「誓いの休暇」ダイジェスト
誓いの休暇
    1959・ソ連
誓いの休暇

監督:グリゴーリ・チュフライ
脚本:ワレンチン・イェジョフ
    グリゴーリ・チュフライ
撮影:ウラジミール・ニコラエフ
    エラ・サベリエフ
音楽:ミハイル・ジフ

出演:ウラジミール・イワショフ
    ジャンナ・プロホレンコ
    アントーナ・マクシーモワ
    ニコライ・クリューチコフ


母(アントーナ・マクシーモワ)

片足を失った兵士

アリョーシャ(ウラジミール・イワショフ)

シューラ(ジャンナ・プロホレンコ)

爽やかなロシアの風が二人をそよぐ

もう会えない二人
物語

母(アントーナ・マクシーモワ)は村にある一本の道をいつも眺める。息子のアリョーシャは戦場にいったまま戻らなかったのだ。
息子はロシア解放の英雄と呼ばれている。しかし彼女にとってはただの息子なのだ。英雄でなくてもいいから戻って欲しいだけであった。ただそれだけを期待して道を眺めるのだ。

19歳のアリョーシャ(ウラジミール・イワショフ)は通信兵だ。ナチス・ドイツがロシアに進出してきて苦戦していた最中のことだった。
前線にいたアリョーシャは敵の戦車に追われていた。同僚は皆逃げるか撃たれて死んでいる。
アリョーシャは追われながらたまたま置き去りにされていた対戦車砲を手に取る。眼前に迫る戦車に狙いを定める。撃つ。見事に命中した。更に別の戦車も撃った。命中した。2台の戦車が火を噴く。
こうしてアリョーシャは英雄となった。

将軍に呼ばれたアリョーシャは褒美をもらえることになった。
「それより母に会いたい。行かせてくれませんか。屋根が傷んでいると手紙が来たのです」 アリョーシャは言った。サスノフカ村に行くのに2日、帰るのに2日、屋根の修理に2日。将軍は計6日の休暇を特別に許可してくれた。

帰郷が認められたアリョーシャは心弾ませ帰途に着く。
一人の兵士から 「「俺に会ったと妻に伝えてくれ」石鹸を2個預かる。チェーホフ通りの近くだという。
同僚に車で送られ列車に乗り込んだ。藁が積まれた貨車だった。

乗り換え駅で松葉杖の復員兵士に会った。片足が無かった。アリョーシャは彼のトランクを持ってやる。駅で電報を打つので待っていてくれという。しかし彼はなかなか戻ってこない。
早くしないと次の列車が出てしまうではないか。アリョーシャは電報室へ彼を迎えに走る。彼は悩んでいたのだ。『帰らない』と電報を打つべきかどうかと。その時、係りの女性が叫ぶ。「卑怯よ!どんな気持ちで待っていると思うの?」 片足が無くなっていたって死んだわけではない。妻は夫の無事をどんなに待ちわびているのだろうかと。
結局帰ると決心した時、列車は発車した後だった。次の列車に共に乗った。予定の駅で彼の妻は待っていた。「もう離れないわ」 「でも、こんなになってしまった・・・」 男は言う。出迎えた妻は夫が生きて帰ったことだけで神に感謝した。アリョーシャはそれを見届け姿を消した。

貨車の入り口に哨兵がいた。アリョーシャは貨車に乗るのを阻まれた。肉の缶詰を差し出す。「買収するのか」 と言いながら哨兵は大目に見てくれた。藁が一杯に詰まった貨車でアリョーシャは貨車に揺られた。
貨車が止まる気配がした。その時扉が開き一人の少女が乗ってきた。
アリョーシャは藁の影に身を隠す。貨車が動き出す。少女はアリョーシャに気づき悲鳴を上げた。扉を開けて飛び降りようとするのを必死で止めるアリョーシャ。
少女はシューラ(ジャンナ・プロホレンコ)といった。婚約者のところへ行くのだと言う。二人はパンを食べる。
停車したところで水を汲みに走るアリョーシャ。だが手間取ったアリョーシャを残し列車は発車してしまった。シューラを乗せたまま。

