| サブウェイ・パニック 1974・米 |
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![]() 製作:ガブリエル・カッカ 監督:ジョセフ・サージェント 原作:ジョン・ゴディ 脚本:ピーター・ストーン 撮影:オーウェン・ロイゥマン 音楽:デビッド・シャイア 出演:ウォルター・マッソー ロバート・ショー マーチン・バルサム ヘクター・エリゾンド アール・ハインドマン ジェームズ・ブロデリック トニー・ロバーツ ケネス・マクミラン リー・ウォーレス ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語 ニューヨークの地下鉄。59丁目南行きの電車ベラム123号に帽子を被った初老の男が乗り込んだ。この男グリーン(マーチン・バルサム)は風邪気味なのかクシャミを連発している。 「次は51丁目、51丁目・・・」 見習いの車掌は黒人の先輩車掌から実地指導を受けて張り切っていた。「スジがいい。半年したら運転手に志願しろ」 新人車掌は気をよくした。 51丁目で又、帽子を被った男グレイ(ヘクター・エリゾンド)が乗り込む。次の駅で又、帽子の男ブラウン(アール・ハインドマン)が乗ってきた。 その次の駅。列車の運転席にホームから近づいた男ブルー(ロバート・ショー)は窓から顔を出した運転手ドイル(ジェームズ・ブロデリック)にピストルを向けた。「!どうするつもりだ」 「「列車をいただく」 最後部の新人車掌も男の威嚇に青くなった。こうしてベラム123号の運命は4人の謎の男達の手に握られたのだ。 地下鉄公安員のガーバー警部補(ウォルター・マッソー)は日本の東京からやって来た東京の地下鉄の重役達を案内していた。ヤシムラ、マツモト、トマシタ、ナカバシという日本人はやたらヘラヘラしてお愛想笑いをする。ガーバーはニューヨークの地下鉄本部を紹介する。 「ニューヨークの地下鉄は世界最大。全長381キロ、車両7千・・・」 ガーバーは自分に案内役を押し付けた奴らを憎みたい心境だった。 「皆に言う!席を立つな!」 ブルーが小銃を構えて乗客に向かっって叫ぶ。そこは先頭車両だ。乗客17人と車掌を入れて18人が人質だ。先ほど28丁目と23丁目の中間地点で一旦止められた列車は2両目以降を切り離し、先頭車両だけ前に進んだところで止まったのだ。 「立つ者は撃ち殺す!」 ブルーが全員を威嚇した。老人や子供もいる。彼らは震え上がった。 ガーバーが日本人たちを連れて管制本部にやって来た。何やら本部の様子がおかしい。「運行が止まって連絡がとれないんだ」 係官が運行電光板を見ている。電光板にはニューヨークの全ての列車の動きが表示されている。ベラム123号が変なところで止まり、後続の列車がつかえているのだった。 その時、電話が鳴った。 「ベラム123号より本部へ、応答せよ」 係官が出た。「地下鉄を駄目にするつもりか!理由を言え!」 係官が怒鳴ると、「列車を乗っ取った」 「・・・?!君は誰だ、そこは運転席だぞ」 「武装集団さ、先頭車両に18人を人質にした」 係官は何が起きたか分からない。「市長に言うのだ。百万ドル払えば人質を全て解放する」 「バ、バカな・・・」 「今、2時13分。3時13分までに金を渡せ。遅れたら1分ごとに人質を一人殺す」 ガーバーが電話を替わった。「公安局のガーバー警部補だ。君は?」 「乗っ取り犯人さ」 「どう逃げる気だ、地下トンネルだぞ」 「早く市長に言え、3時13分から一人づつ殺す」 ブルーが言った。 グランドセントラル主任キャズは28丁目駅から線路に降り列車に向かっていた。途中で2両目以降の列車から降ろされた乗客たちとすれ違った。「危ないですよ」と運転手のドイルが言うのにキャズは「こんなことを許せるか!」