「トロイのヘレン」
トロイのヘレン 
     1955
トロイのヘレン

製作:G・L・ブラットナー
監督:ロバート・ワイズ
原作:ホメロス
脚色:ジョン・ツイスト
撮影:ハリー・ストラドリング
音楽:マックス・スタイナー

出演:ロッサナ・ポデスタ
    ジャック・セルナス
    
サー・セドリック・ハードウィック
    ナイアル・マクギニス
    スタンリー・ベイカー
    ハリー・アンドリュース
    ロバート・ブラウン
    ロバート・ダグラス   
    トリン・サッチャー
    ブリジッド・バルドー

パリス(ジャック・セルナス)左とヘレン(ロッサナ・ポデスタ)中央



トロイの木馬

トロイのヘレン
物語

今から3000年前のトロイ。当時ヘレスポントと呼ばれた海峡は、東方との唯一の交易路としてトロイに繁栄をもたらし、ギリシャ諸国の侵略欲をあおった。
かってスパルタ率いるギリシャ軍によって焼き討ちにあった歴史から、トロイは襲撃に対する防備を固めていた。

トロイ王プリアモス(サー・セドリック・ハードウィック)の王子パリス(ジャック・セルナス)は、父を説得した。自分がスパルタに出向き和平交渉をしたいと。
パリスの姉カッサンドラは精神を病んでいるがその予言は良く当たる。カッサンドラは不吉な影を感じパリスを引き止めたが、パリスは部下を引き連れスパルタへ船を出した。
ある日、好天の空がにわかに掻き曇り、猛烈な嵐に見舞われ船が難破してしまった。

パリスは一人、スパルタの浜辺に打ち上げられていた。他の者は全員遭難してしまったのか。パリスが生きているだけでも奇跡だった。その時、浜辺を歩いて来る女性を見てパリスは眼を見張った。
「・・・アクロディーテ(美の女神)!・・・」 トロイの神殿に祭られている美の女神像そのままの美しい女性はスパルタの王メネラウス(ナイアル・マクギニス)の妃ヘレン(ロッサナ・ポデスタ)であった。
ヘレンは女奴隷アンドラステ(ブリジッド・バルドー)に手伝わせパリスを浜辺の小屋に匿った。ヘレンたちの介抱によりパリスの体は快復していく。

スパルタの城で会議が開かれていた。議題はいかにしてトロイを攻めるか、である。ここにはギリシャ最大のミュケナイ王アガメムノン(ロバート・ダグラス)をはじめ、ユリシーズ(トリン・サッチャー)、アキレス(スタンリー・ベイカー)などの顔ぶれが揃っていた。
浜辺に打ち上げられていたトロイのプリアモス王家の紋章があった。
「トロイの奴らがスパルタに来ておるぞ」
その時、部屋に入って来たのはパリスである。
「私の船が難破したのだ。私はトロイの王子パリスです。あなた方と和平の話し合いに来たのです」
「まことにパリスであれば拳闘の心得もあろう」 スパルタ王メネラオス(ナイアル・マクギニス)は拳闘の試合を戦う相手にスパルタの勇将アイアスを選んだ。
「条件がある。私が勝ったらパリスだと認めて和平交渉に応じること」 パリスが言った。
「命があればな」 メネラオスは嘲るような笑いを漏らした。
パリスとアイアスの猛烈な拳闘試合が始まった。その試合を妃ヘレンがはらはらしながら見ていた。
パリスが勝ったが、王メネラオスはパリスを監禁してしまった。自分の妻ヘレンがパリスを見つめる眼に激しく嫉妬したからである。

その夜、監禁されているパリスを逃がしたのは他ならぬヘレンである。スパルタ兵に追われながら二人の恋は誰にも引き離せない強固なものとなっていた。用意してあった船に乗った二人はトロイに向かった。

遭難したと思っていたパリスが帰国したから市民も王プリアモスも大喜びだった。しかし連れ帰った女がスパルタの妃ヘレンと知ると喜びは一変して激怒に変わった。
「平和の願いをお前に託したのに・・・持ち帰ったのは『災難』だ。スパルタは当然攻めてくるぞ」 プリアモスはパリスに言った。
史上最強のギリシャ艦隊の来襲に備えてトロイは臨時態勢に入った。
はたしてトロイの城壁から海を望むと遥か遠方にギリシャの船団の火が見えた。その数1000隻はあろう。
プリアモスはヘレンの顔を見つめて言う。
「・・・その美しさが大船団を呼んだのだ」

ギリシャ・イタケ国王のユリシーズは知将として知られていた。ユリシーズの知略により、トロイの海岸でトロイ城壁攻略用の大規模な装置が建造されていた。
難攻不落のトロイ城壁にギリシャ軍が進撃を開始した。トロイ城壁で待ち構えたトロイ軍は弓矢や槍で迎え撃った。牛車に引かれた梯子付きの巨大な櫓が城壁に押し寄せる。その中から夥しいギリシャ兵が攀じ登ってきた。
ギリシャ兵とトロイ兵の凄まじい戦いが繰り広げられた。多数の死者が出た。
トロイ軍の守りは固くギリシャ軍は一旦兵を引かざるを得ない。

