「許されざる者」
許されざる者
   1992・米
許されざる者

製作:監督:
    クリント・イーストウッド
脚本:デビッド・ウェップ・ピープルズ
撮影:ジャック・N・グリーン
音楽:レニー・ニーハウス

出演:クリント・イーストウッド
    モーガン・フリーマン
    ジーン・ハックマン
    リチャード・ハリス
    
ジェームス・ウールヴェット
    サウル・ルビネック
    アンナ・トムソン


顔を切られた娼婦(アンナ・トムソン)

マニー(クリント・イーストウッド)

銃は当たらない

娼婦たち

リチャード・ハリス

ボブは保安官に袋叩きに・・・

カーボーイとの銃撃戦

キッド

モーガン・フリーマンとジーン・ハックマン

ネッドは殺された

雨の中酒場へ向かうマニー

許されざる者
物語

1880年、ワイオミングの寂れた農家。
ウィリアム・マニー(クリント・イーストウッド)はかって列車強盗、殺人などありとあらゆる悪事を働いた極悪人だった。
11年前に娶った妻の説得で悪事から手を洗い真面目な人間になった。その妻に3年前に先立たれ、幼い息子と娘がいるがマニーは慣れない農業や酪農の仕事に手を焼いている。
 
そんなマニーの元へある日、スコフィールド・キッド(ジェームス・ウールヴェット)という若いガンマンがやって来た。
キッドは伝説のガンマンであるマニーを訪ねてきたのだ。彼は言う。
「ビッグ・ウィスキーの街の娼婦がカーボーイに顔を切り刻まれ目をえぐられ乳房も切り取られたんだ。そのカーボーイのイチモツがちょっと小さいのを笑っただけなのにな。二人のカーボーイに1000ドルの賞金が賭けられた。一緒に組まないか」

街の保安官は二人のカーボーイに対して馬を7頭用意しろと命じただけで鞭打ちの刑も免除したのだ。
顔を切り刻まれた娼婦たちはそんな刑の軽さに我慢できず、皆の持ちがねを寄せ集めて1000ドルの賞金を出すことにした。
「それは酷い」 マニーは憤慨した。誘われたがマニーはもう10年以上も銃を手にしていない。
「もう人殺しは止めたんだ」 マニーは申し出を断った。「気が変わったら追ってきな」 キッドが大平原の彼方に去っていくのをいつまでも見送るマニー。
 
マニーは拳銃を手に取り空き缶を撃ってみる。何発撃っても当たらない。今度はライフルを取り出した。ライフルは当たった。いけるかもしれない。
マニーは息子と娘に2週間で帰ると言い置いて馬に乗ろうとしたが、馬に乗るのも久しぶりだ。振り落とされる始末だった。
途中でかっての仲間、ネッド・ローガン(モーガン・フリーマン)の家に立ち寄った。
訳を話し、留守中のことを頼んだマニーだが、ネッドが賞金稼ぎの話に乗ってきたのだ。「分け前は三等分だな」
ネッドの妻はインディアンで昔からマニーを知っており愛想も悪くマニーを睨んでいるようだった。二人はキッドを追った。
 
岩場で銃撃された二人はキッドの仕業と分かり、キッドを説得した。
「今まで何人殺した?」 ネッドが聞くと、「5人だ」 キッドが答えた。
キッドは若いがどこか虚勢を張っている。とにかく3人で街へ向かうしかなさそうだ。
 
街では保安官のリトル・ビル・ダゲット(ジーン・ハックマン)が強引なやり方で牛耳っていた。法秩序を守るという大義名分を盾にしているのだった。
寛大な保安官を装い娼婦たちを軽くあしらっている。もともと娼婦などという職業は軽蔑に値するものだ。
しかしながら街外れに我が家を自分の手で建てるマイホームを自慢に思っている人間的な側面もある。
酒場の主人がダゲットの家に来て 「あいつらがカーボーイに賞金を出した」と告げるとダゲットは 「絶対に許さん」 と意気込んだ。
 
伝説的な殺し屋のイングリッシュ・ボブ(リチャード・ハリス)が小説家ボーチャンプ(サウル・ルビネック)を伴って街に現れたのはそんな時だった。
保安官ダゲットはボブの銃を取り上げるとボブを徹底的に痛めつける。
ダゲットはボブを牢屋に閉じ込め、小説家ボーチャンプを味方につけた。
 
やがてマニーたち三人も街に着いた。他の二人が酒場の2階の娼婦と遊ぶ間、マニーは下で休んでいた。
雨に打たれてきたので悪寒がする。そこへ保安官ダゲットがやって来た。
「拳銃を事務所に差し出せ、という看板が見えなかったのか」 マニーが銃を差し出すとダゲットはマニーを殴りつけた。
イングリッシュ・ボブが受けた仕打ちと同じだった。その隙にネッドとキッドは2階の窓から脱出した。
 
