「幕末太陽傳」製作秘話
幕末太陽傳 1957・日活


監督:脚本:
    川島雄三
脚本:田中啓一
    今村昌平
撮影:高村倉太郎
音楽:黛 敏郎

出演:フランキー堺
    石原裕次郎
    南田洋子
    左 幸子
    芦川いづみ
    小林 旭
    小沢昭一
    二谷英明
    岡田真澄
    金子信雄
    西村 晃
    市村俊幸






     
物語

時は文久2年11月。明治維新まであと5年という品川の遊郭、相模屋。
佐平次(フランキー堺)は仲間を引き連れての大尽遊びの放蕩三昧。
仲間は散って帰ったが佐平次は相変わらず遊びほうけていた。

翌朝、番頭(岡田真澄)が勘定の催促に来た。
「へーッ、こんなに安いか!あんなに遊んで」 「ハイ・・・それで・・・お、お勘定を・・・」 「いや、それがね、一銭も持ってねえってんだから面知れえじゃねえか」 「ヘッ!?それじゃ、お連れ様に・・・」 「そのお連れ様がどこにいるんだかサッパリわからねえからなお面知れえ」 「ヒェ〜!」

宿の主人(金子信雄)と女将(山岡久乃)は
「働いて返しやす」との佐平次に、しぶしぶ承諾。
かくして佐平次は相模屋に居残って飲み食いのツケを仕事で返すことになり、萬の仕事に駆け回る。
「居残りの佐平次でござい!」 あんま、部屋番、時計の修繕となんでもござれの大活躍。しかし、あてがわれた部屋へ帰ると、佐平次は煎じ薬を飲んでいる。胸を患っているのだ。

廓の売れっ子、こはる(南田洋子)、おその(左幸子)はお互いに相手を罵り合っていた。ある日、些細なことから二人の大喧嘩。廓中を暴れまくり、中庭まで転げ落ちて凄まじい女の戦い。

相模屋には長州藩士、高杉晋作(石原裕次郎)ら、勤皇の志士が出入りしていた。佐平次は高杉に一目置く。

出入りの本屋金造(小沢昭一)とおそのは、なりゆきから心中することになった。だが、川へ飛び込んだ金造を後に残し、おそのは宿へ帰ってしまった。だが、何の事は無い。川は膝までしか水が無いのだ。

ある日、こはるの客が二人、かち合った。こはるは、それぞれに夫婦の約束をしていた、それが何と親父と息子だったから始末が悪い。二人は、こはるを前にかんかんに怒り出した。
「お待ちなせえ!」 襖を開けて入ってきた佐兵次、「やい、こはる!おめえ、おいらとの夫婦の約束を反故にしやがったな!ぶっ殺してやる!」懐から出刃包丁を取り出してこはるに飛び掛ったから、親父と息子は仰天した。「あっ、あっ、危ない、危ない」と二人が佐平次を押さえた間にこはるは逃げた。
泣いて悔しがる佐平次に二人は同情し、小遣いまで与える始末。佐平次は機転のきく男だ。

おそのは、金造が客で来たと知らされ、「あの人は死んだんだよ」「じゃ、幽霊かね」「馬鹿いいな」おそのが部屋へ行くと、金造が幽霊のような顔で座っていた。「ひぇ〜」 良く見ると、金造がいない。
玄関先に棺桶が届いた。蓋を開けると、白目を剥いた金造が入っていた。それを見たおそのは失神した。そこえ、
「ごめんよっ」と佐平次、持っていたやかんの湯を棺桶にぶちまけた。「アッチッチ!」死体の筈の金造がホウホウの体で逃げ去った。

奉公人のおひさ(芦川いづみ)は父親の借金が返せないので、廓に出されそうになった。そこえ佐平次の出番だ。遊び人の若旦那と駆け落ちさせる段取りをしてやった。高杉晋作に任せたのだ。高杉は佐平次を男と見て、快く引き受けた。

今や相模屋の中で佐平次は重宝な男として尊重され始めた。だが、ある夜明け前、荷物をまとめた佐平次は旅に立った。咳をしながら品川に別れを告げるのだった。
映画館主から

まさにフランキー堺の当たり役。コメディアンとしての本領発揮です。お調子のいい男でありながら、胸を患う暗さを持ち、ニヒルな面も演じました。

監督の川島雄三は45歳の若さで世を去りましたが、彼の最高傑作と言われています。
古典落語の「居残り佐平次」、「芝浜」、「品川心中」などのネタをドタバタギャグに仕立て、しかも、主人公は肺病病みと悲哀を盛り込み、日本映画には例の無い時代劇コメディ作品に仕上がっています。

高杉晋作役の石原裕次郎を始め、まだ若き売出し中の小林旭や、二谷英明などを厠で並ばせ、連れ小便を真正面から撮った川島雄三はやはり、一筋縄ではありません。
私は、侍が立小便をした映画は後にも先にもこの映画しか記憶にありません。

他にも、左幸子、南田洋子、金子信雄、岡田真澄、小沢昭一、山岡久乃、など、脇を固める芸達者が揃った贅沢な映画でした。

    参考文献:「日本映画ベスト150」 文芸春秋刊
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