「ハリーの災難」
ハリーの災難 1956・米
ハリーの災難

製作:監督:
    アルフレッド・ヒッチコック
原作:ジャック・トレバー・ストーリー
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
撮影:ロバート・パークス
音楽:バーナード・ハーマン

出演:ジョン・フォーサイス
    シャーリー・マクレーン
    エドモンド・グーエン
    ミルドレッド・ナトウィック
    ジェリー・マシューズ








物語

ニュー・イングランドのヴァーモント。のどかな田園風景に紅葉が映える。
おもちゃの光線銃を持った少年、アーニー(ジェリー・マシューズ)が歩いてくる。すると、銃声が三発!聞こえた。「お前のような奴の扱いには慣れてるんだ」という男の声もした。

アーニーが森を抜けていくと、そこに男の死体が大の字に横たわっていた。アーニーは丘を駆け下りた。

老船長ワイルス(エドモンド・グーエン)が銃を持ち、手ごたえのあった方角へ歩いて行く。ここは禁猟区なのだが、彼は密かにウサギを撃ちにきたのだ。そして男の死体を見つけた。彼が誤って男を撃ってしまったのか。
えらいこっちゃ。死体の背広の内ポケットを探ると手紙が出てきた。それによると、男の名は「ハリー・ワープ」だ。死体をどう処分しよう。

そこへオールドミスのグレイヴリー(ミルドレッド・ナトウィック)がやって来た。死体を見ても驚きもせず、ワイルスを「後で家に来ませんか、ワインをご馳走するわ」なんて誘ったりする。老船長は前からグレイヴリーに気があったらしく大いに喜ぶ。

ミス・グレイヴリーが去った後、人の気配にワイルスが木の陰に隠れると、アーニーが若い母親ジェニファー(シャーリー・マクレーン)を連れてきた。死体を見て「まあ、ハリーだわ」と叫ぶが、別に驚くわけでもない。「ここに人がいたことは忘れなさい」二人は立ち去っていく。

その後、ド近眼の医師グリーンボウが本を読みながら歩いてきて、死体につまづいて転ぶ。目がねを探してかけると又行ってしまう。
続いて浮浪者がやって来た。彼は死体の足から靴を脱がすと自分のボロ靴と取り替えた。
ワイルスは木陰で居眠りを始めた。

スケッチブックをかかえてやって来た貧乏な画家サム(ジョン・フォーサイス)は、死体を見つけると、顔のスケッチを始めた。
目覚めたワイルスはサムと顔見知りだったので、事情を打ち明ける。
サムは過ちなら仕方ないと言い、二人で死体を木陰に隠す。
ジェニファーが死体をハリーと知っていたと知り、ジェニファーの家へ行く。

そこから話は変な方向へ展開する。
ジェニファーが言うには、ハリーは死んだ夫の兄だが、結婚を迫られて一度は式をあげたものの、家を省みない性格に嫌気が指しこの村へ逃げてきたのだ。だが、この日の朝、突然ハリーが訪ねて来たので牛乳瓶でハリーを殴ったのだという。ハリーはふらついて森の方へ歩いていったのだ。
すると、ジェニファーが殴ったのがハリーの死因なのか。

そして、ワイルス船長がミス・グレイヴリーの家にワインを戴きに行くと、少年アーニーが死んだウサギを持ってやってくる。ワイルスは気にも止めない。
やがてサムと死体を森の中に埋めたワイルスは、「待てよ、ウサギに当たった弾が俺の撃った弾ならハリーはどうなんだ」 死体を掘り返して調べると、ハリーのこめかみの傷は銃のものではなく鈍器によるものだ。
すると、ジェニファーの告白が・・・。ジェニファーを殺人者にする訳にはいかない。再び死体を埋める。

船長は家に招いたミス・グレイヴリーから意外な告白を受ける。
彼女は森の中でハリーから暴行を受け、必死の抵抗で靴のかかとでハリーの頭を殴ったのだという。ハリーはそのまま倒れた。すると、グレイヴリーが犯人だとしても正当防衛だから死体を隠す必要はない。
二人は森へ行き、死体を掘り返した。

二人がジェニファーの家に行って、顛末を話すと、居合わせたサムは「いくら正当防衛でも新聞はスキャンダルとして取り上げるからまずい」と言い出した。かくして4人は森の中へ行き、死体を埋めた。

雑貨屋の息子アルヴィンは村の保安官助手だ。彼がサムの描いたハリーの顔のスケッチを見て疑惑を抱く。
死体を掘り返しに行った4人は、グリーンボウ医師と出合った。事情を話し、死体をとりあえずジェニファーの家に運ぶ。バスに入れて拭いたり洗ったり。
そこへアルヴィンがやって来たが、適当にごまかし、スケッチの顔もサムが書替えてしまう。

グリーンボウ医師のハリーの死体検証は“心臓麻痺”によるものだった。
こんなところに死体があってはまずい。4人は再び死体を森に運び、服を着せて元の場所に置いた。

すったもんだの途中で、サムはジェニファーに求婚し、ワイルス船長とミス・グレイヴリーは仲良しになった。死体のハリーは埋められたり掘り返されたりの災難だったが、二組のキューピッドの役割を果たしたのだった。

翌朝、少年アーニーは、またまたハリーの死体を発見した!?
映画館主から

ヒッチコックの傑作コメディです。

紅葉の田園風景の中で死体を埋めたり堀り返したりのドタバタです。
巻頭からの紅葉の奇麗なこと。そこに死体が転がっているというアンバランス。

ヒッチコック作品の中では、宣伝の為に来日したにもかかわらず、不評でしたが、殺人を喜劇として扱い、ブラックユーモアにした点はユニークです。
もともと彼はユーモア精神の溢れた監督でしたから、この作品には入れ込んでいたようです。
都合三回も埋められたり掘り返されたりのハリーの災難が二組の男女を結び合わせるキューピッドの役割になるとは微笑ましい話であります。

シャーリー・マクレーンの映画デビュー作品でもあります。翌年、「80日間世界一周」のヒロイン役に、’60年にはビリー・ワイルダーの「アパートの鍵貸します」でスターの地位を決定付けました。なんとも可憐な女優です。

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