文化遺産の登録基準6番
1 名前: 浦に〜と 投稿日: 2001/1/28(日) 11:32:28
世界遺産の登録基準の中でも特殊な、文化遺産の登録基準(6)に関するスレッド。

参考としてこの登録基準の文章を記します;
顕著で普遍的な重要性を持つ出来事、生きた伝統、思想、信仰、芸術的作品、あるいは文学的作品と直接または実質的関連があること。(特別な事情がある場合もしくは、他の文化遺産・自然遺産の登録基準にも合致する場合に、この基準でリストに登録できる)

2 名前: 浦に〜と 投稿日: 2001/1/29(月) 01:08:33
この基準(以下、C(6))は世界遺産の登録基準の中で、おそらく最も適用の仕方が難しいものでしょう。
「顕著で普遍的重要性を持つ出来事」とは具体的に何を指すのかなど、現にC(6)の適用をめぐって、いくつかの遺産では議論が行なわれてきました。
その上特別な場合でないとC(6)だけでの登録は出来ないという但し書きまであります。なおこの但し書きは1980年から付加されました。

例えば南アフリカの「ロベン島」は、C(6)だけでなく(3)も適用されています。南アフリカ当局はロベン島を申請する際、C(6)だけでの登録を困難と見たのか、予めC(3)にも適用させて申請しました。私なんか、この遺産はC(6)だけで登録できるものだと考えますが、このロベン島のケースは半ば強引にC(3)を合致させないと 安心してC(6)だけでの登録申請が出来ないことを暗に示しているようです。実際世界遺産委員会では、タイ代表者からこの件に関して、C(6)だけでも登録出来るよう規制を緩めるべきだ、などと指摘がありました。その上ロベン島は負の遺産ですから、登録に困難が予想され、予め安全策としてC(3)の適用も必要だったのでしょう。
なおロベン島のC(3)適用理由は次のようになっています。「ロベン島の建築群はこの島の、鬱鬱たる過去を物語っている」。強引な合致のさせ方だと感じるのは単なる私の思い込みではないと思いますが、どうでしょうか。

3 名前: 収斂 投稿日: 2001/1/29(月) 05:47:34
ロベン島について

ロベン島は、私も基準(6)のみの登録こそ望ましい物件であるように思うのですが、あえて基準(3)を付加した点を強引に考察してみますと、あの島はアパルトヘイトに反対した政治犯が多く収容されたとはいえ、一部には犯罪行為をした囚人もいたはずです。ですから仮に基準(6)のみで登録すれば、収容された人々全てが英雄視され、犯罪行為までもが免訴される可能性もあります。実際アパルトヘイト自体は完全な悪なのですが、犯罪行為とは別問題です。そして、混沌とした南アフリカ共和国政府の情勢を考えれば、あえて混乱を招くようなことは避けたかったのかもしれません。むしろアパルトヘイトを「過去」の遺物と定義し、世界にその決別を宣言する意味でも、基準(3)を付記することは必要だったのかもしれません。それはある意味アパルトヘイトがまだ「過去の遺物」となっていない、動かしがたい証拠なのかもしれません。

4 名前: 収斂 投稿日: 2001/1/29(月) 05:49:12
登録基準が(6)のみの文化遺産について

登録基準が(6)のみの世界遺産は、原則として禁止であり、もし登録するなら、極めて重要な事件、出来事でなくてはいけません。にもかかわらず、私もあまり納得できない世界遺産というのがあるのも事実です。「原爆ドーム」や「アウシュビッツ強制収容所」、セネガルの「ゴレ島」、ガーナの「ヴォルタ・グレーター・アクラの保塁と城塞」は分かるのですが、アメリカ合衆国の「独立記念館」、プエルト・リコの「ラ・フォルタレサとサン・ファン」、カナダの「ヘッド・スマッシュト・バッファロー・ジャンプ」が(6)のみの世界遺産になっているのは少しおかしいと思うのです。浦に〜とさんもその辺のことは私と同意見みたいです。
多分、今現在の評価なら、「ラ・フォルタレサとサン・ファン」はむしろカリブ海に多く見られる要塞の典型であることを強調して(4)と(6)、 「ヘッド・スマッシュト・バッファロー・ジャンプ」は断崖の下から発掘される北米インディアンの生活遺構として評価し(3) のみ、また「独立記念館」は、アメリカの歴史上では重要であるのですが世界遺産にまではなっていないのではないでしょうか。同様にアメリカ合衆国の「自由の女神像」(1)(6)、「シャ−ロットヴィルのモンティセロとヴァーニジア大学」(1)(4)(6)も世界遺産になれるほどの物件には思えないのですが。

5 名前: 浦に〜と 投稿日: 2001/1/30(火) 00:30:43
ロベン島、なるほどそういう風にも解釈できますね。でも、本来なら基準(6)のみに合致するのが相応しい物件ですよね。

