「4時の悪魔」
4時の悪魔 1961・米
4時の悪魔

製作:監督:
    マービン・ルロイ
脚本:ライアム・オブライエン
撮影:ジョゼフ・バイロック
音楽:ジョージ・ダニング

出演:スペンサー・トレーシー
    フランク・シナトラ
    ジャン・ピエール・オーモン



     
    

    
物語

タヒチ島から800キロ離れたタウル島へ小型飛行機が降り立った。
若いペロー神父が新任の島の神父としてやって来たのだ。その飛行機には、3人の囚人が同乗していた。ハリー(フランク・シナトラ)、ブッチャー、それに黒人のチャーリーの3人だが、彼らはタヒチ刑務所の看守を刺して脱走を図った連中だった。

タウル島の中心に活火山があり、いつになく黒い噴煙を上げていた。
これまで長年、島の神父を勤めたドウナン神父(スペンサー・トレーシー)は最近酒びたりになっている。若いペロー神父を連れ、町の商店を歩く。ずた袋をさげ、色んな物資をめぐんでもらう。それを火山の麓にある、病院に届けるのだ。

ドウナン神父は刑務所に立ち寄った。島へ来た早々、トラブルを起こした3人の囚人が灼熱の地下老牢に入れられていた。ドウナンは力づくで3人を地下牢から救い出した。島の知事(ジャン・ピエール・オーモン)がその様子を苦々しく眺めている。
「聖職者は囚人を使える」ドウナンは知事に言った。
「囚人達をあずける。その代わり、一人でも逃げたらその時は覚悟しろ」知事は言った。

切り立った断崖を走るトラック。ドウナン神父、ペロー神父、3人の囚人を乗せたトラックが病院へ着いた。マーガリット婦長や医師たちが歓迎した。
ハリーたちは出てきた子供の患者を見て目を見張った。「ライ患者だ!」
そこは、ドウナン神父が十数年前に建てたライ病棟だったのである。

ペロー神父は医師からドウナン神父の苦悩を聞かされた。
ドウナンがこの島へ来た16,7年前には教会に人が溢れていた。しかし、ドウナンは島の恐ろしい秘密に気が付いた。この島にはライ病があったのである。
多くの伝染病の中でハンセン病は最も移りにくい病気なのに人々から毛嫌いされた。1924年、スルフォン剤が世に出た。そして、プロミン、ジアソン、プリミゾール、これでハンセン病は駆逐された。
ドウナンは15年前、この病院を建てた。だが、島民はこぞって反対したのだ。観光の妨げになるからだ。教会には人が来なくなり、ドウナンのひとりぼっちの礼拝が続き、数年前からドウナンは酒に走った。

ハリーたちは病院の礼拝堂の修復作業にあたった。ハリーは患者の子供たちの世話をしている美しいマミーユに近づいた。カミーユは目が見えないのだった。
「貴方は悪い人ではないわ」カミーユもハリーに気を許した。だが、ドウナンはハリーをカミーユから引き離した。「カミーユは目が見えないんだぞ」

一行が町に戻った時、火山が凄まじい噴火を起こした。地震で町中がパニックになった。噴火で火口から溶岩流が流れ出した。電話が断線した。
知事はパイロットに火口の様子を見てくるように要請した。ドウナンは病院が心配でならない。知事を説得し、ドウナンも小型機に乗り込んだ。
火口の上空から見ると火口から大きく三筋の溶岩流が流れ出していた。
「病院があった!」ドウナンは叫んだがパイロットには見えなかった。

町では島民の避難が始まっていた。島には帆船と水上飛行機しかない。だが、その時遠くに貨物船の煙が見えた。島民は歓声を上げた。
ドウナンは病院救助に行ける人間を集めようと必死だった。皆、自分のことで精一杯で誰も耳を傾けない。
ドウナンが教会で一人礼拝していると、どさくさに紛れて盗みを働こうと教会に入って来たのは、ハリー、ブッチャー、チャーリーの3人の囚人だった。
「!!行ってくれるか!私が知事に減刑を頼んでやる」ドウナンは嫌がる3人を説得した。
「どうせもう、生きてはいない」知事は救助に反対した。「病院の屋根を見たんだ!」ドウナンは食い下がった。
帆船の船長が見かねて言った。「貴方みたいな頑固者は初めてだ。明日の4時までしか待てない。その後は引き潮になる」

小型機からパラシュートで病院の上空へ飛び降りるドウナン、3人の囚人。3人は朝鮮戦争でパラシュート部隊だったのである。
病院は無事だったが、溶岩流が迫っていた。急ぎ山を降りねばならない。病院を全員が去った時、地震で病院が崩れ落ちた。溶岩流を避けながら山をロープで登る。
カミーユを背負って登るハリー。患者の子供に抱きつかれるブッチャー、「わっ、触るな、・・・アーもう移っちまった」
洞窟で避難している時、ハリーとカミーユは結婚した。
マーガリット婦長は嘆いた。「そんな、カミーユがあんな最低な男と・・・」
ドウナンは言った。「そりゃ違う、ハリーは無事にタヒチに行けたのに危険を承知で助けてくれた。友人であり、立派な男だ」

ドシャブリの雨が止み、再び山道を下る時、ブッチャーが底なし沼に足を取られ沈んでいった。
谷を渡る橋が崩れかかっていた。ドウナンとチャーリーは橋の支柱を支えた。皆がゆっくりと橋を渡りきった時、噴火が起き、支柱がチャーリーの胸に突き刺さった。そして橋は崩れ遥か下界に落ちて行く。

無事に帆船まで全員を送り届け、ハリーは言う。「俺は戻る。二人をあのままにはしておけん」カミーユはこの男は止めても無駄だと悟っていた。
谷の対岸に戻ったハリーを見て瀕死のチャーリーが言った。「戻ってくるなんてハリーらしいや」そして死んだ。
火山が不気味な唸り声を発していた。
ハリーは対岸のドウナンに叫ぶ。「又、会おうな」
「あぁ、又な」ドウナンが答えたその時、巨大な噴火が・・・

船から全員が見た。島全体が爆発し、跡形もなく消滅していくのを。
映画館主から

この「4時の悪魔」は高校生の時、信州松本の映画館で見ましたが以外と知られていません。
かなりの大作で面白く、火山の爆発から病院の患者たちを救えるのかといったスリルとサスペンスに満ちたストーリーなのです。火山の噴火シーンなどの特撮は今から見れば稚拙ですが、俳優の顔ぶれがそれを補って余りあります。

島の頑固な神父ドウナンに名優スペンサー・トレーシー。彼はこの年、「ニュールンベルグ裁判」にも出演しており、その演技はいぶし銀の光を放ち、かのローレンス・オリビエをして演技の鏡と言わしめたほどです。この6年後、「招かれざる客」を最後に心臓麻痺で世を去りました。

そして、囚人役のフランク・シナトラ。ミュージカルスターでありながらシリアスな作品も多く、「地上より永遠に」(’53年)でアカデミー助演男優賞、「黄金の腕」(’56年)、「影なき狙撃者」(’62年)などが光っていますが、その合間にもこういった作品にも出演して彼らしい持ち味を発揮していました。

監督のマービン・ルロイは何といっても「哀愁」(’40年、ロバート・テイラー、ビビアン・リー主演)が有名です。スペクタクル史劇「クォ・ヴァディス」(’51年、ロバート・テイラー、デボラ・カー主演)も忘れ難い映画でした。

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