| 眼下の敵 1957・米=西独 | |
![]() 製作:監督: ディック・パウエル 原作:D・A・レイナー 脚本:ウェンデル・メイズ 撮影:ハロルド・ロッソン 音楽:リー・ハーライン 出演:ロバート・ミッチャム クルト・ユルゲンス アル・ヘディソン セオドア・バイケル ラッセル・コリンズ カート・クルーガー ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語 第二次大戦中の南大西洋。アメリカの駆逐艦ヘインズ号は退屈なほどの洩航を続けていた。 レーダーが敵影を捉えた。目標の針路140度、速度10ノット、方位124度。 乗組員たちが色めきたった。すわ、Uボートの出現か! それまで自室に閉じこもっていたマレル艦長(ロバート・ミッチャム)はてきぱきと指示を出した。 「全員に告ぐ、待ちかねたろう、未確認の船を探知した。朝まで追尾する。戦闘配置につけ!戦闘となっても慌てぬよう」 マレル艦長は、貨物船の航海士だったが、Uボートの魚雷攻撃を受け、目の前で妻を失うという辛い過去を背負っていた。 同じ頃、海中のUボートの艦長フォン・ストルバーグ(クルト・ユルゲンス)も艦尾8000メートルに船影を捉えていた。 「逆反射像を捉えた、念のため、30分ごとにジグザグ走行する」 フォン艦長は、この戦争で二人の息子を失うという悲しみを味わっていた。ナチスには批判的だがドイツ軍人としての任務をまっとうしようとしている。 「この戦争に栄誉は無い。勝っても醜悪だ。無益な戦争だ」 フォン艦長は言うのである。 ヘインズ号はレーダーで相手を捉えていた。 「何故、敵とわかります?」 乗組員の質問にマレル艦長は答えた。 「いうなれば、第六感という奴かな、レーダー電波の向うに頭脳を感じる・・・これは私の戦争ではない、敵の艦長同様、任務を遂行するだけだ・・・いやな任務をだ・・・」 ヘインズ号はそのまま敵影を208キロ追跡した。右舷3度、5400メートルの海上にUボートが姿を現した。 再び潜航したUボートに対しヘインズ号は速度を落として相手の出方を見る。 「妙ですね・・・ジグザグ走行もせず離れていく・・・」 Uボートの乗組員が言った。「よほどの利口か馬鹿なのか・・・」 と、フォン艦長。 既に潜望鏡により、相手はアメリカ駆逐艦のバックレー級と見極めていた。 「魚雷発射!」 フォン艦長は船尾の魚雷発射を指示した。 「左舷に高速推進音!」 ヘインズ号の乗組員が魚雷の音をキャッチした。 「左舷停止!右舷全速!」 マレル艦長の指示でヘインズ号は向きを変え、危うく魚雷をかわした。2つの魚雷がヘインズ号の脇を猛スピードで走り抜けた。 Uボートは深度100メートルに潜航した。 「あの距離ではずすとは!?」 「敵の艦長は素人ではないな」 フォン艦長は初めて侮れない敵を知る。 「ソナー係、水中探知に入れ!反射音をスピーカーに流せ!」 マレル艦長は深度150メートルに設定した爆雷を次々と発射させた。 爆雷は海中150メートルで次々と爆発し、Uボートを脅かした。 爆雷の勢いは海面で水柱を立てた。 マレル艦長は“足止め作戦”に出た。何らかの密命を帯びているであろうUボートに対し、近づいては爆雷攻撃、後退して1時間後に再び近づいて爆雷攻撃を繰り返すのだ。ヘインズ号の爆雷もこれなら7時間はもつ。そのうちに援軍が来るだろう。 「我々の作戦に気付けば敵は降伏するか、抗戦に出る。・・・長い作戦だが敵はもっと辛い・・・」 Uボートでは1時間ごとに爆雷攻撃を受け、次第に緊張が高まってきた。精神に変調をきたす者も出てきた。 フォン艦長はそれを静め、レコードをかける。ドイツ国民に親しまれた歌だ。音量を最大にして皆で歌いだした。精神に変調をきたした者も歌い始めた。 だが、フォン艦長は策を練っていた。敵の爆雷と爆雷の間に数分の隙を見出していた。その時、角度を変え4発の魚雷を同時に発射すればどれか当たる! ヘインズ号では海中からの奇妙な音楽をキャッチしていた。