と息巻きながら歩いていく。 その頃28丁目駅にいた黒人警官のジェームスはキャズを連れ戻せとの無線連絡を受け、キャズの後を追った。 列車からグレイは何者かが歩いてくるのを見た。「止まれ!」 グレイは銃を向けたがキャズは、「地下鉄は市民の財産だ、乱暴は許さん!」 と近づいてきた。グレイは銃を乱射した。キャズは無残に撃たれ倒れる。後を追ってきたジェームスは脇に隠れた。 車内に悲鳴が起こった。グリーンは顔をゆがめる。「殺さない約束だ・・・」 ブルーはグレイを睨んだ。グレイは「止まれと言ったんだ」と言い訳がましく言った。鼻をぐずつかせながら首を振るグリーンは暴力沙汰は嫌いだった。 ジェームスの無線連絡で本部は青ざめた。最初の犠牲者が出てしまった。 ガーバーがブルーと電話している途中、『グシュン』という声が聞こえた。ブルーの横にグリーンがいた。「お大事に」 ガーバーは言った。「あと49分だ」とブルー。「そんなに短時間に金なんてできないぜ」とガーバー。「48分」 ブルーは容赦なかった。「市長と交渉中だ、待ってくれ!」 市長のもとに警視総監らが訪れた。「払うしかないと思うが・・・」 と総監。 「だが、皆何と言うかなマスコミや市民は。ジェシーはどう思う?」 とニューヨーク市長は妻の顔を見た。「百万ドルは大金だけどお返しがあるわ」 「どんな?」 「18人の票よ」 市長はそれを聞き腹を決めた。「払う準備を!」 「市長が承知した!金を払うことになった」 ガーバーがブルーに伝えた。「では次の指令だ。支払い紙幣の額面・・・50ドル札で50万、100ドル紙幣で50万。200枚づつ丈夫なゴムバンドで束にしろ!古紙幣で番号も不揃いにしろ!以上だ。金が届いたら又指令する」 「複雑すぎる、もう少し時間をくれ」 「やる気になればできる」 「クソ!」 「あと26分だ」 ブルーは冷たく言い放った。 「皆に朗報がある」 ブルーが人質たちに言った。「市長が支払いに応じた」 車内に歓声が上がった。「それで金額はいくらかね?」一人の老人が質問した。「気になるか」 「私達の値段を知りたい」 「百万ドルだ」 「・・・そんなものか」 南マンハッタン連邦準備銀行。犯人の要求どおりに古い紙幣を束にしてゴムバンドでとめる作業が急ピッチで進められた。 ガーバーは捜査司令部に指示した。「過去10年間で懲罰でクビになった運転手の名簿を調べてくれ。犯人の中に列車の運転ができる奴がいる」 金の準備に手間取っている。ガーバーも人質の乗客もいらついていた。百万ドル入りの袋がパトカーでニューヨークの町を突っ走る。 あと8分。会議所前を通過。センター・ストリートを北進中。「急げ、あと4分」 ガーバーがブルーに電話した。「駅まで3時13分ということにしてくれ。そこからはすぐ運べる」 「・・・それだけだぞ、譲歩は」 グリーンはもう間に合わないと心配していた。「最初に誰を殺す?」 「誰でもいいさ」 ブルーはあっさり言った。 パトカーが自転車を避けようとして急ハンドルを切り横転した。万事休すか! 白バイが金の袋を引っ張り出し走る。もう1分を切っている。ガーバーは妙案を思いつきブルーに電話した。「金が到着した!聞こえたか?到着したぞ」 「あぶないところだったな」 ブルーの声。「多少遅れたとしたら殺していたか?」「殺したさ」「・・・」 「金の届け方を指示する。丸腰の警官を2名よこせ」 ブルーの声が言う。「ぐしゅん」 くしゃみの声がした。「お大事に」 ガーバーは言った。「線路伝いに一人が金を持ち、もう一人は懐中電灯で左右を照らしながら来い。着いたら後部ドアを開けるから金を床に投げ出すんだ」 ブルーの指示だった。「いいか、ひとつでも間違えば一人づつ殺す。5分の間に届けろ」 そうこうするうちに金の袋が駅に届いた。警官が急ぎ地下へ降りた。二人の警官が線路を歩く。