身場面が話題になったものですが、「吸血狼男」は、まだ撮影技術の発達していなかった頃の変身場面として特筆に価するでしょう。なにせ、オリバー・リード自身がメイクなしでも相当いかついのですから。 偏執的なスペインの公爵を演ずるのは、「ダイヤルMを回せ!」(’54年、監督:アルフレッド・ヒッチコック)で、グレース・ケリーの首を後ろから締める、あの殺し屋を演じた俳優です。この人も相当薄気味悪いです。 「吸血狼男」は映画館ではなく、昔、上板橋に住んでいた頃、風呂屋の帰りに一杯飲み屋でのテレビ放映で兄と一緒に見たものです。見始めたら帰れなくなり、ビール瓶が並んでしまいました。 その後、放映されることもなく、ビデオレンタルで探しましたが、最近ようやく渋谷駅前のTSUTAYAで見つけました。狼男映画の傑作といえるでしょう。 |
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