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「手錠のまゝの脱獄」オープニング |
| 手錠のまゝの脱獄 1958・米 |
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![]() 製作:監督: スタンリー・クレーマー 脚本:ネイザン・E・ダグラス ハロルド・ジェーコブ・スミス 撮影:サム・リービット 音楽:アーネスト・ゴールド 出演:トニー・カーチス シドニーポワチエ カラ・ウィリアムズ シオダー・ビケル ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語 豪雨の中、ハイウエイを走っていた囚人護送車がガードレールを突き破り崖下に転落した。 その、どさくさに紛れて二人の囚人が脱走した。二人は手錠で繋がれたままだった。所長は言った。「心配いらない。奴等はすぐに殺し合う」 脱走したのは、ノア・カレン(シドニー・ポワチエ)、黒人、暴行・殺人未遂・懲役20年。ジョン・ジャクソン(トニー・カーチス)、武装強盗・懲役10年・看守襲撃で5年追加。 二人は山へ逃げる。石を見つけ鎖を切ろうとするがびくともしない。 「一緒に逃げるか、奴等に捕まるかだ」 河を渡る。流される。ジャクソンがカレンを救う。「ありがとう、助かった」カレンが言うと、「自分の命を守るためさ」ジャクソンが答えた。相手の死は自分の死である。二人は運命共同体なのだ。 沼で蛙を捕まえ、焼いて喰う。 雨の中、沼地を歩いていて、大きな穴に落ち込む。悪戦苦闘の末、何とか脱出した。 追っ手がドーベルマンを駆り立てて迫ってくる。 夜、ある町にたどり着いた。寝静まっていた家の屋根裏から忍び込もうとして失敗。住民たちに捕らえられた。 「こいつは白人だぞ」 ジャクソンを見て、誰かが叫ぶが、男たちは二人をリンチしようとした。「俺は白人だぞ」ジャクソンが言った。 二人が柱を背にお互い後ろ向きに縛られていた。「♪遥か遠くへ・・・あいつは運がなかった〜ケンタッキー州へ行った〜・・・」カレンが歌っていると、夜中に住民のリーダー、サムが入って来た。 「助けてやる」 サムの手首に手錠の痕が生々しく残っていた。サムもかって似たような境遇だったのだろう。 再び、二人は山へ逃げる。手錠は二人の自由を妨げ、お互いがいらついていた。諍いを起こし、殴りあう二人。もつれあって山を転げ落ちた。 そこに、銃を構えて少年が立っていた。「この人を護送してるの?」ジャクソンに言った。「まあな」 少年ビリーの家へ駆け込む二人。そこには、夫に捨てられビリーと二人で住む女がいた。 「食い物が欲しい」ジャクソンが頼んだ。女は従った。 「こいつの分もな」ジャクソンはカレンの分も要求した。女は渋々持ってきた。 「コーヒーを入れるわ・・・彼のも?」ジャクソンは頷く。 「明日、列車が通るわ、午後1時頃、山へ行けば乗りやすいわ」女が言った。 道具を使い、鎖を切断した。二人は自由になった。瞬間、ジャクソンは気を失う。緊張の糸が切れたのと疲労だった。 女は寝ないでジャクソンの看病をする。そして女に愛が芽生えていく。 翌朝、女がジャクソンに言った。「私を連れてって」 「逃亡中だぞ」 「かまわないわ」 納屋に車がある。ジャクソンの目が輝いた。「奴を呼ぶ」「駄目よ、男女連れなら大丈夫よ」 カレンが二人の会話を聞いていた。「俺は犠牲か」 「お前と一緒だと目立つんだ、一人の方が楽だろ」 と、ジャクソン。 女がカレンに言った。「沼を通って行くと近道だし、犬は探しにくいわ」 カレンは道を教わり、立ち去った。 ジャクソンは切断した手錠の鎖を見てつぶやいた。「彼は無事かな・・・」 その時、女が言った。「彼は捕まらないわ」 「・・・何故解る?」 「あの沼から生きては出られないもの、あれは底なし沼だから」 ジャクソンは女の言葉を聞き、形相が変わる。「何だと」 女は急に怒り出したジャクソンに言う。「なぜ、黒人なんか心配するの」 ジャクソンは女を突き飛ばした。その時、母親に乱暴を働いたジャクソンをビリーが銃を持ち出し撃った。 ジャクソンは肩を撃たれた。沼の方角へ走る。「カレン、カレン!」大声で叫びながら走る。沼へたどり着くとカレンが立っていた。 ジャクソンは疲れきっていた。「もう、動けない・・・」ジャクソンが言うと、「手錠があると思え」と、カレンが言った。 その頃、ドーベルマンを引き連れた追っ手が迫ってきた。 列車の音が聞こえる。二人は線路にたどり着いた。列車が走って来た。走る二人。カレンが飛び乗り、ジャクソンに手を差し伸べる。「早くつかめ」ジャクソンは必死に走る。カレンの手を掴んだと思われたが、力尽き、カレンもろとも線路下の土手を転げ落ちた。 カレンはジャクソンを抱いたまま歌う。「♪遥か遠くへ・・・あいつは運がなかった〜ケンタッキー州へ行った〜・・・」 そして、煙草に火をつけるとジャクソンにくわえさせた。二人のもとへ、刑事がやって来た。 しかし、二人はもう逃げない。何ものにも替え難い相互の信頼が二人を結び付け、穏やかな顔をしているのだった。 |
| 映画館主から アメリカを根強く巣食う人種差別問題。本作は、脱走した二人を主軸にドラマが展開しますが、手錠で繋がれたのが白人と黒人となると、そこに単なる逃亡劇だけではすまない葛藤が生まれるのは必然です。 黒人差別主義者のトニー・カーチスがたまたま黒人と手錠に繋がれ、逃亡していく過程で人間的に成長するドラマでもあります。 アメリカ社会の人種差別は根深いものがあり、日本人の生活からは想像出来にくいものです。 私ごとですが、30数年前の高校3年生の時、新聞配達をしてバイトをしていたのですが、朝日新聞社の派米新聞少年全国10人に選ばれ、夏休みにアメリカへ行ったことがあります。ワシントンでアメリカの新聞少年と交歓会があり、プールでくつろいだ時、二人いた黒人の少年はプールに入りませんでした。白人少年たちは、誘いもせず、当たり前のこととしています。プールの水が汚れるとでもいうのでしょうか。私が目の当たりに人種差別の実態を見た初めての経験でした。子供の時から既にこういう社会なのです。私は非常に憤慨し、気分が悪くなりましたが、勿論どうすることもできませんでした。 スタンリー・クレーマーは、「チャンピオン」’49年、「セールスマンの死」’51年、「真昼の決闘』’52年などのプロデューサーとしてメッセージ色の強い作品を手がけた後、監督に転身。本作が監督第三作目。 以後、「渚にて」’59年、「ニュールンベルグ裁判」’61年などの問題作を発表しています。「招かれざる客」’67年では、黒人と白人の結婚というタブーに踏み込み、「手錠のまゝの脱獄」のテーマをさらに深めています。 本作の成功は、シドニー・ポワチエとトニー・カーチスの二人の名演によるところが大です。シドニー・ポワチエは本作でベルリン国際映画祭男優賞を受賞。後に「野のユリ」’63年で、黒人初のアカデミー主演男優賞を獲得しています。 本作のラストは感動的です。お互いが相手の人間性を理解し、人種や友情をも超えたある種の境地に到達するのです。もはやそこには、逃亡の意味すらも無くなっているのでした。 |
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