通りかかった車に乗せてもらい列車を追いかける。ポンコツ車でぬかるみに嵌ったりしてようやく次の駅に着くがすでに貨車は発車した後だった。
だがシューラはアリョーシャの荷物を持ってそこで降り待っていた。
アリョーシャは突然思い出した。ここはチェーホフ通りの近くだ。兵士に頼まれた妻への石鹸を届けるのを。
アリョーシャはシューラと共にそのアパートを訪ねる。その妻は何故か別の男と住んでいた。アリョーシャは兵士の伝言と石鹸を渡した。
「あの人は・・・」 妻が言った。「貴方を信じて元気に戦っていますよ!」 アリョーシャは憤然として言う。「あの人には黙っていて・・・」 妻が小声で言った。
アリョーシャとシューラは帰りかけたが、アリョーシャは妻の部屋に再び入り石鹸を取り返す。
そのまま二人は兵士の父親の元を訪れ石鹸を渡した。年老いた父親は息子の話を聞きたがった。
「彼の戦いは常に立派で際立っています。皆に尊敬されています」 アリョーシャは兵士のことは良く知らなかったが、父親は目を潤ませ満足そうだ。

すし詰めの軍用列車に乗り込む二人。立ったまま見つめあう二人。シューラの村でシューラが降りた。アリョーシャも降りた。
「婚約者なんていないの・・・」 シューラが言った。 「でもあの時・・・」 「怖かったの・・・怒らないで」 
列車が走り始める。アリョーシャは飛び乗った。シューラが列車を追って走れる。アリョーシャは手を振った。シューラの姿が小さくなっていく。
アリョーシャはシューラの面影に浸っていた。婚約者がいないというのは、愛の告白ではなかったのか。この広いロシアで再び会うことはないだろう。飛び降りてシューラの元へ戻ろう、と思い始めたとき、突然の爆撃を受ける。列車が火を噴き、鉄橋は寸断されていた。
老人や子供を列車から助けるアリョーシャ。
あたりは兵士が集まり混乱していた。

次の列車が来るまで2時間もかかるという。時間が無い。アリョーシャは筏に乗り川を下る。途中で通りかかったトラックに乗せてもらう。母のいるサスノフカ村にたどり着く。
村人がアリョーシャを見て母親を呼びにいった。母親は畑にいるのだ。
知らせを受けた母が走る。アリョーシャが走る。二人はピッタリ抱き合った。
「帰ったのね、どんなに待ち遠しかったか・・・」 母の目に涙が溢れる。「家に入ってゆっくりして」 「駄目なんだ、急ぐんだよ。移動中にちょっと寄っただけなんだ」 「・・・そんな」 涙ぐむ母親にみやげのマフラーを渡す。「屋根も直せない・・・」 アリョーシャは6日間の休暇を様々な人々との関わりで失ったことを今更のように悔やんだ。
トラックが待ちきれずに警笛を鳴らした。
「行かせない!」 母がアリョーシャを抱きしめる。「ごめんよ」 アリョーシャは母に口づけした。
「帰ってくるからね!」 アリョーシャは車に乗り叫ぶ。母は車が見えなくなるまでその場に立ち尽くしていた。

アリョーシャは戦場に戻った。だが戦争が終わってもアリョーシャは母親の元に返っては来なかったのだ。
映画館主から

ソ連の反戦映画の清々しい傑作。単純な物語ながら戦争の残酷さ、悲哀が身にしみるような出来栄えです。

たまたま武勲を立てた若い兵士。褒美に母親のいる村に帰ることを許可されます。それは6日間でした。順調にいけば2日間は母親と過ごすことが出来たはず。しかし、善良なアリョーシャは色々な人の頼みごとや事件に遭遇しいたずらに時間を失っていくのです。
他人の不幸を見逃せないアリョーシャは片足を失って失意の底にあった兵士を助けるため、何本も列車をやり過ごす。
妻への伝言と石鹸を託されたアリョーシャは訪ね当たった家に妻は別の男とただならぬ仲であるのを知り憤慨する。
ようやく故郷の母に会えるのですが一瞬抱き合っただけで又戦場に帰らねばなりません。そしてアリョーシャはそのまま帰ってはきませんでした。

帰郷の列車の中で知り合った少女シューラとの淡い恋心。ロシアの大地を走る列車と若い男女のつかの間の青春をモノクロの画面は淡々と描いていきます。

戦場からの息子の帰りを待ちわびる母親の姿はソ連版「岸壁の母」です。

1960年カンヌ国際映画祭最優秀賞、サンフランシスコ国際映画祭監督賞、ロンドン国際映画祭監督賞、テヘラン国際映画祭銀メダル(監督賞)受賞作品です。

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