「パーティーらしい・・・」 しかし、その後、Uボートから発射された魚雷4発のうちの1発がヘインズ号を直撃したのである。ボイラー室と機関室が直撃を受け火の海だった。 マレル艦長は更に甲板にマットを集め火をつけさせた。艦全体の火災を装うのだ。 マレル艦長は全員に離艦を指示した。 海上に浮上したUボートはサーチライトで『5分後に沈める』と信号を送った。 ヘインズ号はそれに対し、『了解、感謝する』 と答えた。 期せずして双方の激しい銃撃戦が開始された。 フォン艦長はUボートに時限爆弾をセットさせ、全員に離艦を命じた。 ところが、マレル艦長は皆が離艦したのを確認するや、ヘインズ号をUボートに体当たりさせたのである。 Uボートはヘインズ号の下に潜り込む形となった。 フォン艦長は離艦しようとして戦友のハイニの姿がないのを知り、再びUボートの中に入った。ハイニは傷つき動けない。近くで時限爆弾が時を刻んでいた。 艦の上までハイニを背負って持ち上げたフォン艦長は、ヘインズ号の船橋に立つ一人の男と目が合った。マレル艦長であった。 『・・・この男だな』 フォン艦長は挙手をした。マレル艦長も挙手を返した。 お互いに敵同士ながら敬意を表わしたのである。続いてマレル艦長がロープを投げてよこした。怪我人を上げろと手で招いた。ヘインズ号とUボートがロープで結ばれ、ハイニ、続いてフォン艦長がヘインズ号に移った。 その様子を見ていた双方のライフボートの部下達が艦に近づいて来た。我等の艦長を死なせてはならない。もうすぐUボートの時限爆弾が爆発する!ヘインズ号ももろともである。 こうなると敵も味方もなかった。双方の乗組員たちは競うようにヘインズ号によじ登り、助け合うように互いのリーダーをライフボートに乗せ避難したのであった。 直後、Uボートの時限爆弾が爆発した。ヘインズ号も木っ端微塵に吹き飛んだ。 翌日、救援に来たアメリカ駆逐艦の甲板上に二人の艦長の姿がある。 今しも死亡したハイニの葬儀が行われているのだ。死体は厳かに海へ落とされた。 甲板の縁に佇むフォン艦長にマレル艦長が近づくと煙草を差し出した。 フォン艦長はひと吸いして言う。 「私は何度となく死ぬ運命に逆らってきた、今回は君のせいだ」 「では、今度はロープを投げるまい」 マレル艦長は好敵手の顔を見つめて言った。それに対し、フォン艦長が言葉を返した。 「・・・いや、投げるね」 |
| 映画館主から アメリカの駆逐艦とドイツのUボートの息詰まる戦いのすえ、双方の艦長が互いの力量を認め敬意を込めた挙手を交わすという、戦争映画の傑作。 原作はイギリス海軍中佐D・A・レイナーが自らの体験に基づいて書いた小説。 アメリカ駆逐艦の艦長に「帰らざる河」(’54年)のロバート・ミッチャム、Uボートの艦長に「眼には眼を」(’56年)のドイツ人俳優、クルト・ユルゲンスという渋い配役で、共に好演です。 二人の艦長は、共にこの戦争で妻や子供を失うという辛い過去を背負っており、戦争には懐疑的な面もあるという設定です。ロバート・ミッチャムは40歳、クルト・ユルゲンスは41歳という男盛り。 ラスト近くで、この戦いを通じてお互いの力量を認め合い、挙手を交わすというシーンは感動を呼び、更に双方の乗組員たちが危険を顧みず二人の艦長を救い出すといったシーンに至っては熱いものさえこみ上げてきます。 そこに人間賛歌の光があてられた反戦映画の傑作となったのでした。 見終わった後に爽快感を残す戦争映画というものはざらにはありません。 元々は俳優だったディック・パウエル監督は、アメリカ側、ドイツ側、どちらにも偏ることなく対等に扱っており、そのフェア精神は賞賛に値します。 ただ、私見を言えばドイツ側の俳優達にはドイツ語を話して欲しい気がしました。その方がよりリアリティが出たであろうと思われてなりません。 参考文献:「週刊 20世紀シネマ館 NO.28」 講談社 |
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