「ローマ字」法令資料

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(2001/06/27 公表)

参考文献、『官報』及び『法令全書』

「ローマ字」制定より、今日迄の戦後日本のローマ字の変遷を、法令を元に表す。

法令の全文を記載しておく。制定当時の思想や其の遷り変りを読取つて欲しい。

あらまし

ローマ字には「日本式」「ヘボン式」「訓令式」がある。

昭和12年制定の「訓令式」は、「日本式」を採用したもの。

昭和29年の改正では、第1表で「日本式」を、第2表では「ヘボン式」其の他を採用した形となつてゐる。

「ヘボン式」とは、英語の表記方法を参考にして考案されたローマ字表記方法。駅名の表示や旅券の氏名の綴り等に採用されてゐる。

目次

  1. ローマ字綴表 ( #romazituduriheu)
  2. ローマ字のつづり方の実施について ( #romazinotuduri_zissi)
  3. ローマ字のつづり方 ( #romazinotudurikata)

本文

昭和12年内閣訓令第3号(官報第3217号・S12,09,21)

各 官 廳

國語ノローマ字綴方ハ從來區々ニシテ、其ノ統一ヲ缺キ使用上不便尠カラズ、之ヲ統一スルコトハ教育上、學術上將又國際關係其ノ他ヨリ見テ、極メテ必要ナルコトト信ズ。仍テ自今左ノ通ローマ字綴方ヲ統一セントス。各官廳ニ於テハ漸次之ガ實行ヲ期スベシ。

昭和十二年九月二十一日

内閣總理大臣 公爵 近衞 文麿

一、國語ノローマ字綴方ハ左表ニ依ル

ローマ字綴表
 a  i  u  e  o
ka ki ku ke ko  kya kyu kyo
sa si su se so  sya syu sye
ta ti tu te to  tya tyu tyo
na ni nu ne no  nya nyu nyo
ha hi hu he ho  hya hyu hyo
ma mi mu me mo  mya myu myo
ya  i yu  e yo
ra ri ru re ro  rya ryu ryo
wa  i  u  e  o
ga gi gu ge go  gya gyu gyo
za zi zu ze zo  zya zyu zyo
da zi zu de do  zya zyu zyo
ba bi bu be bo  bya byu byo
pa pi pu pe po  pya pyu pyo

二、國語ノローマ字綴方ハ左表ニ依ル

長音ノ符號ヲ附スル場合ニハ okâsama,kûsyû,Ôsaka ノ如ク「ˆ」ヲ用フルコト
撥音ハ總ベテ n ヲ以テ表ハスコト
撥音 n ト其ノ次ニ来ル母音(y ヲ含ム)トヲ切離ス必要アルトキハ hin-i,kin-yôbi,Sin-ôkubo ノ如ク用フルコト
促音ハ gakkô,happyô,tossa,Sapporo ノ如ク子音ヲ重ネテ之ヲ表ハスコト
文書の書始及固有名詞ハ Wagakuni no·········,Sizuoka,Masasige ノ如ク語頭ヲ大文字トスルコト尚固有名詞以外ノ名詞ノ語頭ヲ大文字トスルモ差支ヘナシ
特殊音ノ表記ハ自由トス

ウェブマスタ註

「ˆ」の場合、実際には母音字の直上に横棒を引くやうにする事。

昭和29年内閣訓令第1号(官報第8382号・S29,12,09)

各 官 庁

ローマ字のつづり方の実施について

国語を書き表わす場合に用いるローマ字のつづり方については、昭和十二年九月二十一日内閣訓令第三号をもつてその統一を図り、漸次これが実行を期したのであるが、その後、再びいくつかの方式が並び行われるようになり、官庁等の事務処理、一般社会生活、また教育・学術のうえにおいて、多くの不便があつた。これを統一し、単一化することは、事務能率を高め、教育の効果をあげ、学術の進歩を図るうえに資するところが少なくないと信ずる。

よつて政府は、今回国語審議会の建議の趣旨を採択して、よりどころとすべきローマ字のつづり方を、本日、内閣告示第一号をもつて告示した。今後、各官庁において、ローマ字で国語を書き表わす場合には、このつづり方によるとともに、広く各方面に、この使用を勧めて、その制定の趣旨が徹底するように努めることを希望する。

なお、昭和十二年九月二十一日内閣訓令第三号は、廃止する。

昭和二十九年十二月九日

内閣総理大臣 吉田  茂

昭和29年内閣告示第1号(官報第8382号・S29,12,09)

国語を書き表わす場合に用いるローマ字のつづり方を次のように定める。

昭和二十九年十二月九日

内閣総理大臣 吉田  茂

ローマ字のつづり方

まえがき
1
一般に国語を書き表わす場合は、第1表に掲げたつづり方によるものとする。
2
国際的関係その他従来の慣例をにわかに改めがたい事情にある場合に限り、第2表に掲げたつづり方によつてもさしつかえない。
3
前二項のいずれの場合においても、おおむねそえがきを適用する。
第1表
 a  i   u   e   o
ka  ki  ku  ke  ko   kya  kyu  kyo
sa  si  su  se  so   sya  syu  sye
ta  ti  tu  te  to   tya  tyu  tyo
na  ni  nu  ne  no   nya  nyu  nyo
ha  hi  hu  he  ho   hya  hyu  hyo
ma  mi  mu  me  mo   mya  myu  myo
ya  (i) yu  (e) yo
ra  ri  ru  re  ro   rya  ryu  ryo
wa  (i) (u) (e) (o)
ga  gi  gu  ge  go   gya  gyu  gyo
za  zi  zu  ze  zo   zya  zyu  zyo
da (zi)(zu) de  do  (zya)(zyu)(zyo)
ba  bi  bu  be  bo   bya  byu  byo
pa  pi  pu  pe  po   pya  pyu  pyo
第2表
sha  shi  shu  sho
          tsu
cha  chi  chu  cho
           fu
ja    ji   ju   jo
di  du  dya  dyu  dyo
kwa
gwa
そえがき

前表に定めたもののほか、おおむね次の各項による。

1
はねる音「ン」はすべて n と書く。
2
はねる音を表わす n と次にくる母音字または y とを切り離す必要がある場合には、 n の次に ' を入れる。
3
つまる音は、最初の子音字を重ねて表わす。
4
長音は母音字の上に ˆ をつけて表わす。なお、大文字の場合は母音字を並べてもよい。
5
特殊音の書き表わし方は自由とする。
6
文の書きはじめ、および固有名詞は語頭を大文字で書く。なお、固有名詞以外の名詞の語頭を大文字で書いてもよい。

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