暗い先方に列車が止まっていた。その時、銃声がした。警官達は線路に伏せた。どこかに潜んでいた狙撃班の誰かが発砲したのだ。列車の後部にいたグレイが機関銃を撃ちまくった。しばらくの沈黙。 隠れていた警官のジェームスが二人の警官に言った。「金を届けろ」 二人は恐る恐る立ち上がり列車に近づいていく。後部ドアが開き袋が投げ入れられた。 袋から床に出された札束の山。均等に札束をコートの内ポケットに納める犯人たち。乗客たちはじっとそれを眺めているだけだ。 「次の指示を与える」 ブルーが電話で叫ぶ。「この通話が終わったら送電を開始しろ。サウス・フェリーまで線路を空けろ。全部青信号にするのだ。青だぞ、ひとつでも赤があったら一人殺す。警官を外にだせ。残っていたら人質が死ぬぞ」 ガーバーは舌打ちした。「忠告するよ、これが終わったら精神病院へ行け」 「実行が完了したら知らせろ」 ガーバーは公安局と警察双方に指令を伝えた。サウス・フェリーまで行ってそこから船か飛行機で逃げる気か?グランド・セントラルの表示板で列車の位置は分かる。地上からでも追える。 その時突然、列車が動き始めたのが表示板で分かった。「どういうつもりだ、まだ青信号になってない」 本部は色めきたった。 列車は18丁目の下で止まった。ガーバーはそこを任して地上に出ることにした。地上に配備してあるパトカーで追うつもりだ。 4人は18丁目駅の下で列車を止め、列車から降りた。列車に何か細工を施している。 「ベラム123号へ、青信号にしたぞ」 ガーバーの替わりに係官が電話した。「ガーバーはどうした?」 ブルーの声。「ションベンだ」 「ガーバーによろしく言え」 「裁判所で君が言え」 係官が応える。 列車が走り始めた。4人は列車に乗っていない。 少し走ったところで乗客の一人がピストルを手に立ち上がった。「俺は警官なんだ」 男は列車の後部ドアを開けて転がり出た。暗い中なので4人には見えていない。 列車は走りスピードを上げていく。駅のホームに差し掛かると警官たちは姿を隠す。 4人は帽子を替え、眼がねを外し、コートを裏返し、付け髭を取った。するとまったくの別人のようだ。 銃を回収しようとしたがグレイは「これだけが頼りだ」と拒否した。常にブルーに反抗的だったグレイはブルーに射殺された。 列車から転がり出た警官はその様子を近寄りながら見ている。 パトカーで本部からの連絡を受けながら列車の上を追跡していたガーバーは「何か変だ」と感じていた。犯人達は列車に乗っていないのではないか。それは直感ともいえるものだ。すぐさま18丁目駅に引き返した。 線路の警官は狙いを定めて犯人の一人を撃った。ブラウンが倒れた。異常事態だ。「先に行け・・・例の場所で落ち合おう」 ブルーがグリーンに言った。グリーンは死んだグレイのポケットから金を回収し梯子を登った。そこに地上に出る鉄格子の蓋がある。グリーンは蓋を開けて地上に出た。公園の横だ。そこへ遅れてやって来たパトカーからガーバーが降り立った。 線路の警官とブルーが撃ち合いになる。警官が撃たれた。ブルーは警官に近づいていく。「・・・警官か?」 「葬儀には市長も参列するさ」 ブルーが警官にとどめを刺そうとピストルを向けたとき、「拳銃を捨ててこっちを向け!」 背後から声がした。 ガーバーがブルーにピストルを向けて歩いてくる。ブルーは観念した。「ガーバーか・・・ところで、この州にまだ死刑はあるか?」 「死刑か?もうやめにしたのだ」 ガーバーが答えると、「・・・残念」 ブルーは線路脇の高圧電流に靴を接触させた。「ウウウ・・・」 ブルーの体から煙が上がり前のめりに倒れた。ガーバーは顔をしかめて成すすべもない。 暴走する列車内はパニックになっていた。どこめで行っても青信号が続く。運転手のいない列車は止まらない。 サウス・フェリーを越えたところで初めて赤信号だった。