|
「野良犬」 |
| 野良犬 1949・新東宝 | |
![]() 製作:本木荘二郎 監督:黒澤 明 脚本:黒澤 明 菊島隆三 撮影:中井朝一 音楽:早坂文雄 出演:三船敏郎 志村 喬 淡路恵子 山本礼三郎 千石規子 木村 功 千秋 実 清水将夫 伊藤雄之助 岸 輝子 ![]() ![]() ![]() ![]() |
物語 その日は特に暑かった。新米刑事の村上(三船敏郎)は、混み合ったバスに揺られていたが、ふと気がつくとポケットのピストルが無くなっていた。あわててバスを降り、怪しい男を追いかけたが見失った。 署に戻りリストの中から、スリの常習犯、お銀(岸輝子)を探し出した。バスの中で村上にピッタリとくっ付いていた女だ。お銀がピストルを盗み、別の男に手渡したに違いない。 村上はお銀を探し出した。しかし、お銀は何も知らないとシラを切った。後を付回す村上にお銀は音を上げた。「・・・闇市でピストル屋を探してご覧・・」 戦後の焼け跡の町を復員兵に変装して歩き回る村上。「東京ブギ」が流れる。 疲れ果てた村上が休んでいると、「ハジキいらねえか?」と、少年が声を掛けてきた。手がかりから手がかりへと調べを進める村上にベテランの佐藤刑事(志村喬)が同行した。そして遊佐(木村功)という男が浮上した。 そうこうするうち、強盗殺人事件が発生した。遊佐の犯行だった。弾は村上のピストルの弾痕と一致した。 まだ、弾は5発残っている。佐藤は言う。「川柳にこんなのがある。・・・“狂犬の目にまっすぐな道ばかり”・・・」いまや、遊佐は狂犬のように危険な道を走り始めていた。 遊佐の恋人並木ハルミ(淡路恵子)をアパートに訪ねる佐藤と村上。ハルミは遊佐の行方を知らないと言い張った。置いてあったマッチにバーの名前があった。佐藤はそのバーへ行き、遊佐の宿泊しているホテルを割り出した。 ホテルで佐藤がハルミのアパートへ電話を掛け村上を呼び出した。その時、階段を降りてきた遊佐が刑事に気付く。電話に出た村上が聞いたのは、一発の銃声だった。「佐藤さん!佐藤さん!」村上は異変を感じ叫ぶ。佐藤は逃げようとした遊佐を追って外へ飛び出したところを撃たれたのだ。どしゃぶりの雨の中で佐藤が倒れていた。 病院。佐藤を見舞った村上は悲嘆にくれた。「佐藤さん、死なないでくれ!」 夜になって、ハルミが現れた。「遊佐が駅で待っています」 「何!」 村上はハルミに聞いた郊外の駅にいた。早朝の6時。客が何人かいた。遊佐の顔は知らない。「・・・この中に遊佐がいる・・・」 村上は凄い形相で一人一人を見定めていく。「・・・どれが遊佐だ・・・落ち着け・・・」 その時、泥にまみれた靴と背広に泥が付着している男!男は村上と目が合うと、一目散に逃げた。「あいつだ!」 村上が遊佐を追う。とうとう追い詰めた村上に遊佐がピストルを向けた。 村上は肩で息をして遊佐を睨む。近所の家からピアノを弾く音楽が聞こえてくる。「ダーン!」村上の左手が撃たれた。血が滴り落ちた。 なおもピストルを向ける遊佐ににじり寄る村上。銃声は続けて2発。しかし、村上に当たらず、弾は切れた。すかさず遊佐に飛び掛る。二人はもつれて泥んこになる。遊佐の手に手錠が掛けられた。村上は自分のピストルを握り締めた。やがて遊佐は声をあげて子供のように泣き始めた。 佐藤は一命を取り留めていた。報告とともに佐藤を見舞った村上に安堵が戻った。 |
| 映画館主から この作品のストーリーは実話に基づいたものだそうです。「これは実話なんです。物資が無かったあの頃、ピストルを盗まれた運の悪い巡査がいてね・・・」と、黒澤は語っています。 このアイデアに取り付かれた黒澤はいったん小説に書き上げ、映画化したのでした。 戦後間もない闇市を三船が延々と盗まれたピストルを求めて歩き回るシーンは、約10分も続きます。オーバーラップを中心にしたモンタージュのバックには笠置シズ子の「東京ブギ」が流れ、戦後の世相が良く出ていました。 しかも、真夏の炎天下。極端を好む黒澤らしく刑事が歩き回るシーンは何故か太陽が照りつける炎天下が多く、「天国と地獄」もそうでした。 そして雨。雨も半端な降り方でなく、ドシャブリ。志村喬演ずる刑事は撃たれドシャブリの中に倒れています。ドシャブリの雨が最高に生かされていたのは「七人の侍」のラストの決戦でした。 三船の刑事と木村功の犯人は、ともに復員兵で、復員途中で盗難にあい、無一文になってしまうという設定になっています。三船は刑事の職を選び、木村は犯罪者になった。ラストで二人が泥んこになってもつれ合うシーンでは、どちらが刑事でどちらが犯罪者か分からないほど二人は似ています。 この時、近所の家から流れてくるピアノの曲。「七人の侍」の冒頭、野武士の群れが山あいの村を見下ろし、「あの麦が実ったら、また来るべえ!」と言い、立ち去った後にウグイスが鳴いているシーンを想起させます。喧騒との対極にある平和的な挿入の妙。 犯人の恋人のダンサーを演ずるのは、映画初出演の淡路恵子です。 参考文献:ドナルド・リチー著「黒澤明の映画」 キネマ旬報社 |
|
|