| 鳥 1963・米 | ||
![]() 製作:監督: アルフレッド・ヒッチコック 原作:ダフネ・デュ・モ−リア 脚本:エバン・ハンター 撮影:ロバート・バークス 音楽:バーナード・ハ−マン 出演:ティッピ・ヘドレン ロッド・テーラー ジェシカ・タンディ スザンヌ・プレシェット ![]() |
物語 サンフランシスコの上空を無数のカモメが舞っていた。新聞社社長令嬢のメラニ−は小鳥店で弁護士のミッチと知り合った。何となくミッチに惹かれたメラニ−は、ラヴ・バードのひとつがいを持ち、ひそかにボデガ湾の彼の母親の家へ向かった。ミッチは週末、母と妹と共に過ごすのだ。 妹の通う小学校の女教師アニ−からミッチの情報を得た。妹の名前はキャシーだ。モーターボートを借り、湾を横切り、彼の家へラヴ・バードを置いてボートに戻った。様子を見ているとミッチがそれに気がついた。メラニ−はエンジンを吹かしボートを走らせた。しかし、対岸では車で来たミッチがすでに待っていた。 メラニ−が笑みを浮かべて立ち上がった、その瞬間、1羽のカモメが舞い降りてメラニ−の額を一撃した。血が流れた。 レストランで傷の手当てをしていると、ミッチの母親リディアが入ってきた。リディアは息子が若い女性といると機嫌が悪い。 その夜、メラニ−は女教師アニ−の家に泊めてもらうことにした。アニ−はもとミッチの婚約者だったが、母親の反対にあって破談になったのだった。 翌日曜日に、メラニ−達がミッチのガーデンパーティに呼ばれ談笑している所へ、突然、無数のカモメが舞い降りて来て大混乱になった。大事には至らなかったものの、度重なる異変にミッチもメラニ−も不安になる。 夜、リディアもキャシーも落ち着きを取り戻した、・・・と、その時、暖炉の中からおびただしい雀の大群が部屋の中へ飛び出して来た。ミッチは雀を追い払い、メラニ−はリディアとキャシーを守った。 翌日、リディアは農場主の死体を発見し半狂乱になる。農場主は何者かに目玉をえぐられていた。 メラニ−は小学校へキャシーを迎えに行った。授業が終わるのを待っていると、メラニ−の後ろのジャングルジムにカラスが1羽舞い降りた。すると又1羽、2羽・・・・やがて黒山のカラスの群れだ。ぞっとしたメラニ−がそっと教室へ行き、アニ−に伝え、生徒達を帰宅させることにした。 生徒達が校舎を出た時、カラスが一斉に襲ってきた。泣きながら懸命に走る生徒。転ぶ者、首をカラスに突付かれる者。 レストランにたどり着き、メラニ−は父親に電話で異常事態を告げるが相手にされない。ミッチが保安官を連れてやってくる。 その頃、レストランの周辺には、カラスとカモメの大群が集まりつつあった。まず、店の向かいのガソリンスタンドの店員がカモメに頭を突かれ倒れた。給油管からガソリンが流れている。近くの客が知らずに煙草に火をつけた。店の中からメラニ−達が叫ぶ。「危ない!ガソリンが・・・」 しかし、投げ捨てられたマッチの火がガソリンに引火。大爆発を起こす。 上空から下界の喧騒を眺めながらカモメが1羽、2羽・・・舞い降りていく。レストランのガラスに体当たりしてくるカモメの群れ。逃げ惑う人々。 メラニ−とミッチはキャシーをあずかってくれているアニ−の家へ向かった。ここでも惨劇があった。アニ−は玄関先で死んでいた。キャシーは家の中で怯えていた。 全員を家に連れ帰ったミッチは、窓や戸に板を打ち付け、暖炉に火をつけ、鳥の襲撃に備えた。しばらくの間、異様に静まり返っていたが、やがて凄まじい羽音とともに、猛烈な鳥の攻撃が始まった。板戸を鳥のくちばしが突付いて穴をあけてくる。破れたガラス窓から鳥が入ろうとする。ミッチは血だらけになりながら必死に応戦した。 そのうち、鳥の襲撃がピタリと止んだ。皆は疲れきって少し仮眠をとるがメラニ−は寝つかれない。屋根裏で物音がした。メラニ−が恐る恐る階段を昇って屋根裏部屋に入ると天井に穴が開いていた。メラニ−を待っていたかのように鳥が一斉に動き出した。手、足、顔が突かれ血が噴出す、服はずたずたに引き裂かれるメラニ−。ようやくミッチに助けられた時、メラニ−は恐怖のあまり、神経が侵されていた。サンフランシスコへ行って治療が必要だ。 夜が明け白む頃、ミッチはこの家から脱出する決意をする。玄関先に車を回し、静かに移動する。今はおとなしくしている鳥が屋根の上はおろか、足元にたむろしている。全員が車に乗り込んだ。キャシーがラヴ・バードを持っていくと言うのでミッチが車に乗せた。遥か彼方まで無数の鳥が群がる中、車はゆっくり滑り出して行くのだった。 |
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| 映画館主から ヒッチコックが「サイコ」に続いて撮ったショッカー映画です。今度の相手は人間ではなく鳥です。しかも、鷲や鷹といった獰猛な鳥ではなく、カモメ、カラス、雀といった、ごく身近な鳥が突然人間を襲うという、いわば平和とパニックが背中合わせにある状況を描いています。 鳥はいっぺんに襲ってはこなく、じわじわと次第にエスカレートしていきます。その、瞬間的なショックと持続的なサスペンスの演出は正にヒッチコックならではのものです。スピルバーグの「ジョーズ」にもその影響が感じられます。 まだCGなど無い時代ですが、鳥達も専門家によって調教され、アニメーションや剥製を当時としては最高の技術で合成して、あの迫力あるシーンを作りました。 この映画の中では、何故鳥が人間を襲うのかという説明がありません。ラストシーンも漠然とした不安を残したまま終わります。まだこの後、鳥との戦いがあるのか、あるいは戦いは始まったばかりなのか。この終わり方は「汚名」のラストとそっくりです。スパイの館に捕らわれていたイングリット・バーグマンをケーリー・グランドが救い出すくだりです。スパイの代わりにここでは鳥ですが。 ヒッチコックはこの映画のテーマを「自然は復讐する」と語っていたそうです。現代的にいうなら、環境問題に対する警告のメッセージということでしょうか。 カメラのロバート・バークスの際立ったシーンは、ガソリンスタンドが爆発した直後、上空から大俯瞰したアングルです。下界の喧騒を見下ろしていると、そこへカモメがフワリと1羽、また1羽、カメラが鳥の目になっています。それはまるで、人間の世界を見渡す神の目のようでもあります。 参考文献:「ヒッチコックを読む」 フィルムアート社 |
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