赤信号を無視して走るとセンサーが検知して急ブレーキがかかった。乗客は床に放り出されたが列車は止まった。 犯人4人のうち3人までは素性が判明した。いづれも札付きの悪や雇われ戦争屋だった。この3人は既に死んでいる。残る一人は列車の運転のできる失業中の運転手だと思われた。 クビになった運転手は78名だった。うち8名は死亡。22名は再雇用されている。11人は服役中。26名は遠くに転居。1名は精神病院に入院。1名はニューヨーク市警だがアリバイあり。すると9名が残る。 さっそく9名のもとに捜査が開始された。 グリーンはアパートのベッドの上に札束をぶちまけ悦にいっていた。その上に飛び乗り歓喜に浸っているとドアがノックされた。「公安局だ」 !!グリーンはあわてて札束をシーツで包みキッチンの開きに放り込む。 「・・・トイレだ」 ドアの外に待機していたガーバーに部屋の中から声が聞こえた。「手を洗うだろうな」 ガーバーは相棒に言った。するとドアが開き男が顔を出した。「中に入っても?」 「今日の午後はどこに?」 「ここだ」 「何を?」 「昼寝だ」 グリーンはベッドの脇に札束がひとつ落ちているのに気づく。さりげなくベッドに腰をかけ札束をベッド下に足で蹴る。「地下鉄の乗っ取り事件は知ってるな」 「乗っ取り?冗談だろ?」 ガーバーの相棒が煙草をくわえる。火を貸してくれとキッチンのガスを点けようとした。グリーンは慌てる。「コツがあるんだ」 ガスを点けると相棒が煙草を吸う。 二人がドアから出て行く。「ここは俺の部屋だ!かきまわさないでくれ!」 グリーンが追い払うように言った。その時だ。グリーンの鼻がむずむずし、「グショーン」大きなくしゃみ。閉じかかったドアが再び開き、ガーバーの疑惑100%の眼差しがグリーンを睨んできた。 |
| 映画館主から 「0011ナポレオン・ソロ」劇場版で1966年に監督デビューを果たした、ジョセフ・サージェントのサスペンス映画の傑作。 ニューヨークの地下鉄ハイジャック事件を中心に犯人側と刑事の行き詰る駆け引きがスピード感を持って描かれていきます。 それに随所にユーモア感覚が溢れ、思わず笑いを誘うのです。極め付きはラストもラストのウォルター・マッソーの表情。残る犯人の一人を追い詰めた会心の疑惑の眼差しに誰しも噴出すでしょう。 その刑事役に飄々とした演技で定評のウォルター・マッソー。「シャレード」(’63年、監督:スタンリー・ドーネン、主演:ケーリー・グラント、オードリー・ヘップバーン)での悪役も印象深いのですが、「恋人よ帰れ!我が胸に」(’66年、監督:ビリー・ワイルダー)、「おかしな二人」(’68年、監督:ジーン・サックス)でジャック・レモンと絶妙なコンビを組み始めてからコメディアンとしての本領を発揮。 「恋人よ帰れ!我が胸に」ではアカデミー助演男優賞を獲得しています。 以来9本の映画でジャック・レモンとコンビを組んでいます。 「マッソーを起用すると映画にタバスコを一振りしたような絶妙な効果がある」とは、職人監督ビリー・ワイルダーの弁です。 もう一方のハイジャック犯のロバート・ショーもくせ者。「007/危機一発(ロシアより愛をこめて)」(’63年)で強烈な印象を与えた彼が特に広く知られるようになったのは、やはりスピルバーグの出世作「ジョーズ」(’75年)でありましょう。最後にサメの餌食になるシャーク・ハンターの男くさい存在感は忘れられるものではありません。 もう一人の犯人役、マーチン・バルサム。「十二人の怒れる男」(’57年)の陪審員役、「サイコ」(’60年)の探偵役が印象的でした。 「サブウエイ・パニック」では終始くしゃみをする犯人役でした。 |
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