「用心棒」
用心棒  1961・東宝・黒澤プロ


監督:黒澤 明
脚本:菊島隆三
    黒澤 明
撮影:宮川一夫
美術:村木与四郎
音楽:佐藤 勝

出演:三船敏郎
    仲代達矢
    東野英治郎
    志村 喬
    山田五十鈴
    加東大介
    藤原釜足
    山茶花究
    河津清三郎
    司 葉子
    土屋嘉男

   
物語

ある片田舎の宿場町へフラリとやって来た浪人。そこへ犬が走ってくるのを見てギョッとする。なんと犬がくわえているのは、人間の手首だ。何か物騒な宿場である。居酒屋の親父から経緯を聞く。この宿場には親分が二人いて、争いが絶えず、儲かっているのは、棺桶屋だけだと言う。

話しを聞いた自称「桑畑三十郎」は画策する。「俺はこの街が気に入った。いいか、聞け親父」。二組のヤクザを戦わせ、最終的にヤクザ者を根絶しようと言うのだ。「この街の者は皆、キチゲーだが、おめーはもっとキチゲーだ!」親父は嘆く。

一方の手下を3人ばかり切って捨て、腕の程を見せた三十郎は、もう一方の組の用心棒に五十両で買われた。親分は今日にも決戦だと意気込む。しかし、五十両を惜しむその女将の密談を聞いた三十郎。
いよいよ、戦いの幕が切って降ろされるその時、「俺は降りたぜ。」と前金を地面に放り投げた。片方のヤクザの群れも歓声を上げた。

火の見やぐらの上で、ほくそえむ三十郎の真下で斬り合いが始まった。その時、遠くに馬の砂煙。八州廻りがやって来た。停戦・・・・・・・。
ヤクザの弟、卯之助が旅から帰ってきた。着流しにマフラーを巻き、拳銃を手にしたキザな奴。三十郎とすれ違った時、お互いに感ずるものがある。「出来る・・」

今や、卯之助の方の用心棒になった三十郎。そこの旦那が人の女房を愛人として囲っているのを知り、策略を働かせ逃がしてやる。「もう、こんな所へ来るんじゃねえ。」ひれ伏している親子。「早く行け!」三十郎は苛ついた。
居酒屋の親父は上機嫌だった。「おめえも、いいとこあるぜ、まったく」と言って差し出した一通の手紙。逃がしてもらった親子の礼手紙だ。そこへ、卯之助が手下を連れて入ってきた。「何だ、これは?」手紙が卯之助に見つかった。

土蔵の中に、見るも無残に痛めつけられた三十郎。女の居場所を聞かれる。言えば殺される。大男に又、投げ飛ばされ、虫の息の三十郎。
しかし、奇策を使い、命からがら脱出に成功する。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

居酒屋の親父に助けられ、鋭気を養った三十郎に最後の対決の日が来た。親父が人質で捕まり、木にぶら下がっている。卯之助と大勢の手下が迫ってくる。対するは三十郎ただ一人。「近づくんじゃねえ!」と卯之助が拳銃を構えたその瞬間、三十郎の放った出刃包丁が卯之助の腕に突き刺さっていた。疾風の如く次々と斬りまくって三十郎が勝った。
あっけにとられる親父と棺桶屋を後に、「あばよ」と言い残し、三十郎は立ち去って行った。

   映画館主から

正にこれぞ娯楽時代劇!黒澤明 絶頂期の作品です。黒澤の演出はダイナミックで、リアル。三十郎役は三船以外には考えられない程はまり役です。だいたい三船という俳優は黒澤映画以外はそれ程いい味を出していません。又、黒澤も三船という素材があったればこそ、自分の映像表現ができたのだという、いわば相補う関係で、世界の黒澤、三船であったと思います。

また、黒澤映画の常連である仲代達矢はこの卯之助役が最高。正にかみそりの切れ味。
冒頭で腕を切り落とされたジェリー藤尾扮するサンピンが「痛い!痛い!」と泣き叫ぶシーン。それまで時代劇で斬られた人が泣くなんて見たことが無かったので、この監督は違うと思ったものです。封切りで見たその時、私は中学生。学校こぞって見せに行ってくれた井口先生に感謝しております。私が観た初めての黒澤映画でした。

およそ時代劇らしからぬ佐藤勝の音楽。脚本の練られたせりふとテンポの良さ。
その後、この映画の翻案であるクリント・イーストウッド主演のマカロニウエスタン「荒野の用心棒」も大ヒットしましたが、とてもオリジナルの足元にも及びませんでした。
          
   
  参考文献:ドナルド・リチ−著「黒澤明の映画」 キネマ旬報社


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