ギリシャ軍は長期戦に供え食料を船から降ろした。やがて周辺の村々での掠奪が始まった。
ヘレンはその惨状を見て自分の責任を痛感するのだった。自分の為に多くの人が死ぬ。自分がギリシャに帰れば戦争は終わるのではないか。
そしてヘレンは決意した。護衛とともにヘレンはギリシャ軍野営地へ向かった。
知らされたパリスはそれを追う。
メネラオスは妻ヘレンを取り戻すと言った。
「ヘレンが戻っただけで済むと思うな、トロイの財宝の半分と毎年1000タラント支払うのだ!」 メネラオスは事前に協議した、ヘレンを返せば軍を引き上げるという約束を自ら無視したのだ。
その時、パリスが乗りつけてきた馬車にヘレンを乗せると再びトロイ城壁に引き返した。追うメネラオスたち。

パリスがヘレンを無事城門内に入れると、パリスの兄ヘクトル(ハリー・アンドリュース)とギリシャの勇将アキレスの一騎打ちが城門前で始まった。
城壁の上で見守るパリスは危惧した。アキレスには兄は敵わない。やはりヘクトルはアキレスの剣に敗れ、死ぬ。
その時、パリスの放った矢がアキレスの足首に命中した。不死身のアキレスは馬車から落ちた時、石に頭を打ち付けあっけなく死んだ。

それからも長引く戦いの中、ユリシーズは知略を練っていた。森の中で巨大な木馬を建造していたのだ。アテナの贈り物としての巨大な聖なる木馬を彼らは必ず城内に入れると踏んだのだった。

ギリシャ軍が海の彼方に引き上げていく。とうとうトロイが勝ったのか。
「勝利の松明を燃やせ!」 と、王プリアモスは叫んだ。
「変なものが城門前に!」 兵の報告で見ると、それは巨大な木馬である。
ヘレンは言う。「彼らの贈り物は危険だわ」
カッサンドラも言った。「そのとうりよ、不吉だし燃やすべきだわ!」
だが、王プリアモスはその意見を聞かなかった。
「アテナを象徴する像だ。敵はやむなく遺棄したのだ・・・木馬を入れよ!トロイの勇気の記念物である!」

城門内に入れられた巨大な木馬の下で、トロイ兵や市民の勝利に浮かれた乱痴気騒ぎが始まる。
夜更け、皆が寝静まった頃、木馬の中から抜け出してきたのはユリシーズたちである。彼らは見張り兵を殺し、城門を開けた。すると引き上げたと見せかけたギリシャの大軍が一挙に城内に押し入ったのである。
逃げ惑う市民たち。トロイ軍は出鼻をくじかれ、一方的にやられていく。
王プリアモスも捕らわれながら自分の判断を悔やんでいた。
そしてパリスもスパルタ王メネラオスに敗れた。
パリスはヘレンの腕の中でヘレンの言葉を聞きながら死んでいった。
「永遠に愛しているわ・・・」

かくしてトロイは滅びた。ヘレンはスパルタ王メネラオスの船で故国ギリシャへ向かいながら、パリスとの出会いから幸せな日々を振り返っていた。
映画館主から

有名なトロイ戦争を題材にしたホメロスの叙事詩「イリアス」の映画化です。私はこの映画の存在は知っていたものの封切りで見逃し、ビデオ化もされていないので諦めていたのですが、2004年、NHK衛星放送で放映され、初めて見る機会に恵まれました。

2004年劇場封切りの「トロイ」(監督:ウォルフガング・ペーターゼン、主演:ブラッド・ピット)はこのトロイ戦争をギリシャ側から描いた大作でした。
さすがペーターゼン、CGを駆使して数万のギリシャ軍勢や1000隻の船団を圧倒的な迫力で見せてくれました。

その「トロイ」の原点となったのが「トロイのヘレン」です。
監督はあの「ウエスト・サイド物語」(’61年)、「サウンド・オブ・ミュージック」(’65年)のロバート・ワイズです。彼はこの2作によりミュージカル映画の巨匠になりましたが、社会派ドラマ、SF、ホラー、戦記と幅広い活躍をした人で、スペクタクル史劇の本作もそのひとつです。

特にトロイの城壁を長い梯子付きの牛車で突入する場面や、巨大な木馬から抜け出したギリシャ兵がトロイを襲う場面などにワイズ監督のリアリティが感じられます。
トロイの王子パリスがギリシャ・スパルタの王妃ヘレンに恋をしたがためにトロイが滅ぼされてしまうという悲劇ですが、ヘレンを演じたロッサナ・ポデスタは当時20歳。前作「ユリシーズ」と本作の主演でスターの座を獲得、後年「黄金の七人」(’65年〜)シリーズでセクシー姐御として我等を魅了してくれました。
余談ながら、ヘレンの女奴隷役に当時まだ無名だった20歳のブリジッド・バルドーがちょい役で出ています。後年、彼女はマリリン・モンローのMMと並び、BBと称されるセックスシンボルとなっていきました。

また本作はトロイ側から描いた作品なので、ギリシャの英雄ユリシーズやアキレスがいかにも悪役然としていたのも面白いところでした。

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