マリオンがシャワーを浴びていると
黒い影が近づき!


マリオンはナイフで刺される・・・
マリオンは、自らの罪を洗い流そうとするかのようにシャワーを浴びている。
すると、カーテンに黒い影が!
カーテンが開く。振り向いたマリオンの悲鳴!
黒い影がナイフを振り下ろした。何回も何回も!
マリオンは訳も解らないまま、タイルにもたれ、そのままくず折れる。影が立ち去る。マリオンの手が力なくカーテンを掴む。カーテンの留め金が引き千切られて、マリオンは倒れる。湯水だけがシャワーから噴出している。血の混じった湯水が排水口に流れ込む。排水口のアップ。マリオンの見開かれた目にダブって・・・・



このシャワー室の殺人シーンに7日間かけた。たった45秒のシーンだが、キャメラの位置も70回変えたという。
ヒッチコックはフランソワ・トリュフォーとの対談で、ロバート・ブロックの小説のどこに惹かれたかの問いに、ただ1箇所、シャワーを浴びていた女が突然惨殺されるというその唐突さだ、これだけで映画化に踏み切った、と答えている。


ノーマンに質問するアーボガスト
その直後、裏の母屋からノーマンの叫び声が聞こえた。「母さん、なんてことだ!血だらけじゃないか!」 そして、ノーマンはシャワー室に飛び込んできて驚愕する。惨劇の後始末をするノーマン。モップをかけ、血を拭き取る。マリオンの死体をカーテンに包み車のトランクへ押し込む。部屋にあったマリオンの所持品も、4万ドルの入った新聞の包みもトランクへ・・・
近くの沼に車を沈める。車はとうとう水面から消えた。

マリオンの妹ライラ(ベラ・マイルズ)とサム、それにロウリーに雇われた私立探偵アーボガスト(マーティン・バルサム)の3人が失踪したマリオンの捜索を始めた。
ベイツ・モーテルにやって来たアーボガストは、ノーマンの応対に不審を抱いた。母親には絶対に会わせようとしないからだ。いったんモーテルを離れ、サムとライラに電話を入れて、モーテルの場所を教え、再びモーテルへ。
ひっそりとモーテルの母屋へ入り、階段を登るアーボガスト。登りきろうとしたその時、何者かがナイフを振り上げアーボガストを襲った。階段を転がり落ちるアーボガスト。更にナイフが襲う。


ライラとサムは保安官を訪ねた。そこで意外な話を聞く。ノーマンの母親は
10年前に死んでいるというのだ。では、母屋にいるのは誰だ?
二人はモーテルに行った。出てきたノーマンをサムが話で引き止めている間にライラが母屋に向かった。
階段を登っていくライラ。二階には誰もいない。ただ、ベッドには人の寝ていたへこみが・・・
サムと話していたノーマンはライラの行方に気付いた。サムともみ合い、ノーマンはサムの頭を置物で殴り気絶させた。
階段を降りる時、ライラはノーマンが母屋の方へ走ってくるのが見えた。急ぎ階段を降りると、階段の裏に地下室への階段があった。地下室のドアを開けると、老婆が向こう向きに椅子に座っていた。「ベイツさん」声をかけるが動じない。ライラは近づき老婆の肩に手をかけると・・・椅子がゆっくり回転して・・・それはミイラ化した死体だ!絶叫したライラは裸電球を揺らした。
その時、ドアにナイフを振り上げた何者かが現れた。まさにライラが襲われそうになった時、駆けつけたサムが羽交い絞めに・・殺人者のカツラが取れ、ノーマンのゆがんだ顔がそこにあった。


10年前・・・・・父親が死んだあと、ノーマンは母親と二人で暮らしていた。母に男が出来た時、ノーマンは二人を殺した。彼は母親の死体を墓から掘り返し、ミイラにして、ずっと二人で暮らしていたのだ。
彼の中には、彼自身と、老いた母親が同居していた。息子がマリオンに惹かれた時、嫉妬した母親がマリオンを殺したのである。



ライラは地下室へ入った。
そこで見た物は!!
映画館主から

当時、大スターだったジャネット・リーを映画が始まって3分の1のところで殺されるとは、誰も予想しませんでした。それまで、4万ドルを盗んだジャネット・リーが、これからどう対処するのかに気をもんでいた観客は、一瞬にして主人公が殺されて、予想外のショックでした。

まさに、それがヒッチコックの狙いでした。それまでのマリオンの行動はに過ぎず、観客はここから本当のドラマにのめり込んでいきます。
ノーマンは、母親コンプレックスの塊であり、母親に男ができたことで、二人を殺害し、自らの中に母親の人格を宿します。
ノーマンが女性に惹かれると、母親の人格が嫉妬の殺意を抱くという恐ろしい構図です。
それまで、青春スターだったアンソニー・パーキンスにノーマン役を与えたヒチコックは罪作りでした。パーキンスはあまりのはまり役から、生涯抜けられませんでした。

「12人の怒れる男」のマーティン・バルサムの私立探偵が、階段で殺されるシーンが、シャワー室の殺人に続くショックです。
ヒッチコックの映画では、「階段」が重要な素材です。人物の視点で階段を上がって行く。その、移動撮影が不安を感じさせます。
「階段」は、「下宿人」以来、「海外特派員」、「白い恐怖」、「断崖」、「疑惑の影」、「裏窓」、「知りすぎていた男」、「めまい」・・・など、随所に使われて効果を上げていましたが、恐らく「サイコ」の階段シーンがサイコーでしょう。

   参考文献:「ヒッチコックを読む」 フィルムアート社
  「アルフレッド・ヒッチコック&ザ・メイキング・オブ・サイコ」 白夜書房