隠れ家でマニーが献身的な介護を受けたのは娼婦のフィッジェラルド(アンナ・トムソン)だった。
顔を切り刻まれた娼婦だ。噂では死んだとされていたが実は生きていた。マニーは回復してフィッツジェラルドと会話を交わす。「天使かと思った」 マニーは感想を述べた。
 
立ち直ったマニーは二人に追いついた。岩場でカーボーイの一人を見つけ銃撃戦の末、マニーが仕留める。
ネッドはもう人を撃てないと悟りこれで分かれるということになった。
マニーとキッドはカーボーイの家を見つけた。便所に入ったカーボーイをキッドが射殺した。
キッドは興奮して手が震えている。「5人殺したといったが、実は初めてなんだ」 
そしてもう自分は降りると言い出した。虚勢の割には臆病者であった。
 
その頃、街では殺人罪でネッドが捕まり、激しい拷問を受けていた。
マニーとキッドが娼婦から賞金を受け取る際、ネッドが死んだと聞かされた。
マニーにかっての『悪』が蘇る。
賞金は二人の子供たちとネッドの妻とキッドの4人で分けるよう言うと単身街に乗り込んだ。
 
雨の降りしきる街。酒場の前には棺おけに入ったネッドの死体が立てられていた。酒場に入ったマニーは銃を構える。保安官ダゲットもいる。
「酒場の主人はどこにいる」 酒場の主人が前に出ると、マニーは容赦なく撃ち殺した。「店の前に死体を飾るからには覚悟があったはずだ」 とマニー。
「なんて卑怯な奴だ」 ダゲットの言葉にマニーは耳を貸さなかった。「お前もそれまでだ」 マニーはダゲットも撃った。
酒場にいたガンマンたちが銃を向けるがマニーはたちどころに始末していった。昔の腕が戻っていた。
虫の息のダゲットの留めを刺すマニー。

マニーは親友を失い家路に付いた。娼婦たちが恐る恐る見送っていた。
映画館主から

クリント・イーストウッドがアカデミー作品賞・監督賞・助演男優賞(ジーン・ハックマン)を獲得した西部劇の秀作。
テレビの「ローハイド」で俳優としてスタートしたイーストウッドですが、映画出演にはまだお呼びがかからなかった時にマカロニ・ウェスタンの「荒野の用心棒」(’64年)でセルジオ・レーネに主役で起用され映画デビューを果たします。
 
テッド・ポスト監督の「奴らを高く吊るせ」(’68年)でも起用され、ドン・シーゲル監督の「ダーティ・ハリー」シリーズというヒットシリーズで大スターになったイーストウッドは、以後監督業にも進出。
「ミスティック・リバー」(’03年)ではアカデミー主演男優賞(ショーン・ペン)、助演男優賞(ティム・ロビンス)を、更に「ミリオンダラー・ベイビー」(’04年)ではアカデミー作品賞、監督、主演女優(ヒラリー・スワンク)、助演男優(モーガン・フリーマン)という主要4部門を独占するという快挙を成し遂げました。
 
「父親たちの星条旗」(’06年)、「硫黄島からの手紙」(’06年)の2部作、「グラン・トリノ」(’08年)と78歳にしてなおも精力的なイーストウッドは現在アメリカで最も注目される監督といってもいいでしょう。
そんな彼は恩師セルジオ・レオーネとドン・シーゲルに特別の感謝の気持ちをこめて捧げた最後の西部劇と銘打ち「許されざる者」を発表したのでした。
 
かってのアウトローのクリント・イーストウッドに賞金稼ぎの話を持ってきた若いガンマン。だがかっては無敵のガンマンも足を洗って10年以上になる。かってのガンマンも今は初老の老いぼれだ。
だが妻に先立たれ二人の子供を育てる彼は暮らしも楽ではない。賞金は喉から手が出るほど欲しい。
かくしてガンマンは金のためにその話しに乗ることにした。しかし銃を取るのも10年ぶりだ。馬に乗るのも久しぶりというわけで、物語の出だしのイーストウッドはかなり冴えない。
 
だが、街の保安官の権力をかさにきた横暴や親友を殺されたことにイーストウッドは昔の自分、列車強盗や殺人を繰り返したかっての自分が蘇る。ラストの銃撃戦は映画のそれまでの鬱憤を晴らすような胸のすく演出です。
 
過去の西部劇のように勧善懲悪ではなく、主人公にも悪の要素が多くあり、街を守るはずの保安官にも横暴な中に人間的な部分を見せるなど、イーストウッドの演出には人間を様々な側面から見ているところがあります。
 
ジョン・ヒューストンの傑作西部劇「許されざる者」(’60年、主演:バート・ランカスター、オードリー・ヘップバーン)は邦題名は同じでもまったく違うお話です。

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