基準(6)だけでの遺産登録で、私が疑問視するのはブルガリアの「リラ修道院」です。これは建築的に見ると優れた物でもなく、19世紀の再興がブルガリア・ルネサンスの象徴であるとして普遍的価値を持つそうです。そのため、(6)のみで登録が認められました。でもそれって、本当に「顕著で普遍的価値」の範疇なんでしょうか。リラ修道院が(6)だけで登録出来るのなら、富士山も文化遺産として即、(6)だけで登録できると思えてしまいます。

それから私もカナダの「ヘッド・スマッシュト・イン・バッファロー・ジャンプ」が(6)のみの登録になっている事が全く理解できません。でも捉え方によっては顕著で普遍的重要性をもつ“出来事”の証拠となってしまうんですね。
「自由の女神像」が自由の象徴として世界遺産登録されているのは面白いことですが、冷静に考えると、世界遺産とまでいかないかも。
「シャーロッツヴィルのモンティセロとヴァージニア大学」に関して軽く調べて見ると、C(1)は新古典主義様式の傑作建築として、C(4)は自然と調和させた建築のため、C(6)は啓蒙思想を反映したものとして、合致させたように受け取れますね。私はこれを見る限りでは、世界遺産になっても良いと思えます。

ちなみにカナダの「ランス・オー・メドー国立歴史公園」のC(6)のみでの登録は、私の中では許容範囲です(^^;;

6 名前: 浦に〜と 投稿日: 2001/2/7(水) 13:43:40
文化遺産の登録基準(6)の「生きた伝統」という部分に該当して、この基準の適用が認められた遺産って何かありますか? 今探してみましたが、これといって見つかりませんでしたので、どなたか教えてください。

7 名前: じょび 投稿日: 2001/7/6(金) 02:17:30
いま、「21世紀世界遺産ワークショップ」で、負の遺産の意義について特集されていたので、このスレッドを思い出しました。
 思うに、「負の遺産」はアジア・ヨーロッパ、アフリカにあるのに、アメリカにはありませんね。
 奴隷制度の遺構なんてないんでしょうか。やっぱり栄光アル民主主義の遺産は登録しても、「負」はだめなんでしょうか。アメリカ人には。

 先のHPでは、ヴェルサイユ宮殿も、当時の民衆から見れば「負の遺産」である旨記述がありました。タージマハルもあれだけのものをつくったら当時の人の生活に「負」を生じさせたのは分かりますが、こうとらえてしまうと何でも負になりそうで僕としてはいやなんですけど。

8 名前: 浦に〜と 投稿日: 2001/7/6(金) 23:15:19
文化遺産の登録基準の6番(以下、C(6))の該当のさせ方には不可解なものが多いです。あまり細かい点を疑問に思っては、全ての登録基準に対しても「なぜこの基準の下で登録されたんだろう」と疑問を抱いてしまいますが、中でも、C(6)はおかしなものが多く感じられます。
例えば、チュニジアの「エル・ジェムの円形闘技場」や中国の「秦始皇帝陵」にC(6)が該当している理由がよく分かりません。いずれも、顕著で普遍的な重要性を持つ出来事への関連としての該当なのでしょうか。

また逆に、エクアドルの「ガラパゴス諸島」は、C(6)に該当していないのがおかしいくらいの物件だと思います。進化論の舞台になったというのは、ヨーロッパ世界のキリスト教の創造説を根底から揺るがすものとなり、極めて重大な意義があります。
現代においても進化論とキリスト教創造説との摩擦が起こっているので、ガラパゴス諸島の文化的価値は正の面だけでは無いかもしれませんけど、それにしてもヨーロッパの文化史上、著しく重要な出来事の舞台であることに変わりありません。

といっても、1978年に登録された最初の遺産であることと、ガラパゴスは純粋な「自然」であることを強調することなどから、C(6)に該当していないという察しはつきます。

9 名前: じょび 投稿日: 2001/7/7(土) 02:59:58
 世界遺産の登録基準には本当によく分からないものが多いです。登録理由に具体的に1はここ、2はここ、というふうに記載されているのでしょうか?
 たとえば、同じような大聖堂でも、シャルトルは1/2/4、アミアンは1/2、ランスは1/2/4、ブールジュは1/4、これがドイツに行くとアーヘンは1/2/4/6、シュパイヤーは2。
 ま、1/2/4を基準にしてるようですが、この微妙な違いってなんなのでしょう?
 似たようなローマ遺跡も各地で登録基準が違いますよね。
 と、登録基準6の話からはずれてしまいましたが。

10 名前: 浦に〜と 投稿日: 2001/7/11(水) 08:43:33
登録基準の該当理由は、1998年登録分から、文化遺産について明記されています。それ以前のものには何もかかれておらず、よく分からないものばかりですね。